collars 〜再構築〜

ぼくは透明。

ここにいてここにいない。
不確かな存在。

世界はいつも自分とは関係のないところで動いている。
時間の流れさえよく分からない。

ぼくはここにいていいのだろうか?
言葉は信じられない。

「愛してる」と「パイナップルの芯も食べるよ」は同義語。

赤い花は赤い花。
綺麗だとか可憐だとかそんなことぼくには分からない。
みんながそう言う。
だからきっとそうなんだろう。

・・・・・・・・

ぼくはお菓子を食べていた。
ぼくはひなたぼっこをしていた。
ぼくは逆上がりをしていた。
ぼくは高熱にうなされていた。

だけどあなたはそのことを知らない。

・・・・・・・・

「将来の夢」「親について」「戦争」「もし明日死ぬとしたら」

作文が最も苦手だった。
「ぼくは、」とだけ書いた用紙をゴミ箱に捨てた。
クラスメイトが「あんなの適当に書けばいいんだよ」と言っていたけどぼくには何が真面目で何が適当なのか分らなかった。

ただそのクラスメイトがまともなんだろうと思った。

・・・・・・・・

夕焼けが好きだった。
夕焼けだけは美しいと思った。
あれは1人だけのもの。

・・・・・・・・・

規範。道徳。社会。共通認識。
マジョリティの世界。

人を殺してはいけません
ぽい捨てしてはいけません
親切にしましょう
自殺をしてはいけません

「なぜ?」

人といると酷く疲れる。

外の世界は暗黙のルールのもとに成り立っている。

・・・・・・・・

あるときぼくの身体は動かなくなった。

・・・・・・・・

「ヒギャクタイシャですね」

始めなんのことか分らなかった。

被虐待者。

そうだったのか。
ぼくは虐待されていたのか。

家がまともでないことは分かっていた。
だけどそれは事情があるから仕方がないのだと。

そして自分が悪いのだと。
そこには必ず理由があるのだと思っていた。

愛してくれていると信じていた。

いや、本当はそう信じこませようとしていただけだ。
そうしないと自分の存在を完全に見失ってしまうから。

その日ぼくの世界は崩壊した。

虚構の世界は崩れさりぼくには何もないのだと悟った。

ぼくはずっとそこにいてそこにいなかった。

そのまま消えてしまいたかったけど消えるためには理由がいる。

・・・・・・・・

ぼくは2つの世界を行き来していた。

マジョリティの世界とそこから外れた世界。

2つの世界を常にビクビクしながら綱渡りしていた。
当たり前が分からない。

人の目がいつも怖かった。

世界が崩壊した日ぼくは境界線を見失った。

放心状態が3日ほど続いた。
そのあと強い食欲の衝動に駆られた。

ぼくはコンビニに行き食料を買い漁った。

衝動をコントロールすることは出来なかった。

・・・・・・・

人の目は相変わらず怖かった。
よくアルコールを飲んだ。
忘れることが出来たから。
一日中お酒を飲んでいることもよくあった。

そういえばあの人もよくお酒を飲んでいたな。

ウィスキーの匂いを嗅ぐとあの人を思い出す。
だからウィスキーだけは飲まなかった。

・・・・・・・

モラトリアム。

土台となる地盤がないまま時間だけが過ぎていった。

決して満たされることはなかった。
掴んだものはすべてこぼれ落ちていく。

ぼくには何もなかった。
何も得ることは出来なかった。

ずっと1人だった。

・・・・・・・・

数年が経った。

あるとき誰かがぼくのことを「友だち」と言った。

耳を疑った。

どう反応していいのか分らなかったから聞き流した。

友だち?

ぼくは誰かを友だちだと思ったことは1度もなかった。

彼は何を思ってそう言ったのだろう。
深い意味はなかったのかもしれない。

だけどぼくの頭の中ではその言葉がずっと離れなかった。

友だちなんて必要なかった。
そんなものはいらない。

ずっとそう思って生きてきたのに。
なぜだろう。
そんなこと言われたのは初めてだった。

頭が混乱していた。

・・・・・・・・

そしてある朝目覚めたときそれまで一度も感じたことのない感覚に包まれた。

「ここにいる」

初めてそう感じた。
涙が溢れていた。

「ぼくはここにいる」
「ここにいてもいいんだ」

ぼくは気付いていなかった。
いつの間にか誰かと繋がっていた。
誰かとの繋がりがぼくに色を与えてくれた。

それはささやかなきっかけだった。

世界が変わりはじめた。

・・・・・・・・

ぼくはどこかちぐはぐだ。
それでもあって当たり前の感覚を感じることが出来るようになった。

ぼくは透明。
生きているから存在している。

だけど少しずつ2つの世界が融合していく。
幸せと恐怖が同時に襲ってくる。

喜びを感じていいのだろうか。
泣いてもいいのだろうか。
怒りをぶちまけてもいいのだろうか。

怖い。

ぼくは誰なんだろうか。

だけどそんな想いもいつかは全て淘汰されていくのだろう。

ある日窓を開けたらベランダに小さな花が咲いていた。
世界に少しずつ色が足される。

そばにいてくれてありがとう。

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コメント一覧

全2件
  1. schedule2016.08.23

    豆しば

    未来は自分で掴むもの
    これからですよ

  2. schedule2016.08.22

    わんころ

    読んでて
    勝手に涙が出て泣いちゃいました
    ゆうやさんに出会えてよかったです
    また日を合わせて会いに行きますね
    またお話しましょう

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