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悩みなんかじゃない
908 edit2015.03.22
だから、こんなものは悩みとは呼ばない。不安や不満とも呼ばない。そして、こんなところにこんなものを書き込むのは違うとも思う。言うなればこれは、ちょっとした気の迷いだ。
「あれから四年目」そんなフレーズでとある事柄に引っ掛かる人は多分結構いると思う。いなくてもいい。そして私はその事柄をここでは「あれ」ということにする。前置きとしてもう一つ、共感しようと努力しなくていい。いや、不謹慎なことを書き綴るだろうから、しない方がいい。バカな人もいるものだ、くらいでいい。適当に流せないのなら読むのをお勧めしない。
私は「あれ」の当事者ではない。当事者にはなれない人間だ。共感できなければ、理解もできない。とても、酷人間だと思う。でも本当は、本当に、私は「あれ」の中にいたはずであった。確かにこの体で「あれ」を体験したはずであった。
確かに私は「あれ」の中にいた人間のはずである。
けれど、私はどうにも当事者ではないようだった。
私は福島の相馬という所の高校に通っていた。その日も学校で、授業を受けていた。昼食が終わり、五時間目の授業だった。眠い午後を「あれ」は打ち砕いた……はずだった。
学校は、一ヶ月もすれば再開していた。友達の顔には笑みがあった。部活では、いつものようにバカをした。いつも通りの日常が、変わらずそこにはあった。確かに、変わったことはあった。あったけど、今思えば日常のちょっとした変化でしかない。いつも使っていた道が、交通整備でしばらく使えなくて困ったなぁ、くらいの、そんなもの。
高校卒業して、関東にある大学に進学した。ますます、「あれ」は日常の中に消えていった。
私はどこにでもいる、普通の人間になれると思った。
でも、足を引っ張る鎖があった。
「大学生か、若いな。一人暮らし?」「はい」「大学の寮とか?」「いえ、アパートです」「へえ、スゴいね。どこ生まれ?」「……東北です」「そうなんだ、遠いねぇ。ちなみに、何県?」「……福島です」
言いづらい。言いづらいこと、この上ない。結構、人は優しいのだなと思った。けれど、無神経だなとも思った。
私は、当事者になれなかった人間だ。
家をなくしたわけでもない、家族を失ったわけでもない、友達をなくしたわけでもない、親が職を失い路頭に迷ったわけでもない、お金に困るようになったわけでもない。もはや「何もなかった」という方が近い。けれど、私がいた場所が否応なく私に鎖を巻き付ける。レッテルを張り付ける。
私は「あれ」の当事者にはなれなかった。けれど、普通の人間にもなれなかった。
きっと、ただ私は「あれ」との折り合いがいまだ付けられない、弱い人間なんだろう。「これは悩みなんかじゃない」そう強がって、弱い自分を認められず、意固地になって、息を吸うのも忘れて藻掻いているのだ。
きっと、私だけなのかもしれない。私だけじゃないのかもしれない。
この折り合いのつかないものと、これから先どれだけの時間共に過ごすのだろうかと思うと、それだけで心が路頭に迷うような気分になる。でもそれじゃあ、いけないこともよく分かっている。
高校の頃は、この気持ちにすら気づけないでいた。今だから、時間が経ったから、その輪郭をなぞることができるようになった。時間が解決してくれるとはいうけれど、時間はただ流れすぎるだけだ。川の水のように、気持ちを丸くはしてくれない。自分自身がそれと対峙していたから、ここまでできるようになったのだと思う。良くも悪くも、私は不器用な人間なのだ。
これから先も、どれだけ努力して当事者の方々の言葉を聞いたとしてもせめて理解はできても、共感はできないし、自分のものにはできない。けれど、普通の人間になることもできないだろう。それが「あれ」が少なくとも私にもたらしたものである。そんな人間が多いのか少ないのか、今の私にはどうでもいい。ただ、不器用過ぎて、そんなことで息を吸うのも忘れて藻掻いている人もいるのだ。でも、だからこうしてほしいとか、どう思ってほしいとか、何かを望んでいるわけではない。もしこれを読んだとしても、明日には忘れてても別に構わない。
これは、ちょっとした気の迷いで書いたものでしかないのだから。
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