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20代後半
女性
自分の中のもう1人と暗示
635 edit2019.10.17
自分の中にもう1人の自分がいる事に気がつきました。
その子は今の自分よりもうんと幼く、10歳前後だと思われます。
黒い長い髪と黒いワンピースを着て、いつも俯いていました。
それを、今の私が檻の反対側から見つめたり、同じように背を向けていたりしているのを、第三者視点で見ています。
話もしないし、顔も見えません。でも、何故かこの子は”自分である”と思ったのです。
当時は彼女は大きな檻の中でずっと泣き続けていました。朝昼晩。時間も問わず。
話しかけても足を抱えて、ただただ泣き続けるだけで。
単なる私の願望だろうと思っていたのですが、それが違うと理解したのは、檻の中で彼女が何度も死に始めてからでした。
死に方は様々でしたが、どれも泣きながら自害するのです。
それから2年ほど経ち、環境が変わり、少し己に余裕を持てた時。
初めて後ろを向いていただけの彼女が前を向いてしゃがんでいたのです。
相変わらず泣いているし、手を差し伸べても掴んでくれることはありません。
それから、彼女はどんどん変わっていきました。
ある日には檻が無くなっていて。
ある日には彼女が立っていて。
ある日には彼女が1歩歩いてはしゃがみこんで。それでも震える足で立ち上がる。
それが自分の精神状態とリンクしている事に気づいたのは1年ほど前です。
もう大丈夫。歩けている。彼女は救われた。
そう思っていました。
そして今。
私は泣きたいのに泣けない状況にあります。
別に環境のせいではありません。
ただ、負の感情が全く感じられなくなったのです。
ストレスが溜まっていることはわかっている。泣かなくては仕事にも生活にも支障が出るとわかっています。
でも、泣けないんです。つらいと思えない。苦しいこともない。泣けない。
そして寝るためにと目を瞑った瞬間、目の前にブワッと嫌な感覚がしたんです。
目を開ければ、そこには檻の柵に顔を貫かれた彼女と、首をぱっくり切られた彼女がいました。
二人いたんです。
闇のように引き込まれそうな空洞の目で、『なんで殺したの』と何度も訴えかけてきます。
その子達は、何度見ても、あの時前を向いて歩いていた”もう一人の私”なのです。
どうして、と手を伸ばして縋り付いて来るこの子達に、私は何も出来ず、ただされるがままでした。
それでも訴えかけてきます。
『なんで殺したの』『なんで泣いてくれないの』『なんでいらないなんて言ったの』
仕舞いには、泣きながらこういうのです。
『あなたが泣かないから、私が泣いてる』『その笑顔が嫌い』と。
どうしたら私はあの子達を救えるのでしょう。
話はしたこと無かったのに、がんばって、一歩ずつ歩いていた彼女が誇らしくて、嬉しかったのに。
心当たりといえば、感情が爆発しそうな時に『自分の感情は必要ない』と言い聞かせた事が原因だとは思うのですが、どうしたら私は自分でかけた暗示を解くことが出来るんでしょうか。
人は、何をしたら泣けますか?
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