小説評価して欲しいです
visibility635 edit2024.02.12
以前ここで投稿し、アドバイス等をしていただいたものを校正し少し書き直したものです。また感想などいただけると嬉しいです。
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苦い
「苦くてじゃりじゃりする、雪って。」
帰り道、今朝降ったばかりの新雪をじっと見つめていたら友達に、雪食べたことある?なんて聞かれた。
だから答えたのに、友達は嫌そうな顔をした。
「あっそう。けど雪って不衛生じゃない?よく食べられるね」
これまた嫌そうな顔をして言ってきた。
でも、友達が求めている答えが分かっていて
私はわざとそう言ったのだからお互い様かも。
朝、友達に会い一言目が「今日寒くない?」
になり、もう二ヶ月。やっと雪がはらはらと降り始めた。辺りをを見渡すと雪化粧とまではいかないが世界は白く色づいている。
綺麗だとは思うが、雪に良い思い出なんてない。
だっておじいちゃんは雪の降る日に倒れた。
階段から落ちたのだ。
なぜその日、階段なんかに登ったのかなんて分からない。2階は物置になっていて鍵は閉めて、おばあちゃんが持っていたから。けど家族は不思議になんて思っていなかった。
おじいちゃんは認知症だった。
病院のある町から少し離れた私の住む村、しかも夜は遅く、その日は大雪警報もでていたのだ。すぐに救急車なんか来るはずもない。
「ゔっー!!!ゔー!!」
とまるで赤ちゃんみたいに騒ぐおじいちゃん。
階段から流れ落ちる赤はまるで血みたいだ、と私はどこか他人事のようだった。
その後確か母に「どいて!」と大声で言われたことまでは覚えている。そして、比喩でもなんでもなく、気づいたら翌朝だった。
そこからおじいちゃんはもういない。
数日後、病院に見舞いに行くとおじいちゃんは眠っていた。その姿を見て思わず母に「これ、だれ?」と聞いてしまったのはしょうがないと思う。
「…痩せちゃってるよね、一日中ずっと寝てるの。私が来ても起きてくれない、あとね、たぶん分かってないんだと思う、私のこと。」
と無表情でつぶやく母が何を考えているのかなんて口に出さなくても分かっていた。
おじいちゃんは認知症だ、けれど少なくとも私たちの顔は分かっていた。
最近は母とよく間違えられていたけど。
急に本当にこの人は私のおじいちゃんなのかという疑問があふれてきて、思わず逃げるように病室から出ようとすると後ろから母の
「おばあちゃんに無理させないでね!」という声が聞こえてきた。
うるさい!分かってるよ…
と小さく呟き
消毒の匂いが追いかけてくるから、
そう言い訳しておばあちゃんの車へ、走った。
しばらくぼーっとそんなことを思い出していたせいで友だちの話を聞き逃してしまった。怒りながら「話聞いてる!?」なんて言ってくる。
というか私なんでそんなこと思い出したんだろ、
もう2年も経ってるのに。
雪が少し降り始め、積もる雪を踏みしめるようにザクザクと道を歩く。
甘かったはずだった。だって、ふわふわしてて、冷たくて、 おいしかった。
「雪は天然の砂糖菓子なんだ。」
ふいに、あの時雪を夢中で食べる私を見て笑ったおじいちゃんの言葉が脳裏に浮かんだ。
恐る恐る下に積もる純白を口に含んでみる。
けれどそれは
苦くてじゃりじゃりする、雪だった。