AA(アルコホーリクス・アノニマス)完全ガイド|12ステップ・断酒会との違い・初めてのミーティング参加方法

AA(アルコホーリクス・アノニマス)完全ガイド|12ステップ・断酒会との違い・初めてのミーティング参加方法

「私は、アルコホーリクの〇〇です」
「私は、〇〇です。今日もしらふでここに来られました」
そんな名乗りから、世界150か国以上のミーティング会場で輪が始まります。

AA(Alcoholics Anonymous/アルコホーリクス・アノニマス)は、1935年6月10日、米国オハイオ州アクロンでビル・ウィルソンとボブ・スミスの2人によって始まった、アルコール依存症からの回復のための自助グループです。会費・入会金・宗教的な縛り・専門スタッフのいずれも持たず、「飲みたくないという願いだけ」を共通項として、当事者どうしが集まり続けてきました。

日本にも1970年代から伝わり、現在は全国におよそ500グループ前後が活動。「断酒会」と並ぶアルコール依存症の自助グループの両輪として、医療機関・保健所・行政から本人・家族につながれる入口になっています。

この記事では、ココトモが地域の保健福祉現場で出会ってきた当事者・家族の声をもとに、AAの歴史・12のステップ・12の伝統・ミーティングの種類・初めての参加方法、そして日本独自の「断酒会」との違い、Al-Anonをはじめとする派生グループまで、1本で全体像がつかめる入門ガイドとして丁寧にまとめました。本人・家族・医療職・福祉職・学生のいずれの立場の方にも、最初の一歩のヒントになる内容を目指しています。

📌 この記事でわかること

  • 1935年6月10日、米国オハイオ州アクロンでビルWとボブSによって始まったAAの誕生と、世界150か国以上への広がり
  • 回復の道筋を示す「12のステップ」と、共同体の運営原則である「12の伝統」の全文と意味
  • AAの核心である「アノニミティ(匿名性)」の二重の意味——個人の保護と、共同体の謙虚さ
  • オープン/クローズド/スピーカー/ステップ・スタディ4タイプのミーティングと、初めての参加5ステップ
  • 日本独自の「断酒会」(1958年高知県土佐市発足)との運営・宗教性・家族参加・匿名性・名乗り方の違い
  • Al-Anon・Alateenなど家族・10代向けの自助グループ、NA・GA・OA・SAなどAAから派生した自助グループの広がり

AAとは|1935年米国オハイオ州、二人の出会いから始まった

AA(Alcoholics Anonymous/アルコホーリクス・アノニマス)は、アルコール依存症からの回復を願う本人どうしが、経験・力・希望を分かち合うために集う自助グループです。自助グループ完全ガイドでも触れたとおり、専門家がリードする治療プログラムではなく、当事者自身が運営・参加する「相互援助」のための集まりという点が大きな特徴です。

1935年6月10日、ビルWとボブSの出会い

AAの誕生日とされるのは1935年6月10日。米国オハイオ州アクロンで、ニューヨークの株式仲買人だったビル・ウィルソン(Bill W.)と、地元の外科医だったボブ・スミス(Dr. Bob S.)がはじめて顔を合わせた日です。二人とも長年の重度のアルコール依存に苦しみ、入退院と再飲酒を繰り返していました。
ビルがニューヨークで体験した「霊的な目覚め」と、当時米国で広がっていたオックスフォード・グループ(キリスト教の倫理運動)の手法、そして「アルコホーリクは別のアルコホーリクと話すと素面でいられる」という発見が二人を結びつけ、ここからアルコホーリクが互いを助け合う運動が始まりました。

1939年、ビッグブック『Alcoholics Anonymous』刊行

AAの原典となるのが、1939年に刊行された書籍『Alcoholics Anonymous』(通称「ビッグブック」)です。最初の100人ほどのメンバーの体験談と、回復の方法をまとめた1冊で、ここに後の「12のステップ」が初めて活字として登場します。書名がそのまま運動の名前となり、Alcoholics Anonymous=AAとして全米・全世界へと広がっていきました。
現在もビッグブックはAAの公式テキストとして読み継がれ、日本語版もAA日本ゼネラルサービスオフィス(JSO)を通じて入手できます。1939年の初版当時と現在で、最初の164ページの本文は基本的に変更されていないのが特徴です。

1953年、「12のステップと12の伝統」で運営原則が確立

AAは創設から十数年で世界各地に広がりましたが、「グループ間の対立」「外部団体との連携問題」「メンバーの公私混同」などの新しい課題が見えてきました。これに応える形で、1946年頃からビルWが起草し、1950年の第1回国際大会で採択され、1953年に書籍『12のステップと12の伝統』として刊行されたのが「12の伝統」です。
12のステップが「個人の回復のプロセス」を示すのに対し、12の伝統は「共同体としてのAAをどう守るか」を示す運営原則になっています。後述するアノニミティ(匿名性)の伝統11・12は、この時に明文化されました。

世界150か国以上、200万人前後のメンバーシップ

AAワールドサービスの公開情報によると、現在AAは世界150か国以上で活動し、メンバー数は約200万人前後、グループ数は約12万以上と推計されています(年度・集計時点により幅があります)。日本にも1970年代から伝わり、現在はAA日本ゼネラルサービスオフィス(東京)を中心に、北海道・東北・関東・中部・関西・中四国・九州沖縄の各地区委員会が活動し、全国でおよそ500グループ前後がミーティングを開いています。

出典:AA World Services, Inc. 公開資料/AA日本ゼネラルサービスオフィス(JSO)公開情報/『Alcoholics Anonymous』(ビッグブック)/『12のステップと12の伝統』

AAの基本理念|「アルコホーリク以外の何者でもない」

AAの活動を支えるいくつかの基本理念のうち、もっとも有名なのが「AAの唯一の目的は、まだ苦しんでいるアルコホーリクにメッセージを運ぶこと」という言葉です。ビッグブックや12の伝統に繰り返し登場するこのフレーズは、AAが福祉団体・治療機関・社会運動団体ではなく、当事者の相互援助の場であることを端的に示しています。

メンバーになる条件はただ一つ

AAのメンバーになる条件は、伝統3に明記されているとおり「飲酒をやめたいという願いだけ」です。入会金も会費もありません。職業・年齢・性別・宗教・国籍・断酒期間の長短は一切問われず、本人が「自分はアルコホーリクかもしれない」と感じてミーティングに座れば、その瞬間からメンバーです。誰かに認定される必要も、登録する必要もありません。

「治す」のではなく「素面で1日を生きる」

AAは「アルコール依存症は完治するものではなく、回復し続けるもの」という立場をとります。ミーティングでもよく語られる合言葉が「One Day at a Time(今日一日)」。「一生酒を飲まない」と誓うのではなく、「今日一日、しらふで過ごす」を積み重ねていく姿勢です。この発想は、断酒会・NA・GAなど他の自助グループにも引き継がれています。

専門家ではなく、対等な仲間として

AAには医師・カウンセラー・聖職者などの「専門家リーダー」はいません。司会・会計・連絡係などの役割は「奉仕活動(サービス)」と呼ばれ、メンバーが交代で担当します。発言にも序列はなく、断酒30年のメンバーと今日初めて来た新参者が、同じ円卓で名乗り、同じ重さで聞かれます。「経験・力・希望の分かち合い」という言葉は、この対等性を支える最も大切な合言葉です。

12のステップ|回復のプロセスを示す道しるべ

「12のステップ」は、ビッグブックに記された個人の回復のための12の段階です。順番に進むことが推奨されていますが、「修了試験」も「合格証」もなく、生涯にわたって繰り返し取り組む対象とされています。ここでは原典のニュアンスを大切にしつつ、4つのテーマに分けて整理します。

テーマ1|認める(ステップ1〜3)

1️⃣

無力を認める

アルコールに対して自分が無力であり、自分の生き方をどうにもしようがなくなったことを認めた

2️⃣

大きな力を信じる

自分よりも大きな力が、自分たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった

3️⃣

委ねる決心をする

自分の意志と生き方を、自分なりに理解した「大きな力」の配慮にゆだねる決心をした

テーマ2|棚卸しと償い(ステップ4〜9)

4️⃣

自分の棚卸し

恐れずに徹底して、自分自身の道徳的な棚卸しを行った

5️⃣

過ちを認める

大きな力に対し、自分自身に対し、もう一人の人に対し、自分の過ちの本質をありのままに認めた

6️⃣

準備が整う

こうした性格上の欠点を、すべて取り除いてもらう準備がすべて整った

7️⃣

短所を取り除いてもらう

謙虚に、自分の短所を取り除いてくださいと願った

8️⃣

償いの相手リスト

自分が傷つけたすべての人のリストを作り、その人たち全員に進んで埋め合わせをしようとする気持ちになった

9️⃣

直接の埋め合わせ

その人たちや他の人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした

テーマ3|継続(ステップ10〜11)

🔟

日々の棚卸し

自分自身の棚卸しを続け、間違ったときは直ちにそれを認めた

1️⃣1️⃣

祈りと黙想

祈りと黙想を通して、自分なりに理解した大きな力との意識的な触れ合いを深め、それを実行する力のみを願った

テーマ4|分かち合い(ステップ12)

1️⃣2️⃣

メッセージを運ぶ

これらのステップを経た結果、自分が霊的に目覚め、このメッセージをアルコホーリクに伝え、そして自分のすべてのことにこの原理を実行しようと努力した

注:本記事のステップ文言は、AA日本ゼネラルサービスオフィス公認の日本語訳をもとにした要約・抜粋です。正確な原文は『Alcoholics Anonymous』日本語版(ビッグブック)を必ずご参照ください。

12の伝統|AA共同体を守るための運営原則

「12の伝統」は、AAという共同体が分裂・腐敗せずに存続するための12の原則です。個人の回復を支える12のステップとは別の役割を持ち、グループ運営の場面で繰り返し参照されます。要約すると、次の12項目になります。

  • 伝統1:共同の福利——一人の回復はAA全体の一致にかかっている。個人より共同体を優先する
  • 伝統2:唯一の権威——AAの目的に関する唯一の権威は、グループの良心に表れる「愛の神」。リーダーはあくまで奉仕者であって支配しない
  • 伝統3:メンバーの条件——AAのメンバーになるのに必要な唯一の条件は、飲酒をやめたいという願いだけ
  • 伝統4:グループの自治——他のグループやAA全体に影響することを除いて、各グループは自治をもつ
  • 伝統5:唯一の目的——各グループの最大の目的はただ一つ、まだ苦しんでいるアルコホーリクにメッセージを運ぶこと
  • 伝統6:外部団体との関係——他団体や外部の事業を支持・融資・名前を貸すことはしない。金銭・財産・名声の問題から目的をそらされないため
  • 伝統7:自立——すべてのAAグループは外部からの寄付を受けず、メンバーの献金で自立する
  • 伝統8:非専門性——AAはどこまでも非専門家で通すべきだが、サービスセンターには専門の職員を雇うことができる
  • 伝統9:組織化しない——AAそのものは決して組織化されるべきではないが、奉仕に責任を負う各種の委員会や理事会を設けることはできる
  • 伝統10:外部問題に意見しない——AAは外部の問題に意見を持たない。AAの名前は決して公の論争にまきこまれてはならない
  • 伝統11:広報の原則——広報の方針は引きつけることであり、宣伝ではない。活字・電波・映像において常にアノニミティを守る
  • 伝統12:アノニミティの基盤——アノニミティは私たちすべての伝統の霊的な基盤であり、個人より原理を優先する常なる注意を促してくれる

アノニミティ(匿名性)|AAの霊的な基盤

🕊️ アノニミティに込められた二重の意味

AAのアノニミティ(Anonymity/匿名性)は、単なる「個人情報保護」を超えた二重の意味を持っています。
① 個人の保護——アルコール依存症は社会的偏見と結びつきやすい病気です。AAに参加していることが職場・近所・親族に知られると、不利益を被るおそれがあります。だからこそ「外に対して、AAメンバーであることを明かさない/他のメンバーの名前を明かさない」が大原則になります。
② 共同体の謙虚さ——伝統12は「個人より原理を優先する常なる注意を促してくれる」と述べます。誰か一人がスターとして名前を売る、AAを背負って公の場に出る——こうした行為がAA全体を脅かす歴史を、創設者たちは目の当たりにしてきました。匿名でいることは、自分を低く保ち、共同体を守るための霊的な姿勢でもあるのです。

会場では、ファーストネームのみ・ハンドルネームのみで名乗るのが習わしです。後述する断酒会との大きな違いの一つも、この匿名性の扱い方にあります。

ミーティングの種類|4つのタイプを知っておく

AAのミーティングにはいくつかのタイプがあり、目的や参加できる人の範囲が異なります。初めての方はまず「オープンミーティング」から訪ねるのが安心です。

🚪

① オープンミーティング

アルコホーリクでない方も含めて誰でも参加できるタイプ。家族・友人・医療職・福祉職・学生・見学者すべて歓迎。AAの雰囲気を知る最初の入口として最適

🔒

② クローズドミーティング

「自分はアルコホーリクである」と認める本人のみが参加できるタイプ。本人どうしだからこそ話せる深い話題が出やすい。家族・支援者は遠慮するのが原則

🎤

③ スピーカーミーティング

指名されたメンバーが30〜60分かけて「お酒で何が起き、AAに出会い、いまどう生きているか」を語るタイプ。ロールモデルとなる回復のストーリーに触れられる

📖

④ ステップ・スタディ

ビッグブックや『12のステップと12の伝統』を1〜2章ずつ輪読し、感想を分かち合うタイプ。回復のプロセスを体系的に学びたいメンバーが継続参加する形式

会場・曜日・時間・タイプは、AA日本ゼネラルサービスオフィスの公式サイトで地域別に検索できます。「平日夜のオープン」「土曜午後のステップ」「日曜午前のクローズド」など、自分の生活リズムに合うミーティングを複数組み合わせて通うメンバーが多いのが実情です。

初めてAAミーティングに参加する5ステップ

「行ってみたいけど、何から始めればいいか分からない」という方のために、初参加までの流れを5段階に整理しました。多くの方が1〜2週間以内に最初の1回にたどり着けます。

  1. 1

    ① 地域のAAグループを探す

    AA日本ゼネラルサービスオフィス(aajapan.org)の公式サイトで「地区別ミーティングリスト」を確認します。検索ができない地域は、最寄りの保健所・精神保健福祉センター・依存症相談拠点機関に問い合わせると、AAの会場を案内してもらえます。電話・LINE相談を受け付けるサービスオフィスもあります。

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    ② まずはオープンミーティングを選ぶ

    最初の1回はオープンミーティングを選びます。本人でなくても参加できるため、「自分は依存症か分からない」「家族の状態を知りたいだけ」の段階でも安心して座れます。予約は基本不要、当日10〜15分前に会場へ着いて、入口で「初めてです」と伝えるだけでOKです。

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    ③ 自己紹介と「パス」の自由

    ミーティングが始まると、円になって順番に話していきます。名乗りはファーストネームやハンドルネームでOK、住所・職業を言う必要はありません。話したくないときは「パスします」と言って次の人に回してかまいません。「聴くだけ」を選ぶ自由が完全に守られています。

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    ④ 続けて参加する(6回ルール)

    AAでは「合うかどうかは6回行ってから判断する」という非公式の目安があります。1回目は緊張で内容が頭に入りにくく、本当の雰囲気は2〜3回目以降に見えてくるためです。曜日・会場を変えて複数のグループに通うと、自分に合う場所が見つけやすくなります。

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    ⑤ ホームグループを見つける

    数か月通ううちに、自分が中心的に参加する「ホームグループ」を決めるメンバーが多いです。ホームグループは奉仕(司会・会計など)を担う場所、自分の名前と顔を覚えてもらう場所です。ピアサポートの根がここから育っていきます。

AAと「断酒会」の違い|日本の2つの自助グループを比較する

日本のアルコール依存症の自助グループには、AAと並ぶもう一つの大きな流れ「断酒会」があります。1958年(昭和33年)に高知県土佐市で発足した日本独自の自助グループで、現在は公益社団法人 全日本断酒連盟(全断連)を中心に全国で活動しています。AAと断酒会は同じ目的(アルコール依存症からの回復)を共有しますが、運営スタイルにはっきりとした違いがあります。

比較項目 AA(アルコホーリクス・アノニマス) 断酒会(全日本断酒連盟)
発祥 1935年 米国オハイオ州アクロン 1958年 高知県土佐市
運営母体 各グループの自治/世界はAAワールドサービス/日本はJSO 公益社団法人 全日本断酒連盟(全断連)
会員制度 正式な会員登録なし/会費なし 会員登録あり/会費あり(地域により差)
名乗り方 ファーストネーム・ハンドルネームのみ(匿名) 原則として本名を名乗る
家族の参加 本人が中心。家族はAl-Anonへ 家族同伴で参加するのが基本スタイル
宗教性 「より高い力」という概念はあるが特定宗教ではない 宗教色なし(無宗教を明示)
テキスト ビッグブック/12のステップ・12の伝統 明文化された12項目のテキストはなし/例会と体験談中心
広報スタンス 引きつけることが原則。メディア露出時もアノニミティを守る 本名・顔出しで講演・行政連携・啓発を積極的に行う

どちらが優れているという話ではなく、「自分・自分の家族に合うかどうか」で選ぶのが大切です。両方に並行して通うメンバーもいます。家族同士のつながりを重視したい方は断酒会、匿名で個人として向き合いたい方はAAという選び方も一つの目安になります。

Al-Anon・Alateen|家族・10代のための自助グループ

アルコール依存症は「家族の病気」とも呼ばれるとおり、本人と暮らす家族・パートナー・子どもにも深い影響を及ぼします。AAが本人のための場であるのに対し、家族のための自助グループとして発展してきたのがAl-Anon(アラノン)Alateen(アラティーン)です。

Al-Anon|1951年、ロイス・ウィルソンが立ち上げた

Al-Anonは、1951年、AA創設者ビル・ウィルソンの妻ロイス・ウィルソン(Lois W.)と友人のアンによって組織化されました。それ以前から各地でAAメンバーの家族が自発的に集まり始めていたものを、ロイスが全米組織として束ねた形です。
AAと同じ「12のステップ・12の伝統」を採用し、アルコホーリクの家族・パートナー・友人が、アルコホーリクとの関係で生じた自分自身の問題に取り組みます。「アルコホーリク本人を変えようとするのではなく、自分自身の幸せを取り戻す」という姿勢が中心に据えられています。

Alateen|アルコホーリクの家庭で育った10代のための場

Alateenは、家族にアルコール問題を抱えた10代の若者(おおむね小学生〜高校生)のための、Al-Anonの一部門です。同年代の仲間の中で、家庭で起きていることを言葉にし、「親の飲酒は自分のせいではない」「自分の人生を自分で生きていい」と確かめ合う場として、世界各地で活動しています。
日本でもAl-Anon Japanがミーティングを開催しており、本人がAAに通うのと並行して、家族がAl-Anon、子どもがAlateenに通うというパターンが、依存症ケアの定番モデルになっています。

家族側の自助グループ全般の歩み方は家族会・家族の自助グループ完全ガイドでも詳しく扱っています。

AAから派生した自助グループ|12ステップ運動の広がり

AAの「12のステップ・12の伝統」モデルは、アルコール以外の依存・嗜癖の領域にも応用されてきました。これら派生グループは「12ステップ・グループ」と総称され、世界中に広がっています。日本にも複数のグループが活動しています。

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NA(ナルコティクス・アノニマス)

薬物依存からの回復のための自助グループ。1953年米国で誕生。覚醒剤・大麻・処方薬等を問わず「依存物質はすべて薬物」として扱う点が特徴。詳細はNA完全ガイド

🎲

GA(ギャンブラーズ・アノニマス)

ギャンブル依存からの回復のための自助グループ。1957年米国ロサンゼルスで誕生。借金・嘘・家族関係の崩壊からの回復を中心に語られる。詳細はGA完全ガイド

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OA(オーバーイーターズ・アノニマス)

過食・拒食など摂食障害からの回復のための自助グループ。1960年米国ロサンゼルスで誕生。食べることと身体イメージの問題に12ステップを応用する

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SA/SLAA(セックス・恋愛依存)

性依存・恋愛依存からの回復のための自助グループ。SAは1979年、SLAAは1976年に米国で誕生。日本でも一部地域で活動

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CoDA(コ・ディペンデンツ)

共依存からの回復のための自助グループ。1986年米国誕生。「他者の人生を生きてしまう」傾向に12ステップを応用する

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ACA/ACoA(アダルトチルドレン)

機能不全家庭で育った大人の自助グループ。1978年米国誕生。アルコホーリクの親を持つ大人(Adult Children of Alcoholics)から始まり、現在は機能不全家族全般に広がる

いずれもAAの12のステップ・12の伝統をそれぞれの領域に置き換える形で運営されています。本人がAAに通い、配偶者がAl-Anonに通い、別の家族メンバーがACAに通う——複数の自助グループが家族を多方向から支える構図は、現代の依存症ケアでは珍しくありません。

体験談|3つの立場から見たAA

💬 30代男性・営業職|「ストロング缶を毎晩4本」だった日々から

「ストロング系チューハイを毎晩4本、土日は朝から。ある日朝起きられず大事な商談に遅刻して、奥さんに『病気だよ』と泣かれて初めて病院に行きました。専門病院の主治医に勧められて近所のAAオープンに参加。最初の3回は何も話せず、ただ円のなかで聞いていました。4回目の帰り道、『自分も話していいんだ』と思えた。今しらふ2年です。週2回のミーティングが、今の僕の背骨です」(150字)

💬 40代女性・育児中|「キッチン飲み」が誰にも言えなかった

「子どもを寝かしつけた後のワインが、いつのまにかボトル1本になっていました。誰にも相談できず、女性専用のオンラインAAミーティングを見つけて参加。顔も声も出さず、テキストチャットだけでも参加できることに救われました。半年後に対面ミーティングにも行けるようになり、同じ立場の女性メンバーに出会えたのが大きかった。育児中で外出が難しい人にこそ、オンラインの選択肢を知ってほしい」(160字)

💬 50代女性・夫がアルコホーリク|Al-Anonに通い続けて

「夫の飲酒を止めようと、隠す・捨てる・怒る・泣くを20年繰り返しました。専門病院のケースワーカーにAl-Anonを紹介されて参加して衝撃でした。『あなたが変わるところはここではなく、自分自身です』と何度も聞かされ、最初は反発しました。でも通い続けるうちに、夫の飲酒に振り回されない『私の人生』を取り戻せた。夫はその後AAにつながり、いまは別々の場で回復を続けています」(150字)

ありがちな誤解5選|AAに関する誤った思い込み

AAは映画・ドラマでの描かれ方の影響もあり、実態と異なるイメージが広がりがちです。代表的な5つの誤解を整理します。

  • 誤解①「AAはキリスト教の宗教団体である」——違います。AAは特定の宗教を持たず、教会・寺院との組織的な関係もありません。「より高い力(Higher Power)」という概念はありますが、これは「自分なりに理解した、自分より大きな何か」を意味し、神でも自然でも仲間でも、無神論者であれば「論理」「真理」と置き換えるメンバーもいます。
  • 誤解②「AAは治療プログラムである」——違います。AAは医療機関でも治療施設でもなく、当事者の自助グループです。専門治療と並行して通うのが一般的で、医師・カウンセラーとAAは対立関係にありません。
  • 誤解③「AAは無理やり告白させられる場所である」——違います。話したくないときは「パス」で問題ありません。新規参加者には「まず6回は聴くだけでもいい」と勧められるのが普通です。
  • 誤解④「断酒会とAAは別物で、選び間違えると失敗する」——違います。両者は運営スタイルが違うだけで、目的は同じです。両方に通うメンバーもいて、自分に合う方を選ぶ/組み合わせるのが基本です。
  • 誤解⑤「一度行ったら一生通わなければならない」——違います。本人の判断で来る・来ないを決めます。ただ、長期間の回復を保っているメンバーの多くが「やめずに通い続けてきたから今がある」と語るのも事実で、その意味で「やめる必要を感じない場所」と言われます。

よくある質問|AA Q&A 10問

Q1. AAは無料で参加できますか?

入会金・会費はありません。ただし、伝統7にあるとおりAAは外部からの寄付を受けず、メンバーの献金で自立しています。多くのグループでは会場代等の運営費としてミーティング中に献金カゴが回りますが、強制ではなく、無理のない範囲で(数百円程度)入れる方が多いのが目安です。新規参加者は入れなくても構いません。

Q2. 名前や住所を聞かれることはありますか?

ありません。ファーストネームまたはハンドルネームのみで参加します。住所・職業・年齢を尋ねることは原則として禁止されており、メンバーリストや出席簿もありません。これがアノニミティ(匿名性)の実務的な姿です。

Q3. 自分がアルコホーリクかどうか分からないのですが、行ってもいい?

はい。オープンミーティングは自分がアルコホーリクかどうか分からない方も歓迎されます。AAでは「自分がアルコホーリクかどうかは、自分で決めることです」と繰り返し説明されます。診断書も判定もなく、ご自身の感覚で判断することが尊重されます。

Q4. 家族が依存症かもしれないのですが、本人を連れて行けません。私だけ行ってもいい?

AAは本人のための場なので、家族の参加はオープンミーティングに限られます。それ以上に家族の方におすすめなのが、家族のための自助グループAl-Anonです。「本人を変えようとするのではなく、自分自身の幸せを取り戻す」というアプローチで、本人がAAにつながる前から家族だけで通い始めることができます。

Q5. オンラインミーティングはありますか?

あります。新型コロナを機に世界中でオンラインAAミーティングが急増し、日本でもZoom・電話会議を用いた女性専用ミーティング、夜間ミーティング、英語ミーティングなどが活発に開催されています。AA日本ゼネラルサービスオフィスの公式サイトに一覧があります。地方や育児中・在宅介護中で外出が難しい方の入口として大きな役割を果たしています。

Q6. AAは「神」を信じないと参加できないの?

いいえ。AAで言う「より高い力(Higher Power)」は、特定宗教の神ではなく「自分なりに理解した、自分より大きな何か」を指します。仲間(グループ)、自然、論理、真理、未来——どう理解するかは本人の自由です。無神論者・無宗教の方も多く参加しており、「神を信じる必要はない」というのがAAの実態です。

Q7. 病院で治療を受けています。AAと併用していい?

はい、併用が一般的です。AAは医療と対立せず、専門病院・依存症外来・回復施設(リハビリ)と並行して通うメンバーが多数派です。むしろ「治療+AA+場合により薬物療法」という三位一体のケアが、現代の依存症医療の標準的な姿です。主治医にAA参加を伝えると安心です。

Q8. ミーティングで知り合ったメンバーと外で連絡を取ってもいい?

連絡先の交換自体は禁止されていません。スポンサー(先輩メンバーが新規メンバーをサポートする関係)として個別に支える文化もあります。ただし、メンバーの身元をAA外で漏らさない・私的な利益のために関係を使わない、というアノニミティの原則は厳守されます。

Q9. AAの正式な「断酒期間」のカウント方法は?

最後に飲酒した日の翌日からカウントするのが慣習です。多くのグループでは連続断酒の節目(90日/半年/1年/2年…)にコインや記念チップを渡す習慣があり、本人と仲間が一緒に喜びます。再飲酒した場合はゼロから数え直しますが、責めるのではなく「もう一度始めればいい」と迎え入れる文化が根づいています。

Q10. 行政・医療職としてAAに見学に行ってもいい?

はい、オープンミーティングであれば歓迎されます。保健師・精神保健福祉士・看護師・ソーシャルワーカー・行政担当者の見学は、患者・利用者をAAにつなぐ際の質を高めるため積極的に推奨されています。事前にグループの連絡係に「見学希望」と伝えると、当日の流れの説明や質問時間を用意してくれる会もあります。

あわせて読みたい|次の一歩のヒント

参照元:AA World Services, Inc.(www.aa.org)公開資料/AA日本ゼネラルサービスオフィス(JSO、aajapan.org)公開情報/『Alcoholics Anonymous』日本語版(ビッグブック)/『12のステップと12の伝統』日本語版/公益社団法人 全日本断酒連盟(全断連)公開情報/Al-Anon Family Group Headquarters公開情報/Al-Anon Japan公開情報/厚生労働省「依存症対策」関連資料/全国の精神保健福祉センター・依存症相談拠点機関 公開情報を参照(いずれも2026年5月時点。グループ数・メンバー数・国数は年度・集計時点により差があります。ステップ・伝統の日本語訳はAA日本ゼネラルサービスオフィス公認訳を要約・抜粋しており、正確な原文は公式テキストをご参照ください)

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