『死にたい』と打ち明けられた相談員のための完全ガイド|傾聴ボランティア・カウンセラーが取るべき5つの対応と専門連携

『死にたい』と打ち明けられた相談員のための完全ガイド|傾聴ボランティア・カウンセラーが取るべき5つの対応と専門連携

「電話の向こうで震える声で『もう死にたい』と言われた。頭が真っ白になって、何も言えなかった」
「ボランティアを始めて3ヶ月、初めて希死念慮を打ち明けられた。励ましていいのか、警察を呼ぶべきか、夜中まで悩んだ」
「自分の対応が間違っていたら、この人が死んでしまうかもしれない——その重さに、もう活動を辞めたいとさえ思った」

傾聴ボランティア、ピアサポーター、カウンセラー、相談員。「死にたい」と打ち明けられる側に立った経験のある方なら、誰もが一度は通る恐怖と無力感の瞬間です。

しかしまず、深呼吸して受け取ってほしい事実があります。「死にたい」という言葉が向けられたあなたは、その人にとって「最後に信頼できた他者」です。打ち明けは絶望の表現であると同時に、多くの場合「生きたい」という気持ちの裏返しであり、支援を求めるサインそのものでもあります。あなたが完璧でなくても、「逃げずに聴いた」という事実が、その人の今夜を守る力になります。

この記事では、WHOの自殺予防ガイドライン、Paul Quinnett の QPR ゲートキーパー研修(1995)、Thomas Joiner の対人関係理論(2005)、Klonsky & May の三段階理論(2015)、Stanley & Brown の Safety Planning Intervention(2012)といった国際的な一次資料をもとに、相談を受ける側が取るべき5つの基本対応と、専門機関への橋渡し方を、現場で本当に使える順序で整理しました。

※本記事は「相談を受ける側」のためのガイドです。当事者の方はいのちの電話等の連絡先一覧を直接ご覧ください。本記事は WHO Media Guidelines (2017) に基づき、自殺の手段・方法に関する具体的記述は意図的に避けています。

📌 この記事でわかること

  • なぜ人は「死にたい」と打ち明けるのか——打ち明けは信頼の証であり、多くは支援要請であるという理解
  • 相談員が陥りやすい4つの罠(フリーズ/否定・励まし/過剰反応/一人で抱え込む)
  • QPR ゲートキーパーモデルに基づく相談員が取るべき5つの基本対応(直接尋ねる/受容と傾聴/緊急性アセスメント/環境の安全化/専門機関への橋渡し)
  • Joiner 2005・Klonsky & May 2015・Stanley & Brown 2012 など学術モデルの要点
  • リスクアセスメントで確認する5領域(念慮の頻度・計画性・過去企図歴・保護因子・急性ストレッサー)
  • 傾聴ボランティア固有の留意点と二次トラウマ・代理受傷の対処
  • 専門機関・公的相談窓口の連絡先一覧と、打ち明けを受けた後の支援者自身のセルフケア

なぜ人は「死にたい」と打ち明けるのか|打ち明けは信頼の証であり支援要請

「死にたい」と打ち明けられた瞬間、多くの相談員は「重すぎる秘密を背負わされた」と感じると言います。しかしまず押さえたい事実は、打ち明け自体が「生きるための行動」であるということです。本当に何の希望もない人は、誰にも何も話さずに静かに姿を消すと言われます。言葉にして他者に届けたという事実が、その人の中の「生きたい」「助けてほしい」という気持ちの存在を証明しています。

打ち明けは「信頼の証」——支援要請のサイン

WHOの自殺予防戦略でも、「希死念慮を口にできる関係性」は保護因子(protective factor)の一つと位置づけられています。打ち明けられたあなたは、その人にとって「最後に信頼できた他者」であり、孤立から脱する手がかりです。完璧な対応をする必要はありません。「逃げずに聴いた」「真剣に受け止めた」という事実そのものが、すでに援助として機能しています。

受動的希死念慮と能動的希死念慮の区別

希死念慮(自殺念慮、suicidal ideation)には、臨床的に2つの段階があります。受動的希死念慮能動的希死念慮の区別は、緊急性の判断に直結する重要な臨床概念です。

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受動的希死念慮(passive ideation)

「消えてしまいたい」「朝起きたくない」「このまま目が覚めなければいい」など、「自ら行動を起こさず、結果として存在しなくなりたい」という表現。苦しみの強さの表現であり、必ずしも切迫した危険ではないが、放置せず傾聴と継続的なフォローが必要

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能動的希死念慮(active ideation)

「自分から死にたい」「具体的に死ぬことを考えている」など、「自分の行動として死を選ぶ」意思の表現。さらに計画性・時期・準備が伴う場合は切迫した緊急対応が必要。専門機関・救急への即時連携を検討するレベル

どちらの段階かを聞き取りの中で見極めることが、後述する「緊急性アセスメント」の入口になります。受動的だから安心、ではない点に注意してください。受動的希死念慮も放置すれば能動的に移行することがあり、継続的な見守りと専門機関との接続が常に基本姿勢です。

出典:World Health Organization「Preventing Suicide: A Global Imperative」(2014)/WHO 自殺予防関連刊行物

相談員が陥りやすい4つの罠|善意が逆効果になる典型パターン

打ち明けを受けた直後、多くの相談員が「やりたかったわけではない反応」をしてしまいます。いずれも善意・恐怖・無力感から生まれる自然な反応ですが、結果として相手をさらに孤立させてしまうことがあるため、事前に「典型パターン」として知っておくことが予防になります。

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① フリーズして固まる

「死にたい」という言葉に頭が真っ白になり、沈黙が続いてしまう。相手から見ると「やはり言わない方がよかった」「重荷になった」と受け取られる。固まったときは「今、私もその言葉の重さを受け止めています」と正直に伝えるのが正解

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② 否定・励まし

「そんなこと言わないで」「あなたには家族がいるでしょう」「もっと辛い人もいる」。一見親身に見えるが、相手の感情を「言ってはいけないもの」と否定している。打ち明けの蓋を閉じさせ、次から相談できなくなる典型パターン

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③ 過剰反応・本人意思の無視

パニックになり、本人の同意なく家族・警察・救急を呼ぶ/「すぐ病院に行きなさい」と命令する。本人の主体性と信頼関係を一気に壊し、次の援助も拒否されやすくなる。緊急時の通報は必要だが、必ず本人と話し合いながら段階的に進める

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④ 一人で抱え込む

「秘密にしてと言われたから」と、誰にも相談せずに一人で対応を続ける。援助者が燃え尽き、判断を誤り、二次トラウマを抱える最大要因。守秘義務には「自傷他害の恐れ」という例外があり、本人保護のための情報共有は倫理上認められている

これら4つの罠は、「相談員のせい」ではなく構造的に起きる現象です。事前に研修で扱われていれば多くが防げます。次章の「5つの基本対応」を頭に入れておくことが、4つの罠の解毒剤になります。

相談員が取るべき5つの基本対応|QPR モデルに基づく実践手順

📚 QPRゲートキーパーモデル(Quinnett 1995)

米国の心理学者 Paul Quinnett が1995年に開発した QPR は、Question(直接尋ねる)/Persuade(支援を受けることを勧める)/Refer(専門機関に橋渡しする)の3ステップからなる世界で最も普及している自殺予防ゲートキーパー研修プログラムです。日本でも厚生労働省の自殺対策ゲートキーパー養成研修の基盤として参照されており、心理学・医学の学術的バックグラウンドを持たないボランティアでも実践できる形に体系化されています。
本章では QPR の3ステップを土台にしつつ、受容と傾聴・環境の安全化を加えた「5つの基本対応」として整理します。

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    ① 直接的に尋ねる(Question)——「死にたいと思っているのですか?」

    「死にたい」と言葉に出すと希死念慮を強めるのでは、という心配は科学的根拠がないことが繰り返し検証されています(Dazzi et al., 2014 など)。むしろ直接尋ねることで本人の孤独感が緩和され、対話の扉が開くことが報告されています。婉曲表現で「最近どうですか?」と聞くより、「今、死にたいと思っているのですか?」と静かに、まっすぐに尋ねる方が、相手を尊重した姿勢になります

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    ② 受容と傾聴——評価せず、解決せず、ただ聴く

    尋ねた後は、説得・否定・励まし・解決提案をいったん脇に置き、相手の語りに耳を傾けます。「そう感じるほど、辛い日々だったのですね」「話してくれてありがとうございます」など、感情と存在を受け止める応答を中心に。沈黙も無理に埋めない。聴くことは消極的に見えて、最も能動的な援助行為です

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    ③ 緊急性アセスメント——念慮・計画・手段・時期の確認

    受容と傾聴の流れの中で、次の4点をやわらかく確認します。(a) 念慮の頻度と強度「最近、その気持ちはどれくらいの頻度で?」(b) 計画の有無「具体的に方法を考えたことはありますか?」(c) 手段への access「その手段は今手元にありますか?」(d) 時期「いつ実行しようと考えていますか?」——いずれも「手段の有無を確認する」必要があるが、相談員自身が具体的な方法・薬剤・場所をこちらから挙げないのが大原則。本人が話した内容を傾聴する形を保つ

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    ④ 環境の安全化を提案(Means Restriction Counseling)

    Mann et al. (2005) のレビューで強いエビデンスが示されている「手段への access の低減」は、自殺予防で最も効果的な介入の一つです。具体的には、「危険につながりうるものを、今夜だけでも誰か信頼できる人に預けませんか」「ご家族・友人と一緒に保管する形にしませんか」と提案します。本人の同意を得ながら一緒に環境を整える対話そのものが、命を守る最前線になります。具体的な品目を相談員から例示しないこと

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    ⑤ 専門機関への橋渡し(Refer)——受診同行・救急要請

    傾聴ボランティア・ピアサポーターは専門治療の代替ではありません。受診歴のある精神科・心療内科への連絡、地域の精神科救急情報センター、緊急時は119救急。「一緒に電話してみませんか」「予約の付き添いをしてもいいですか」橋渡しに伴走する。「行ってください」と命令するのではなく、つながる過程を共に歩くのがプロフェッショナルな援助。後述の連絡先一覧も活用

この5ステップは、厳密な順序ではなく「往き来する円環」として実践されます。傾聴の途中で緊急性が高まれば直接尋ねに戻り、橋渡しの途中で本人がためらえば受容に戻る——という柔軟さが現場では必要です。

出典:Paul Quinnett「Suicide: The Forever Decision」(1995)、QPR Institute/Dazzi T. et al.「Does asking about suicide and related behaviours induce suicidal ideation? What is the evidence?」(Psychological Medicine, 2014)/Mann JJ. et al.「Suicide Prevention Strategies: A Systematic Review」(JAMA, 2005)

背景理論|現代自殺学の4つの学術モデル

現場での実践を支えるのは、自殺学(suicidology)の学術モデルです。代表的な4つを押さえておくと、目の前の相手の状態を多面的に理解できます。

① Joiner(2005)対人関係理論(Interpersonal Theory of Suicide)

Thomas Joiner は『Why People Die by Suicide』(2005)で、自殺企図に至る心理状態を3要素モデルで説明しました。「所属感の欠如(thwarted belongingness)」「負担感(perceived burdensomeness)」「獲得された自殺の能力(acquired capability)」の3つが同時に揃ったとき、リスクが最も高まるとされます。「自分は誰にも必要とされていない」「自分の存在は周りの重荷だ」という認知が中核にあるため、相談員が「あなたは大切な存在だ」というメッセージを伝えること自体が予防に資します。

② Klonsky & May(2015)三段階理論(Three-Step Theory, 3ST)

Klonsky と May は、希死念慮の発生・強化・行動化を3段階で説明する Three-Step Theory を提唱しました。第1段階:苦痛と絶望が念慮を生む。第2段階:つながりがあれば強化を防ぐ。第3段階:実行能力(手段・準備)が伴って初めて企図に至る。示唆は明快で、「つながりの維持」「実行能力の低減(手段への access 低減)」が予防の二本柱。前述の「環境の安全化」の理論的根拠でもあります。

③ Stanley & Brown(2012)Safety Planning Intervention(SPI)

Stanley と Brown が開発した Safety Planning Intervention(安全計画介入、2012)は、危機時に本人と援助者が一緒に作る個別の安全計画書です。米国VAでも標準介入として採用され、メタ分析で再企図リスク減少が示されています。構成要素は「警告サイン/内的対処戦略/気が紛れる活動・人/助けを求められる人/専門機関/環境の安全化」の6段。1枚の紙にまとめておくと、「危機の夜」に本人が見返せる命綱になります。

④ Quinnett(1995)QPR Gatekeeper Training

前章で詳述した QPR は、自殺学の臨床知見を非専門家でも実践できる3ステップに圧縮した教育プログラムです。日本でも厚生労働省のゲートキーパー研修の中核として位置づけられており、ボランティア相談員にとっての標準言語として知っておくべきものです。

出典:Thomas Joiner『Why People Die by Suicide』(Harvard University Press, 2005)/Klonsky ED, May AM「The Three-Step Theory (3ST): A new theory of suicide rooted in the ideation-to-action framework」(Int J Cogn Ther, 2015)/Stanley B, Brown GK「Safety Planning Intervention: A Brief Intervention to Mitigate Suicide Risk」(Cognitive and Behavioral Practice, 2012)/Paul Quinnett, QPR Institute(1995)

リスクアセスメントの5領域|何を、どう聞き取るか

緊急性を判断するための聞き取りは、5つの領域に分けて行うと整理しやすくなります。傾聴ボランティアが「診断」をする必要はありませんが、「専門機関につなぐべきレベルか」を見立てるための共通フレームとして覚えておくと役立ちます。

領域 確認したい内容 聞き方の例
① 念慮の頻度・強度 「死にたい」という気持ちがどれくらい頻繁に、どれくらい強く現れるか 「最近、その気持ちはどれくらいの頻度で出てきますか?」「強さは10段階でどのくらい?」
② 計画性の有無 具体的な方法・時期・場所まで考えているか(具体的なほど緊急性が高い) 「具体的に考えたことはありますか?」(本人が話した範囲を傾聴するに留め、こちらから手段を例示しない)
③ 過去の自殺企図歴 過去に企図したことがあるか(あれば最大のリスク因子の一つ) 「これまでに同じような気持ちで、何か行動を起こしたことがありましたか?」
④ 保護因子 家族・友人・宗教・将来の予定・ペット・治療中など、生きる支えになるもの 「今、あなたを支えてくれていると感じる人やものはありますか?」「明日、明後日に楽しみにしていることは?」
⑤ 急性ストレッサー 最近の喪失体験(離別・死別・失業・病気・経済的危機・SNSでの炎上等) 「最近、大きな変化や辛い出来事はありましたか?」

特に重要なのは「保護因子の確認」です。リスクばかりに目を向けると視野が狭くなります。「明日の楽しみ」「気にかけてくれる人」「やり残したこと」を一緒に言語化することが、希死念慮を相対化する作用を持ちます。

⚠️ 緊急対応を即座に検討すべきサイン

次のサインが揃ったとき、傾聴の枠を超えて専門機関・救急への即時連携を本人と話し合いながら検討します。
・能動的希死念慮があり、具体的な計画・時期が定まっている
手段が手の届く範囲にある
過去の企図歴がある
・「もう何も感じない」「楽になった」など急激な感情の平静化(直前の心理として知られる)
・身辺整理・別れの挨拶・大切なものの譲渡など準備行動がある
これらが揃ったケースを一人で抱えてはいけません。スーパーバイザー、組織の管理者、精神科救急情報センター、119へ、本人と一緒に動いてください。

傾聴ボランティア・ピアサポーター固有の留意点|役割の限界を知る

カウンセラー(公認心理師・臨床心理士)と異なり、傾聴ボランティアやピアサポーターには「治療」の責任も権限もありません。だからこそ、自分の役割の限界を明確に持つことが、本人にとっても自分にとっても安全な援助になります。

① 自分の役割の限界を知る

傾聴ボランティアの役割は、「聴くこと」「専門機関までの橋渡し」「孤独の緩和」です。診断・治療的介入・服薬指導は役割外。「自分が何とかしなければ」と背負った瞬間、援助関係は壊れ始めます。「私はここまで、その先は専門家」の線が結果として相手を守ります。

② 専門治療の代替にならない

希死念慮の背景には、うつ病・双極性障害・依存症・PTSDなど、専門治療を必要とする状態が存在することが多いと言われます。傾聴ボランティアの対話は専門治療の「補完」「橋渡し」「孤独の緩和」であり、代替にはなりません。本人が受診をためらう時も、無理に勧めず、「いつでもつなぐ準備がある」姿勢を保ちます。

③ スーパーバイズの活用

活動を行う場合、スーパーバイザー(SV)や活動団体の管理者にケースを共有できる体制を必ず確保してください。守秘義務は重要ですが、本人保護のための組織内共有は守秘義務の例外として認められています。一人で抱えることは、本人にとっても相談員にとっても危険です。詳しくはスーパービジョン入門を参照。

④ 二次トラウマ・代理受傷(vicarious trauma)への注意

Pearlman & Saakvitne(1995)は『Trauma and the Therapist』の中で、トラウマを抱えた人と継続的に関わる援助者に起きる「代理受傷」「二次的外傷性ストレス」を概念化しました。希死念慮を打ち明けられた援助者は、悪夢・侵入思考・過覚醒・回避といったPTSD 様症状を呈することがあります。これは「弱さ」ではなく、深く真剣に聴いた人にこそ起こる構造的な反応です。詳しくは共感疲労ガイドを参照。

⑤ 自分のセルフケアを優先する

援助者自身が燃え尽きれば、誰も救えません。十分な睡眠・運動・人とのつながり・必要なら自分自身のカウンセリングを活動の前提条件として整える。「自分を整えることは仕事の一部」と捉えてください。

出典:Pearlman LA, Saakvitne KW『Trauma and the Therapist: Countertransference and Vicarious Traumatization in Psychotherapy with Incest Survivors』(W.W. Norton, 1995)

連携先一覧|緊急時・専門機関への橋渡し窓口

「橋渡し」をスムーズに行うために、主要な連絡先を平時から手元にまとめておくことを強く推奨します。本人と一緒に電話を掛ける、予約に同行する、というプロセスそのものが援助の核心になります。

窓口 連絡先 用途
119救急 119 切迫した身体的危険がある場合の救急要請。救急隊が現場で精神科救急への搬送も判断
精神科救急情報センター 各都道府県・政令市に設置(電話番号は自治体公式サイトで確認) 夜間・休日の精神科救急情報の提供。「精神科救急情報センター ○○県」で検索
いのちの電話 ナビダイヤル 0570-783-556 / フリーダイヤル 0120-783-556(毎月10日のみ) 有人による24時間体制の電話相談(一部時間帯を除く)。日本いのちの電話連盟運営
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・通話無料) 暮らし全般の悩み相談。外国語・性的マイノリティ・DV等の専門ライン併設
#いのちSOS 0120-061-338(NPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク 運営) 自殺予防に特化した相談窓口。日中の対応時間帯あり、最新の対応時間は公式サイトで確認
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556 各都道府県の公的相談窓口に自動で接続。厚生労働省の事業
子供のSOS相談窓口 0120-0-78310(24時間) 文部科学省設置。子ども本人・保護者・教員からの相談に対応

上記に加え、本人がすでに受診中の医療機関がある場合は、そこへの連絡が最も適切なルートです。連絡先や対応時間は変更されることがあるため、活動前に各公式サイトで最新情報を確認してください。

打ち明けを受けた後の支援者セルフケア|援助者にも回復が必要

「死にたい」を受け止めた後、援助者自身が動揺するのは当然のことです。重要な打ち明けを誠実に受け取った証拠であり、感受性が機能していることの表れです。むしろ、何も感じない方が危険信号です。

① 自分自身が動揺する権利

打ち明けを受けた直後、援助者は呆然・涙・不眠・食欲不振・過覚醒などを経験することがあります。「プロなのに動揺してはいけない」と自分を責める必要はありません。動揺は深く受け取った証。感じることを許してください。

② スーパーバイザーへの相談

対応の直後、できるだけ早くスーパーバイザー、組織の管理者、または信頼できる先輩相談員に「打ち明けを受けたこと」を共有してください。「自分の対応は正しかったか」を一人で反芻することは、援助者の回復を妨げます。第三者の目で評価が客観化され、回復も早まります。

③ 仲間とのデブリーフィング

災害支援・救急医療の世界で使われてきた「デブリーフィング」——同じ立場の仲間と体験を語り合う場——は、援助者の二次トラウマ予防に有効です。守秘義務に配慮しつつ(個人特定情報は省く)、自分の中に起きた反応について安心して話せる場を持つことが大切です。

④ 「救えなかった」罪悪感への対処

援助者が最も苦しむのは、相手が亡くなった場合の「自分が救えなかった」という罪悪感です。しかし、自殺は多因子の結果であり、一人の援助者の行為に還元できるものではないことを、繰り返し自分に伝えてください。それでも罪悪感が長く続く場合は、自分自身がカウンセリングを受けることを推奨します。援助者が援助を受けることは、専門性の維持です。

⑤ 活動を一時休止する選択肢

動揺が強く続くとき、活動を一時的に休む選択肢を持ってください。「相談員が休む=裏切り」は誤った前提です。休むことは、長く援助を続けるための投資。SVと相談しながら、無理のないペースに戻しましょう。

体験談|「死にたい」を受け止めた相談員3人の声

💬 ① 直接尋ねたら、相手が泣き出して話してくれた(40代・電話相談ボランティア)

「いつも明るい声の女性が、ある日急に声色が変わり『最近、消えてしまいたくて』と言いました。研修で習った通り『今、死にたいと思っているのですか?』と静かに聞きました。長い沈黙のあと、彼女は『そう、そうなんです。誰にも言えなくて』と泣き出しました。否定せず、解決を急がず、ただ1時間聴き続けました。最後に『また話してもいいですか』と言ってもらえた時、聞いて良かったと心から思いました」(180字)

💬 ② 励ましてしまった反省と、その後の学び(30代・SNS相談員)

「初めて『死にたい』とDMを受けた時、頭が真っ白になり『大丈夫、家族もいるじゃない!』と返してしまいました。相手はそれきり既読のまま返信が途絶え、3週間悩み続けました。SVで『励ましは相手の感情の蓋を閉じてしまう』と指摘され、後日別の方から同じ言葉を受けた時は『話してくれてありがとうございます。お気持ちを、もう少し聞かせてもらえますか』と返せました。最初の失敗が、私を相談員にしてくれました」(170字)

💬 ③ 一人で抱え込み、自分が壊れかけた(50代・対面傾聴ボランティア)

「『絶対に誰にも言わないで』と頼まれ、3ヶ月一人で抱えました。眠れず、家族との会話も上の空。ある日、夫に『最近様子が変だ』と心配され、活動団体のSVに泣きながら打ち明けました。SVは『一人で抱えることは、その方を守ることにもならない』と言い、専門機関への橋渡し体制を一緒に作ってくれました。守秘義務には例外がある、と頭で分かっていても、実際に共有するには勇気がいる——それを学んだ経験です」(170字)

ありがちな失敗5選|善意が逆効果になる対応

  • ① 「そんなこと言わないで」と否定する——相手の感情を「言ってはいけないもの」と扱ってしまい、次から相談されなくなる。最も多い失敗
  • ② 「もっと辛い人もいる」と比較する——比較は相手の痛みを軽視するメッセージになる。相手の世界では今が最大の痛み、を前提にする
  • ③ 解決策を急いで提示する——「カウンセリングに行きなさい」「家族に話しなさい」と矢継ぎ早に。まず聴くことが優先で、解決は受容の後に
  • ④ 本人の同意なく通報する——切迫した緊急時を除き、原則として本人と話し合いながら進める。一方的な通報は信頼関係を破壊し、次の援助も拒否されやすくなる
  • ⑤ 「絶対に死なないと約束して」と誓約させる——契約書のような約束は本人にとって新たな重荷になる。代わりに「次に強い気持ちが出てきた時、もう一度連絡してくれますか?」というつながりの維持を約束してもらう

よくある質問|相談員の自殺リスク対応Q&A 6問

Q1. 「死にたい」と直接尋ねたら、かえって希死念慮を強めてしまうのでは?

この心配は科学的根拠がないことが繰り返し検証されています(Dazzi et al., 2014ほか)。むしろ、直接尋ねることで「この人になら話せる」という感覚が生まれ、孤独感が緩和されることが報告されています。「今、死にたいと思っているのですか?」と静かに、まっすぐに尋ねることは、相手を尊重する姿勢として受け止められます。婉曲表現でぼかすほうが、かえって相手の孤立を深めることがあります。

Q2. 「絶対に誰にも言わないで」と言われたら、守秘義務として黙っているべきですか?

守秘義務には「自傷他害の恐れがある場合」という例外があり、これは公認心理師法・各種倫理綱領で明確に位置づけられています。本人保護のための組織内共有・スーパーバイザーへの相談・専門機関への橋渡しは、守秘義務違反にはなりません。「あなたを守るために、必要な範囲で組織内の信頼できる人と共有させてください」と本人にも事前に説明できると理想的です。一人で抱えることは、本人にとっても相談員にとっても危険です。

Q3. 傾聴ボランティアでも自殺リスク対応をしていいのですか?役割を超えていませんか?

傾聴ボランティアの役割は「聴くこと」と「専門機関への橋渡し」であり、これは自殺予防の中核的役割です。診断・治療は専門家の仕事ですが、初期の打ち明けを受け止め、つながりを保ち、専門機関までの橋を架けるのはボランティア・ピアサポーターの大切な役割です。役割を超えるのは「自分一人で治そうとした時」であり、適切な橋渡しまで伴走することは役割の中です。

Q4. 相手がカウンセリングや病院に行きたがらない場合、どうすれば?

無理に勧めず、しかし「いつでもつなぐ準備がある」姿勢を保ち続けます。本人が抵抗を感じる理由を傾聴し、過去の医療経験で傷ついたことがあれば共感を伝えます。代替案としていのちの電話・よりそいホットライン・自治体の精神保健福祉センターなど匿名で利用できる窓口を紹介する方法もあります。最初の一歩は小さくていい——「電話だけでも、一緒にかけてみませんか」と橋渡しに伴走するのが効果的です。

Q5. 対応後、相手から連絡が途絶えました。どうしていますか?

最も辛い場面の一つです。まずはスーパーバイザーに共有してください。相談員が一人で結果を抱えるべきではありません。次に、組織のルールに従って、安否確認の連絡・関係機関への情報共有を検討します。連絡が途絶えた理由は様々で、必ずしも最悪の事態とは限りません。「あなたが完璧でなかったとしても、あなたが逃げずに聴いたという事実は消えない」——この言葉を自分に向けてください。罪悪感が強く続く場合は、自分自身がカウンセリングを受けることを推奨します。

Q6. 自分自身に希死念慮があります。それでも相談員を続けられますか?

まず、ご自身のケアが最優先です。相談員としての自分より、一人の人としての自分の安全を先に確保してください。希死念慮を抱えながら相談員を続けることは、相手にとっても自分にとってもリスクが高くなる場面があります。スーパーバイザーや組織の管理者に正直に共有し、専門治療を受けながら活動を一時休止することも前向きな選択肢です。当事者経験を持つピアサポーターも、自身の回復・安定を土台にした上で活動するのが原則。ピアサポート専門員ガイドリカバリーガイドも参照ください。

あわせて読みたい|自殺リスク対応を支える周辺知識

参照元:World Health Organization「Preventing Suicide: A Global Imperative」(WHO, 2014)/World Health Organization「Preventing Suicide: A Resource for Media Professionals – Update 2017」/Paul Quinnett「Suicide: The Forever Decision」(1995)、QPR Institute Gatekeeper Training/Thomas Joiner『Why People Die by Suicide』(Harvard University Press, 2005)/Klonsky ED, May AM「The Three-Step Theory (3ST): A new theory of suicide rooted in the ideation-to-action framework」(International Journal of Cognitive Therapy, 8(2), 2015)/Stanley B, Brown GK「Safety Planning Intervention: A Brief Intervention to Mitigate Suicide Risk」(Cognitive and Behavioral Practice, 19(2), 2012)/Mann JJ. et al.「Suicide Prevention Strategies: A Systematic Review」(JAMA, 294(16), 2005)/Dazzi T. et al.「Does asking about suicide and related behaviours induce suicidal ideation? What is the evidence?」(Psychological Medicine, 44(16), 2014)/Pearlman LA, Saakvitne KW『Trauma and the Therapist: Countertransference and Vicarious Traumatization in Psychotherapy with Incest Survivors』(W.W. Norton, 1995)/厚生労働省 自殺対策 ゲートキーパー養成研修資料/公益財団法人 日本いのちの電話連盟/NPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク(いずれも2026年5月時点。連絡先や対応時間は変更される場合があるため、各公式サイトで最新情報をご確認ください)

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