40代 女性

思い出の立ち食い蕎麦

visibility20 chat0 personあすか edit2026.01.20

大学生でお金が無くて17時〜3時まで居酒屋で4年間バイトしていた。家庭教師は、車がないとできないと断られた。アパートには一緒猫が住んでいた。お利口で、人の言葉を理解していた。『今日もバイトだから遅くなるからね』話しかけながら、お得用カリカリと水を入れて、窓を少し開けておいた。貧乏で取られるものが何も無いので、大丈夫。
駅に立ち食いそばがあって、当時250円だった。サラリーマンの人が常連でならんでいて、輪に入れなかったが、お腹が空いて思い切ってかけ蕎麦を頼んだ。ネギとカマボコの薄いのが2枚浮かんでいた。天かすと七味はセルフだった。気を使ってなるべく早く綺麗に食べた。毎日通い続けて半年、カウンターの中のおばちゃんが話しかけてくれた。『あんた、誰か駅でお迎えね。』『いえ、今日もバイトです』『え、あんた小学生やろ』『〇〇大学の学生です』『えー!小学生と思っとった!痩せすぎやろ』『あ、よく言われます』『かき揚げがキャンセルで余ったけん、食べんしゃい』『ありがとうございます。お代一緒にお願いします』『おごりさ!おばちゃんの』
その日から、駅の中にある立ち食い蕎麦は私の居場所になった。カウンターのサラリーマンのおっちゃんから、『その若さでその常連感だせんばい。』とかき揚げとカップ酒を飲みながら言われた。足元には、ガリガリに痩せた母猫がお腹に命を宿していた。駅員さんが、今年の冬は冷えるからな、行くぞ、と暖房が効いた仮眠室の廊下に、まだ痩せた子猫にしか見えない母猫を連れていった。寒いと思ったら雪が降っていた。『おばちゃん、あたし今年で4年です。お世話になりました。最後まで食べに来ますね』『もう四年かね!早いね、寂しかね』
今では、もう、あの駅も、蕎麦屋もなく、駅ビルが建っている。
おばちゃんの蕎麦、また皆で食べたいな。

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