遺族のための自助グループ・グリーフケア完全ガイド|自死遺族・犯罪被害者・流産死産・小児死別の支え合いの場

遺族のための自助グループ・グリーフケア完全ガイド|自死遺族・犯罪被害者・流産死産・小児死別の支え合いの場

「もう半年経つのに、まだ立ち直れない自分がおかしいのでしょうか」
「友人や親族には『そろそろ前を向こう』と言われるけれど、心は何ひとつ追いついていない」
「同じように大切な人を亡くした人と、ただ静かに同じ空気を吸いたい」

死別の悲しみは、時間が経てば自然に薄れていくものではありません。むしろ、半年・1年・3年と時間が経つにつれて、周囲の言葉が減り、自分だけが取り残されたような孤独に襲われることもあります。「もう乗り越えるべき」「いつまでも引きずらないで」という励ましは、ときに死別の悲しみへの最大の暴力になります。

そんなとき、当事者同士が互いの体験を持ち寄り、ただ一緒にその時間を過ごす場——それが「遺族のための自助グループ」「わかちあいの会」です。専門家がアドバイスする場ではなく、同じ痛みを知る者だけが共有できる時間と空気があります。

この記事では、ココトモがピアサポート・グリーフケアの現場で出会ってきた遺族の方々の声をもとに、グリーフ(悲嘆)の理論的背景から、自死遺族・犯罪被害者遺族・流産/死産経験者・小児死別の親・配偶者死別と、立場ごとのわかちあいの会まで、丁寧にまとめました。「乗り越える」のではなく「抱えながら生きていく」——その伴走者となる場の存在を、必要な方に届けたいと思います。

📌 この記事でわかること

  • グリーフ(悲嘆)の理論的背景——J. William Wordenの4つの課題(Tasks of Mourning)と、通常の悲嘆/複雑性悲嘆の違い
  • ICD-11で「遷延性悲嘆症」として収載された、長引く悲嘆への医学的視点
  • 遺族向け自助グループ6タイプ——自死遺族/犯罪被害者遺族/流産・死産/小児死別/配偶者死別/同病遺族
  • 全国で活動する主な団体5つと、公式リンク・電話相談窓口
  • 2007年自殺対策基本法、2016年改正で「自死遺族等支援」明記に至った社会的経緯と現状
  • 参加5ステップ(情報収集→見学→初参加→継続→自分の体験を語る)と、当事者だけの「わかち合い」が必要な理由
  • 周囲の人がしてはいけない言葉・してほしい関わり、ありがちな誤解5選、よくある質問10問まで

グリーフ(悲嘆)とは|大切な人を亡くした後に起きる心と体の反応

「グリーフ(grief)」は、英語で「深い悲しみ・嘆き」を指す言葉です。心理学・看護学・社会福祉の領域では、大切な存在を失ったあとに起きる、心と体と人間関係のすべての反応を含めて「グリーフ(悲嘆)」と呼びます。涙が止まらない、眠れない、食欲がない、誰にも会いたくない、逆に普通に生活している自分が許せない——どれもグリーフの自然な現れです。

J. William Wordenの「悲嘆の4つの課題」

米国の心理学者J. William Wordenは、著書『Grief Counseling and Grief Therapy(悲嘆カウンセリングと悲嘆療法)』のなかで、死別を経験した人が時間をかけて取り組んでいく「4つの課題(Tasks of Mourning)」を提示しました。1980年代に提唱されて以来、世界中のグリーフケア実践の土台になっています。

  • 課題1:喪失の事実を受け入れる——「亡くなった」という現実を、頭ではなく心が少しずつ受け止めていく段階。お通夜・葬儀・四十九日・一周忌などの儀礼は、この課題を支える文化的装置でもあります。
  • 課題2:悲嘆の苦痛を体験する(くぐり抜ける)——悲しみ・怒り・罪悪感・後悔・不安など、湧き上がる感情をふたで押さえつけず、ひとつずつ感じていく段階。痛みを避けるほど、長引きやすいことが知られています。
  • 課題3:故人のいない環境に適応する——日常生活の役割の調整(家事・家計・育児)、自分という存在のあり方の見直し、信念・価値観の問い直しの3つの適応が含まれます。
  • 課題4:故人との新しいつながり方を見つけ、人生を歩み続ける——「忘れる」ではなく、故人を心の中に位置づけ直しながら自分の人生を進めること。Wordenはこの課題を「Emotionally relocate the deceased and move on with life」と表現しています。

重要なのは、これらが「ステージ」ではなく「課題」として示されている点です。順序通りに進むものではなく、行きつ戻りつしながら、人によって何年もかけて取り組むものとされています。

出典:J. William Worden『Grief Counseling and Grief Therapy: A Handbook for the Mental Health Practitioner』Springer Publishing

複雑性悲嘆(Complicated Grief)と通常の悲嘆の違い

⚠️ 「悲しみが長引く」のは、本人の弱さではない

死別後の悲しみが6か月以上にわたり強く続き、日常生活や社会生活に支障が出る状態は、医学的に「複雑性悲嘆(Complicated Grief)」または「遷延性悲嘆症(Prolonged Grief Disorder)」と呼ばれます。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類ICD-11では、2018年公表版から正式な診断名として収載されました。米国精神医学会のDSM-5-TRにも2022年の改訂で加わっています。

通常の悲嘆と複雑性悲嘆の違い

通常の悲嘆と複雑性悲嘆は、悲しみそのものに優劣があるわけではなく、時間の経過とともに少しずつ生活が戻ってくるかという点が大きな違いとして示されています。

  • 通常の悲嘆——強い悲しみ・涙・睡眠や食欲の乱れがあっても、数か月から1年程度の幅で、徐々に生活に戻る時間が増えていく。一周忌・三回忌などの節目を経て、故人を思い出しても日常を続けられる状態へと移行する
  • 複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)——死別から6か月(人や基準により12か月)以上経過しても、強い思慕・故人への没頭・受け入れ困難・無感覚・自分の人生が無意味に感じる感覚などが続き、仕事や対人関係に支障が出る状態

リスク要因——一人で抱えないでほしいケース

  • 突然死・予期せぬ死(事故・自死・犯罪被害・災害)
  • 子どもの死、配偶者の死、若年での死別
  • 死の状況が暴力的・トラウマ的だった場合
  • 故人との関係が非常に密だった、または葛藤を抱えていた場合
  • 遺族自身に元々うつ病・不安症などの既往がある場合
  • 社会的支援が乏しい状況(独居・職場の理解なし・周囲が「もう乗り越えるべき」と求めるなど)

複雑性悲嘆は本人の心の強さ・弱さの問題ではなく、誰にでも起こり得る反応です。「自分が弱いから」と責めず、精神科・心療内科やグリーフケア専門カウンセラーへの相談を選択肢に入れてください。後述する自助グループは、専門治療の代わりではなく、専門治療とともに利用することで力を発揮します。

出典:WHO『ICD-11』Prolonged Grief Disorder(6B42)/米国精神医学会『DSM-5-TR』/J. W. Worden 同上

遺族向け自助グループの6タイプ|「同じ立場」の細やかさが鍵

遺族のためのわかちあいの会は、ひとくくりに「遺族の会」と呼ばれることもありますが、死別の状況・故人との関係によって、抱える痛みが大きく異なります。だからこそ、できるだけ近い立場の人が集まる会を選ぶことが、安心して語り、聴くための前提になります。代表的な6タイプを整理しました。

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① 自死遺族の会

家族・友人・恋人を自死(自殺)で亡くした遺族のためのわかちあいの会。死因の特殊さから周囲に話せず孤立しやすく、当事者だけの場が特に重要。2007年自殺対策基本法・2016年改正で支援が法的に位置づけられた

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② 犯罪被害者遺族の会

殺人・交通事故・性犯罪・テロなど、加害者の存在する死別を経験した遺族の会。司法手続き・報道・社会の偏見など二次被害も大きく、長期にわたる支え合いが必要。犯罪被害者等基本法に基づく支援との併用が一般的

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③ 流産・死産・新生児死を経験した方の会

妊娠中・出産時・新生児期の死別(周産期グリーフ)を経験した方のための会。「まだお腹の中だったのだから」「次があるよ」等の周囲の言葉に深く傷つくケースが多く、当事者同士の場が大切な命の存在を共有する場になる

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④ 小児を亡くした親の会

乳幼児・小学生・思春期のお子さんを病気・事故・自死等で亡くした親のための会。「親より先に子を見送る」体験は世代を超えて深い影響をもたらし、夫婦間・きょうだいへの影響も含めて長く支え合う場が必要

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⑤ 配偶者を亡くした方の会

夫・妻・パートナーを亡くした方のための会。生活の再構築(家計・家事・育児)と、心の喪失が同時並行で進む。若年の配偶者死別と高齢者の死別では課題が違うため、年代別の会も増えている

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⑥ 同病で亡くした遺族の会

がん・難病・認知症・依存症など、同じ病気で大切な人を亡くした遺族の会。在宅介護・終末期医療・看取りの体験を共有でき、闘病中の家族会から自然に遺族会へと続くことも多い

全国で活動する主な団体5つ|信頼できる入り口

「自助グループに行ってみたいが、どこに連絡すればいいか分からない」という方のために、全国規模で情報提供・電話相談・会の紹介を行っている代表的な団体を5つ紹介します。いずれも一次資料を確認したうえで掲載していますが、運営状況は変化しますので、初回連絡前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

このほか、各都道府県の精神保健福祉センター、地域のいのちの電話、各地のがんサロン、宗教者によるグリーフケア(上智大学グリーフケア研究所等)など、入り口は多様です。お住まいの自治体の「自殺対策」「遺族支援」窓口に問い合わせると、地域の会につないでもらえます。

自助グループへの参加5ステップ|焦らず、ご自身のペースで

自助グループに参加するまでには、心理的なハードルがあるのが当然です。「参加できる自分」を目指す必要はなく、自分のペースで一歩ずつ近づいていくのが基本です。多くの方が経るプロセスを5ステップに整理しました。

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    ① 情報収集——まずは「ある」ことを知る

    本記事のような情報源、自治体の遺族支援窓口、精神保健福祉センター、書籍を通じて、ご自分に合いそうな会の存在を知る段階。会のリーフレットやウェブサイトを読むだけで終わってもまったく構いません。「いつか行けるかも」という選択肢が心の隅にあるだけで支えになります。

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    ② 見学・電話相談——主催者と一度だけ話してみる

    いきなり会場に向かうのではなく、まずは主催者にメール・電話で連絡。会の雰囲気、参加者の構成、進行のルール、初参加者への配慮などを聞きます。「話さなくていい」「途中退席OK」「ニックネーム可」のルールが多く、聞くだけで安心材料が増えます。

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    ③ 初参加——「聴くだけ」で十分

    初回は無理に話す必要はありません。会の冒頭で「今日は聴かせてください」と伝えれば、それで成立します。同じ立場の方がぽつりぽつりと語る言葉を聴くだけで、「ここにいる自分は変じゃない」という感覚が訪れることが多いです。涙が出ても構いません。

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    ④ 継続参加——月1回のペースが基本

    多くのわかちあいの会は月1回・2時間前後のペース。毎回参加する必要はなく、行ける月だけで構いません。3〜4回続けて参加すると、顔なじみが少しずつでき、「次もまた会える」という見通しが心の支えになります。自助グループ完全ガイドと合わせて運営のしくみを押さえると安心です。

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    ⑤ 自分の体験を語る——準備ができたとき、少しずつ

    数か月〜数年経って、自然に「今日は少し話そうかな」という瞬間が訪れることがあります。話すことが回復ではなく、話せるようになったから回復したわけでもありません。語っても語らなくても、いることが意味を持つ場であることを、参加を重ねるなかで実感していきます。

当事者だけの「わかち合いの会」が必要な理由

「同じ気持ちの人と話したい」という願いは、専門家との対話では満たせない部分があります。当事者だけの場がなぜ必要なのか、3つの観点から整理します。

① 「説明しなくていい」場の安全感

周囲の友人や同僚に死別の話をするとき、多くの遺族が「相手に気を遣われる」「逆に励まされてしまう」「説明から始めなければならない」負担を感じます。同じ立場の人が集まる場では、「うちの子が亡くなったのは去年で…」と切り出すだけで、相手の表情や呼吸でわかってくれる。この「言わなくても通じる」感覚が、最大の安全装置になります。

② ピア(仲間)だからこそ届く言葉

Frank Riessmanが1965年に提示したヘルパー・セラピー原則は、「援助する人がもっとも援助される」という研究知見です。先輩遺族が自分の体験を語ることは、自分自身の回復にもつながり、新参の遺族には「数年後の自分の姿」を見せてくれます。詳しくはヘルパーセラピー効果ガイドを参照してください。

③ 専門治療の「補完」としての役割

自助グループは、医療やカウンセリングの代替ではなく補完です。精神科で薬物療法を受けながら月1回の会に通う、カウンセラーとの1対1の面接と並行して会で語る、という並行利用が世界的に推奨されています。詳しくはピアサポートガイドでしくみを整理しています。

自死遺族特有の課題と支援|2007年自殺対策基本法以降

📖 2007年自殺対策基本法、2016年改正で「自死遺族等支援」明記

日本では2006年に自殺対策基本法が成立し、2007年に施行されました。同法に基づいて2007年に閣議決定された「自殺総合対策大綱」のなかで、自死遺族支援が政策課題として明示され、2016年の同法改正では「自死遺族等の支援」が条文に明記されました。これにより、自治体・精神保健福祉センター・民間団体が連携して、わかちあいの会・電話相談・専門研修を運営する体制が整っていきました。

自死遺族が直面する固有の困難

  • 死因を周囲に話せない——「自殺」という言葉に対する社会的偏見が強く、職場・近所・親族にも事実を言えないまま長期間を過ごすケースが多い
  • 「なぜ気づけなかったのか」という強い自責——多くの自死遺族が、亡くなった方を救えなかった責任を自分に向け、長期間にわたり罪悪感に苛まれる
  • 葬儀・近所への対応——死亡診断書・現場対応・近隣説明など、死別直後から「人としての悲しみ」より「事務的処理」を優先せざるを得ない状況が続く
  • 子どもへの伝え方——故人がご家族・親であった場合、子どもにどう伝えるか、いつ伝えるかが長年の課題になる
  • 家族間で出てくる軋轢——「あの時こうしていれば」を巡って家族間で責任のなすり合いが起きるケースもあり、家族そのものが分断されることがある

こうした困難は、一般の死別支援の枠組みではカバーしきれません。だからこそ自死遺族のためだけのわかちあいの会が、全国の都道府県・政令市レベルで運営されています。お住まいの自治体の精神保健福祉センター、または全国自死遺族総合支援センターから地域の会に連絡できます。

出典:厚生労働省「自殺総合対策大綱」/厚生労働省「自殺対策基本法」/自殺総合対策推進センター(現:いのち支える自殺対策推進センター JSCP)公開情報

子どもを亡くした親への支援|多様な選択肢を尊重する

お子さんを亡くした親が経験する痛みは、世代を超えて深く、長く続きます。乳幼児・小学生・思春期と亡くなったお子さんの年代によって、また病気・事故・自死・流産死産など、状況によっても課題が異なります。

周産期グリーフ——「まだお腹の中だったから」は届かない

流産・死産・新生児死を経験したお母さん・お父さんは、ときに周囲から「まだお腹の中だったから」「次があるよ」といった言葉をかけられ、深く傷つきます。当事者にとっては名前を考え、未来を想像していた、かけがえのない一人です。「赤ちゃん天使」「お空の子」といった当事者文化のなかでの呼び方も含めて、ご家族が大切にしたい言葉を尊重することが基本です。
水子供養という宗教的選択肢を選ぶ方もいれば、宗教を介さない形での追悼を選ぶ方もいます。「正解はひとつではない」ことが、子どもを亡くした親への支援の出発点です。

きょうだいへのケアも視野に

亡くなったお子さんに兄弟姉妹がいた場合、その「生き残ったきょうだい」のケアも長期的な課題になります。親が悲しみのなかにいる時期、きょうだいは「自分の悲しみを言ってはいけない」「親を悲しませてはいけない」と感じやすく、自分の感情を抑え込みがちです。子ども向けのグリーフサポートプログラム(グリーフサポートしずおかなどが実施)の活用が選択肢になります。

夫婦・カップル間のグリーフのずれ

同じお子さんを亡くしても、母親と父親では悲しみの表れ方・タイミングが異なります。一方が涙する時期に、もう一方が淡々と仕事をしている——それは温度差ではなく「グリーフの形が違う」だけです。互いを責めず、必要であれば夫婦別々に違う会に通うことも、健康な選択肢のひとつです。

周囲ができること・してはいけないこと|支援者の心得

遺族の周囲にいるご家族・友人・職場の同僚・支援者が知っておきたい、関わりのコツです。善意であっても、結果的に深く傷つけてしまう言葉が存在します。

  • ○ 「話してくれてありがとう」「いつでも聞きます」——遺族が話そうと決めたタイミングを尊重し、聴く姿勢を伝える。アドバイスは求められない限り不要
  • ○ 「お名前を口にしていいですか」——故人の名前を周囲が口にしないことが、遺族をさらに孤独にすることがある。事前にご家族の意向を確認したうえで、自然に名前で呼ぶ
  • ○ 命日・誕生日・記念日を覚えておく——一周忌・三回忌だけでなく、誕生日や入学していた日など、節目に「思い出していますよ」とひと言伝える
  • ○ 具体的な手伝いを提案する——「何かあったら言って」より、「来週、買い物代行しますね」「金曜の夜ご飯届けます」のほうが受け取りやすい
  • × 「もう乗り越えよう」「前を向こう」「強くなって」——遺族にとって最も傷つく言葉のひとつ。「乗り越える」ものではなく「抱えながら生きる」ものという理解を
  • × 「もっとつらい人もいる」「あなただけじゃない」——比較は痛みを否定する言葉になる。その人の痛みを唯一のものとして受け止める
  • × 「天国で見守っているよ」「神様が決めたこと」——宗教観・死生観は人それぞれ。安易に断言する言葉は押しつけになる
  • × 死因について詮索する——自死・事故・犯罪被害など、遺族が自ら話さない限り、死因を尋ねるのは厳禁
  • × 「次がある」「また子どもを」「再婚を」——亡くなった存在を「代替可能」として扱う言葉は、深い傷を生む
  • × SNSで安易にシェアする——遺族の同意なく、故人の情報・葬儀の様子・追悼の言葉を投稿しない

ピアサポートと専門カウンセリングの並行利用

遺族のケアにおいて、自助グループ(ピアサポート)と専門カウンセリングはどちらかを選ぶものではなく、両輪として使い分けるものです。それぞれの特徴を整理します。

自助グループ(ピアサポート)の強み

  • 同じ立場の仲間に「説明しなくても通じる」安心感
  • 無料または低額で長期的に通える
  • 先輩遺族の姿が「数年後の自分」のモデルになる
  • 聴くだけの参加が可能で、自分のペースを保てる

専門カウンセリング・精神科治療の強み

  • 個別の1対1の対話で、自分のペースで深く扱える
  • 複雑性悲嘆・うつ病・PTSDなどへの専門的介入が可能
  • 必要に応じて薬物療法を併用できる
  • 守秘義務のもと、誰にも知られず受けられる

並行利用のすすめ

眠れない・食べられない・希死念慮がある状態のときは、まず医療機関での治療を最優先します。そのうえで、月1回のわかちあいの会に通うことで、医療では扱いきれない「孤独」「同じ立場の仲間がいない苦しみ」を補完できます。「医療か自助か」ではなく「医療も自助も」という選択肢を、ご自分のペースで組み合わせてください。

体験談|三人の遺族が出会った場所

💬 弟を自死で亡くして3年、初めて「自死」と口にできた夜(40代・女性)

「弟が亡くなった後、職場でも親戚にも『病気で』と説明してきました。3年経って自死遺族の会に初めて行った日、ニックネームで自己紹介して『弟を自死で…』と言葉に出した瞬間、誰も顔色を変えなかった。同じ場にいる人たちが静かにうなずいてくれた。あの夜、ずっと止まっていた呼吸を、3年ぶりに吸い直した気がしました」(120字)

💬 妊娠22週で死産。「赤ちゃん天使」の母として4年(30代・女性)

「死産した日、夫と二人で名前を考え、骨壷を抱いて帰宅しました。職場復帰後『流産でしょ』と言われるたびに胸が裂け、ポコズママの会の存在を知って初めてオンライン会に参加。みんなが赤ちゃんの名前で呼んでくれて、お空の子を抱きしめている母として4年経ちます。次の妊娠を選んでも、選ばなくても、あの子は私の子です」(120字)

💬 がんで妻を看取って2年、配偶者死別の会で見つけた笑い(60代・男性)

「2年連れ添ってがんを看取り、葬儀のあとに襲ってきた静けさは、想像を超えていました。地域包括支援センターで配偶者死別の会を紹介され、月1回お茶を飲む。10年先輩の方が『うちもね』と笑いながら話してくれて、初めて『笑っていいんだ』と感じました。妻を忘れるためではなく、妻と歩き続けるための時間です」(120字)

オンラインのわかち合い|コロナ禍以降の広がり

2020年の新型コロナをきっかけに、遺族のわかちあいの会もZoom等のオンライン形式が急速に広がりました。コロナ禍が落ち着いた後も対面とオンラインのハイブリッド開催を続ける団体が増え、地方在住・育児中・介護中・体調が不安定など、これまで参加しづらかった方の選択肢が広がっています。

オンラインのメリット

  • 移動の負担がなく、自宅から安心して参加できる
  • 地方在住でも全国の会に参加できる
  • 顔出し・カメラオフを選べる会も多く、心理的ハードルが下がる
  • 会場入り口で泣いてしまっても、ミュートで気持ちを整えられる

オンライン参加で気をつけたいこと

  • 家族と同居の場合、音漏れ・画面の覗き見に配慮(イヤホン推奨)
  • 録画・録音は原則禁止——参加者全員の安全感のため
  • 通信が途切れたときの再接続ルールを事前に確認
  • 顔出しの可否、ニックネーム使用の可否を事前に主催者に確認

ありがちな誤解5選|「もう乗り越えるべき」の暴力性

死別の悲しみへの社会の理解は、まだまだ十分とは言えません。遺族自身もまた、周囲の言葉を内面化してしまい、自分を責める原因になることがあります。代表的な誤解を5つ整理します。

  • 誤解1:時間が経てば悲しみは消える——消えるのではなく、形を変えながら共に生きていくものです。一周忌・三回忌で「もう大丈夫」になるのではなく、節目に痛みが再燃することもごく自然な反応です。
  • 誤解2:もう乗り越えるべき/前を向こう——遺族にとってもっとも傷つく言葉のひとつ。「乗り越える」のではなく「抱えながら生きていく」のが、現代のグリーフケアの中心的な考え方です。
  • 誤解3:泣いていてはいけない/笑ってはいけない——泣くことも笑うことも、両方が遺族の自然な姿です。葬儀後に職場で笑った自分を責める必要も、何年経っても涙が出る自分を責める必要もありません。
  • 誤解4:自助グループに行くなんて重症だ——わかちあいの会は「重症」の人だけが行く場ではなく、当事者が当事者として安心していられる場です。話さなくても、聴くだけでも、月1回顔を出すだけでも、立派な参加です。
  • 誤解5:話さない=立ち直っていない——話す人だけが回復しているわけではありません。沈黙のなかで、書くことで、絵を描くことで、走ることで、それぞれの形で悲しみと共に歩んでいる人がいます。

よくある質問|遺族のわかちあいQ&A 10問

Q1. 亡くなってから何か月経てば参加していいですか?

参加の「正しい時期」はありません。亡くなった翌週に駆け込む方も、10年経って初めて来る方もいます。ご自分が「行ってみようかな」と思えた今が、その人にとってのタイミングです。ただし、葬儀直後で心身ともに極度に消耗している時期は、自助グループより先に医療・睡眠・栄養を優先するのがすすめられます。

Q2. 話せる自信がありません。聴くだけで参加していいですか?

ほとんどのわかちあいの会で「パス(話さない)」「途中退席」「ニックネーム参加」が認められています。冒頭で「今日は聴かせてください」と伝えれば、誰も無理に話を引き出しません。聴くだけの参加を1年以上続けてから、初めて自分の体験を語る方もたくさんいます。

Q3. 自死で亡くしたとは言いたくない。一般の遺族会では難しいでしょうか?

一般の遺族会と自死遺族の会は分けて運営されていることが多く、それは自死遺族が安心して話せる場を守るためです。「自死遺族の会」と名前のついた会に行けば、参加者全員が同じ死因を経験していることが前提なので、改めて死因を説明する必要はありません。むしろそれが、自死遺族の会の最大の意味です。

Q4. 男性ですが、参加者は女性ばかりでは?

確かに女性の参加が多い会もありますが、近年は男性参加者の比率が増えており、男性のみの会・配偶者死別男性の会・パパの会なども各地で立ち上がっています。男性が「悲しみを口にしてはいけない」と感じやすい社会風潮を超えるためにも、こうした場の意義は大きく、主催者にメールで「男性は参加していますか」と尋ねるのが確実です。

Q5. 参加費はかかりますか?

多くのわかちあいの会は無料または100〜500円程度のお茶代での運営です。年会費を取る会員制の遺族会もありますが、入会前にトライアル参加できるところが多数派です。営利的な高額料金を取る団体は遺族支援の本来の趣旨と異なるため、初回参加前に必ず費用を確認してください。

Q6. オンラインと対面、どちらが良いですか?

どちらにも良さがあり、体調・住んでいる場所・家庭の事情で選んで構いません。最初はオンライン(顔出しなし)で慣れて、後から対面に切り替える方も増えています。逆に、対面で空気を共有することがどうしても必要で、近県まで通う方もいます。両方を併用する方も少なくありません。

Q7. 自分だけ「立ち直っていない」と感じて参加が怖いです

わかちあいの会は「立ち直った人がそうでない人を励ます場」ではなく、それぞれが自分のペースで歩む人たちが同じ時間を過ごす場です。10年経っても涙する方も、半年で穏やかに語る方もいます。比較ではなく、「ここではどんな自分でいてもいい」が基本ルールです。

Q8. 精神科に通院中ですが、自助グループにも行っていいですか?

併用は推奨されています。むしろ、複雑性悲嘆や死別後うつのリスクがある方は、医療と自助グループの両輪で支えられることが望ましいとされます。参加にあたっては主治医に一言相談し、体調が極度に悪い時期は無理せず休む、という付き合い方が現実的です。

Q9. 子どもを連れて参加できますか?

会によって対応が異なります。託児付きの会、子連れOKの会、大人だけの会と分かれています。お子さん自身がご遺族である場合は、子ども向けグリーフサポートプログラム(グリーフサポートしずおかなどが実施)の選択肢もあります。事前に主催者へ確認してください。

Q10. 友人として遺族に何ができますか?

「乗り越えよう」「前向きに」と言わないこと、故人の名前を一緒に呼ぶこと、命日・誕生日を覚えていること、具体的な手伝いを提案すること。アドバイスではなく、ただそばにいる。これらが、長期的に遺族を支える関わり方です。本人が自助グループを必要としているサインがあれば、そっと情報を渡してください。

あわせて読みたい|次の一歩のヒント

参照元:厚生労働省「自殺対策基本法」「自殺総合対策大綱」/厚生労働省 自殺対策推進室/いのち支える自殺対策推進センター(JSCP)/全国自死遺族総合支援センター(izoku-center.or.jp)/自死遺族ケア団体全国ネット(jdsc.or.jp)/グリーフサポートしずおか(grief-support.org)/公益財団法人日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団(hospat.org)/ポコズママの会(pocosmama.jp)/J. William Worden『Grief Counseling and Grief Therapy: A Handbook for the Mental Health Practitioner』Springer Publishing/WHO『ICD-11』Prolonged Grief Disorder(6B42)/米国精神医学会『DSM-5-TR』/Frank Riessman “The ‘Helper’ Therapy Principle” Social Work, 1965/上智大学グリーフケア研究所 公開資料/各都道府県精神保健福祉センター 公開情報を参照(いずれも2026年5月時点。団体の運営状況・連絡先は変化することがあるため、初回連絡前に各公式サイトで最新情報を確認してください)

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