公認心理師完全ガイド|受験資格・試験内容・合格率・年収・5つの取得ルートを徹底解説

公認心理師完全ガイド|受験資格・試験内容・合格率・年収・5つの取得ルートを徹底解説

「臨床心理士と公認心理師、どちらを目指すべき?」
「社会人で心理職にキャリアチェンジしたい。大学院に行く必要は本当にある?」
「子どもが大学で心理学を学んでいる。国家資格にどうつなげるのか分からない」

日本の心理職の世界が、ここ10年で大きく変わりました。きっかけは2015年9月に成立し2017年9月に施行された「公認心理師法」。これにより、長らく民間資格中心だった心理職の領域に、日本で初めての心理職の国家資格「公認心理師」が誕生しました。

第1回試験は2018年9月に実施され、初年度の合格者だけで約2.8万人。以降、毎年9月の試験を通じて、医療・教育・福祉・産業・司法の現場へ公認心理師が広がっています。一方で、受験区分はA〜E+特例Gと複雑に分かれ、「大学院に行かなければいけないのか」「指定大学院との違いは何か」「臨床心理士と何が違うのか」など、これから目指す人を悩ませる論点がいくつもあります。

この記事では、ココトモが心理職の方々の声を集めて整理した一次情報をベースに、制度の成り立ち・受験資格の5ルート・試験内容・合格率の推移・年収・臨床心理士との違い・経過措置(Gルート)の終了・課題までを徹底的に解説します。これから目指す高校生・大学生・大学院生はもちろん、キャリアチェンジを考える社会人にも実用的な地図になるよう、最新の公的情報を踏まえて書きました。

📌 この記事でわかること

  • 2015年成立/2017年施行の公認心理師法の制定背景と、日本初の心理職国家資格としての意義
  • 公認心理師に法律上求められる5つの業(アセスメント/要支援者支援/関係者支援/心理教育/その他)
  • 受験資格の5ルート(A〜E区分)+すでに終了した経過措置(Gルート)の全体像
  • 第1回(2018年)から直近までの合格率の推移と、Gルート終了後の難化傾向
  • 主な就職先5領域(医療・教育・産業・福祉・司法)の年収レンジと働き方の違い
  • 臨床心理士との5項目比較、ダブル取得が依然として現場の標準である理由
  • 大学院ルートのリアルな道のり、社会人キャリアチェンジ/看護師から/心理学非専攻からの体験談3パターン
  • ありがちな誤解5選、よくある質問10問まで網羅

公認心理師とは|2017年に誕生した日本初の心理職国家資格

公認心理師とは、公認心理師法(平成27年法律第68号)に基づき、保健医療・福祉・教育・司法・産業など幅広い分野で心理的な支援を行う国家資格です。所管は厚生労働省と文部科学省の共管で、試験実施機関は一般財団法人 日本心理研修センターが指定登録機関として運営しています。

2015年成立、2017年施行——心理職30年越しの悲願

心理職を国家資格化する動きは、1980年代から繰り返し議論されてきました。臨床心理士(民間資格)を中心に複数の心理職資格が乱立し、医療・教育・司法の現場での身分・報酬・権限が曖昧だった——この状態を解消するため、2015年9月9日に公認心理師法が成立、同月16日に公布され、約2年の準備期間を経て2017年9月15日に施行されました。
「公認心理師」という名称が選ばれた背景には、「心理士」と呼ぶと民間資格との区別がつきにくいという議論があったとされます。「公認」を冠することで国家資格としての位置づけを明確にした、というのが立法時の整理です。

第1回試験は2018年9月、現在は年1回9月実施

第1回試験は2018年9月9日に実施され、約3.6万人が受験し約2.8万人が合格しました。以降は年1回・9月実施を基本に、毎年安定して数千人〜1万人規模の合格者が誕生しています。試験会場は全国主要都市の大学・大型ホール等で、受験料は2026年現在で28,700円。試験は1日完結のマークシート方式で、午前・午後の2部構成です。

名称独占資格——業務独占ではない

公認心理師は名称独占資格であり、業務独占資格ではありません。つまり、「公認心理師」と名乗ることは資格を持つ人にしか認められませんが、心理相談・心理アセスメントといった行為そのものは資格がなくても実施できます。
医療現場では、診療報酬上の評価が公認心理師に紐づくケースが増加しており、たとえば「小児特定疾患カウンセリング料」「療養生活環境整備指導加算」など、公認心理師が配置されていることが算定要件になる項目があります。この点が、公認心理師の現場価値を実質的に下支えしています。

出典:公認心理師法(平成27年法律第68号)/厚生労働省・文部科学省「公認心理師制度」公式情報/一般財団法人 日本心理研修センター 公開資料

公認心理師の5つの業|法律で定められた仕事の範囲

公認心理師法第2条は、公認心理師の業務を5つに整理しています。心理職の仕事を法律の言葉で初めて整理した、制度の根幹部分です。

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① 心理的アセスメント

心理的な支援を要する人の心理状態を観察・分析する業務。心理検査・面接観察・行動観察を通じて、支援方針を立てるための見立てを行う。知能検査(WISC・WAIS)、人格検査(MMPI・ロールシャッハ)、発達検査(新版K式)など多様な道具を扱う

💬

② 要支援者への心理支援

心理的な支援を要する人に対して、相談・助言・指導その他の援助を行う。いわゆるカウンセリング・心理療法。認知行動療法・来談者中心療法・力動的心理療法・遊戯療法など、対象と目的に応じた技法を選ぶ

👨‍👩‍👧

③ 関係者への支援

要支援者の家族・関係者に対する相談・助言・指導その他の援助。家族支援・親ガイダンス・教員へのコンサルテーション・職場の上司への助言など、ご本人を取り巻く環境への働きかけを担う

📚

④ 心の健康に関する心理教育

心の健康に関する知識の普及を図るための教育・情報提供。学校での性教育・ストレスマネジメント授業、職場のメンタルヘルス研修、地域のゲートキーパー養成講座など、予防的アプローチの中心

⚖️

⑤ その他厚労省令で定める業

将来の現場ニーズに応じて省令で追加される業務。法律本体には書ききらない応用的・横断的な業務をカバーする受け皿条項。多職種連携・チーム医療の中での調整役などが含まれる

重要なのは、これらの業務を行うにあたって「主治の医師の指示を受ける」義務が公認心理師法第42条第2項に定められている点です。医療現場で主治医がいる場合、公認心理師は独立して治療判断するのではなく、医師の指示のもとで心理的支援を行う立場と整理されています。

受験資格の5ルート|A〜E区分の全体像

公認心理師試験を受けるには、厚生労働省・文部科学省が定める受験資格を満たす必要があります。区分はA〜Eの5ルートに整理されており、自分がどの区分に当てはまるかを最初に確認するのが第一歩です。

  1. A

    A区分|大学+大学院ルート(主流)

    公認心理師カリキュラム対応の4年制大学で指定科目25科目を履修し、卒業後、公認心理師カリキュラム対応の大学院で指定科目10科目を履修して修了する。実習450時間以上を含む。これから目指す人の最も一般的なルートで、新規受験者の大多数がここに該当する

  2. B

    B区分|大学+実務経験ルート

    公認心理師カリキュラム対応の4年制大学で指定科目を履修・卒業後、文部科学大臣・厚生労働大臣が指定する特定施設で2年以上の実務経験を経て受験。大学院に進学しないルートだが、対象となる「特定施設」は限定的で、現場の受け皿はA区分より少ない

  3. C

    C区分|A・B区分相当の外国大学等

    外国の大学・大学院でA区分またはB区分と同等以上の科目を履修したと文部科学大臣・厚生労働大臣が認定した人。海外で心理学を学んだ留学経験者・帰国子女向けの区分。書類審査によって個別に認定される

  4. D

    D区分|既存大学院修了者の特例(経過措置/受付終了)

    公認心理師法施行日(2017年9月15日)以前に大学院で心理科目を履修・修了した人を対象とした経過措置。施行後5年間の特例で、すでに受付は終了している。施行前に臨床心理士養成系大学院を出ていた人の多くがこのD1・D2区分で受験した

  5. E

    E区分|在学中に施行日を迎えた人の特例(受付終了)

    公認心理師法施行日時点で大学に在学していた人を対象とした経過措置。在学中の年度に応じて受験資格の扱いが異なる複雑な区分で、こちらもすでに受付は終了している

⚠️ Gルート(経過措置)は2022年9月実施の第5回試験で終了

実務経験5年以上の現任者を対象とした「Gルート(現任者特例措置)」は、施行から5年の経過措置として設けられました。2022年9月実施の第5回試験を最後に受付終了しており、現任者であっても今から新規に申し込むことはできません。
以降はA〜C区分が事実上の主要ルートとなり、心理職を目指す人にとっては大学+大学院の正規ルートを通るのが標準的な道筋になっています。

最も多いA区分の道のり|大学4年+大学院2年+実習450時間

これから公認心理師を目指す人の多くがたどるA区分のルート。総じて大学入学から国家試験合格まで最短6〜7年かかります。5つの主要ステップに分けて、リアルな道のりを解説します。

🏫

① 心理学系学部4年

公認心理師カリキュラム対応の4年制大学(心理学部・人間科学部・教育学部・福祉学部など)に入学。指定25科目(公認心理師の職責/心理学概論/臨床心理学概論/心理アセスメント/心理学的支援法/健康心理学/福祉心理学/教育心理学 等)を履修

🎓

② 公認心理師カリキュラム対応大学院

「指定大学院」とは別の概念。公認心理師カリキュラムに対応した大学院修士課程に進学し、指定10科目(保健医療分野/福祉分野/教育分野/司法・犯罪分野/産業・労働分野に関する理論と支援の展開 等)を履修

🏥

③ 実習450時間以上

大学院在学中に、5分野(保健医療/福祉/教育/司法・犯罪/産業・労働)にわたる実習を450時間以上履修。うち保健医療分野での実習が必須。病院・スクールカウンセリング・児童相談所・少年鑑別所・EAP企業など多領域を経験する

📝

④ 受験申込(毎年4〜5月)

大学院修了見込みの最終学年(修士2年)に、毎年4〜5月頃に日本心理研修センターへ受験申込を行う。受験料は28,700円。受験票は8月頃に届く。卒業証明書・成績証明書・実習証明書など書類は早めに準備するのが鉄則

⑤ 国家試験合格・登録

9月の試験に合格後、登録申請を行い「公認心理師登録簿」に登録されて初めて公認心理師を名乗れる。登録手数料は7,200円(収入印紙)+登録免許税15,000円(合計約22,200円)。登録証は約2〜3か月で交付

💡 「指定大学院」と「公認心理師カリキュラム対応大学院」の違い

混同しやすいのですが、「指定大学院」は臨床心理士(民間資格)の養成課程を指す用語で、「公認心理師カリキュラム対応大学院」は公認心理師(国家資格)の受験要件を満たす大学院です。
現実には両方のカリキュラムを兼ね備えた大学院が大多数を占めており、進学先選びの際は「臨床心理士第1種指定/第2種指定」と「公認心理師カリキュラム対応」の両表記を確認するのが安全です。

試験内容|出題範囲・問題数・形式

公認心理師試験は、午前午後の2部構成・マークシート方式の1日完結試験です。最新の試験要綱に基づいて、試験の骨格を整理します。

項目内容
試験実施機関一般財団法人 日本心理研修センター(厚生労働大臣・文部科学大臣指定登録機関)
実施頻度年1回・例年9月実施
試験会場全国主要都市(札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡・那覇など、年度により若干変動)
受験料28,700円(2026年現在)
問題形式多肢選択式(マークシート)。一般問題+事例問題
問題数計154問(一般問題116問+事例問題38問)。1日2部構成
試験時間午前120分+午後120分(休憩を挟み計4時間)
配点一般問題1問1点/事例問題1問3点、合計230点満点
合格基準総得点の約60%以上(例年138点前後)。出題難易度に応じて補正される場合あり
出題範囲公認心理師としての職責/心理学・臨床心理学/心理アセスメント/心理学的支援法/保健医療・福祉・教育・司法犯罪・産業労働の各分野に関する制度と心理支援/精神疾患・身体疾患の理解/心理に関する支援を要する者の家族への支援 など24分野

特徴的なのは、事例問題が38問あり、1問3点配点になっている点です。事例問題で得点を伸ばせるかが合否を分けると言われ、現場感覚を問う良問が多く、社会人・現任者にとっては有利な構成とも言われます。

合格率の推移|第1回(2018年)から直近までの実績

日本心理研修センターが公開している試験結果から、公認心理師試験の合格率の推移を整理しました。Gルート受験者の有無と、大学院ルートが主流になったあとで合格率の構造が変わっている点に注目してください。

実施年受験者数合格者数合格率備考
第1回2018年9月約35,000人約28,000人約79.6%初回。Gルート中心
第1回追加2018年12月約1,000人約700人約64.5%北海道地震延期分
第2回2019年8月約16,900人約7,800人約46.4%Gルート中心、難化
第3回2020年12月約13,600人約7,300人約53.4%コロナで延期実施
第4回2021年9月約21,000人約12,300人約58.6%Gルート最終年に向け増加
第5回2022年7月約33,300人約16,000人約48.3%Gルート最終回。受験者過去最多
第6回2023年5月約2,000人約1,500人約74.5%初の大学院ルート中心
第7回2024年3月約2,100人約1,500人約73.8%大学院ルート中心、安定

Gルート(現任者特例)が終わった第6回以降は、大学院修了見込み者を中心とした「正規ルート」での受験となり、受験者数は2,000人前後に縮小、合格率は70%台前半で安定しています。これは、計画的に大学+大学院で学んだ受験者層に絞られたことが背景にあります。
なお、第8回以降は年9月実施に戻る方向で、日本心理研修センターの最新公表をその都度確認するのが確実です。

出典:一般財団法人 日本心理研修センター「公認心理師試験 試験結果」公開資料(数字は同センターの公表値、回ごとに変動あり)

試験対策5ステップ|大学院修了見込み者向け

試験は出題範囲が広く、24分野・154問に対応する必要があります。大学院最終学年から試験本番までの約半年〜1年で押さえるべき対策を、5ステップに整理しました。

  1. 1

    ① 基本書で全範囲をなめる(受験半年前)

    日本心理研修センターの「ブループリント(出題基準)」を確認し、対応する基本書1冊(『公認心理師必携テキスト』など)で全範囲を一読。全体像をつかむことを最優先し、暗記は次のステップで行う。大学院の授業ノート・実習記録もこのタイミングで整理

  2. 2

    ② 過去問を最低3年分解く(受験4か月前)

    日本心理研修センター公式の過去問題を入手し、第3回〜直近までの3年分以上を時間を測って解く。解説書を活用し、間違えた問題の分野をエクセル等で記録。出題傾向の頻出分野(DSM-5・統計法規・脳神経・面接技法)を可視化する

  3. 3

    ③ 模擬試験で実戦感覚を養う(受験3か月前)

    資格スクール・大学院主催の模擬試験を1〜2回受験。4時間ぶっ通しのマークシート試験への耐性は、実戦でしか身につかない。模試の結果から弱点分野を特定し、残り3か月の学習計画を組み直す。試験当日の食事・休憩・服装もここでシミュレーション

  4. 4

    ④ 苦手分野の集中復習(受験2か月前)

    過去問・模試で繰り返し間違えた分野を集中的に補強。心理職以外の福祉制度・労働法規・教育法規・司法制度などは独学では苦戦しやすく、ここに学習時間を厚く配分する。事例問題対策として、5分野の実習記録を読み返すのも効果的

  5. 5

    ⑤ 直前期は法令・倫理を仕上げる(受験1か月前)

    公認心理師法第40〜45条(信用失墜行為の禁止・秘密保持義務・連携・主治の医師の指示・名称の使用制限)は毎年必ず複数問出題される。倫理綱領・関係法令を最後に総復習し、職責問題で確実に得点する。試験前日は早寝・前々日に持ち物点検を済ませる

公認心理師の主な就職先と年収|5領域の実情

公認心理師の活躍領域は、法律上の5分野(保健医療/教育/産業・労働/福祉/司法・犯罪)に整理されています。それぞれ雇用形態・年収レンジが異なり、ライフスタイルとの相性も大きく違います。

領域主な職場雇用形態年収レンジ(目安)特徴
医療 精神科病院・総合病院・小児科・心療内科・緩和ケア病棟 常勤・非常勤 常勤350〜550万円
非常勤時給1,800〜3,500円
診療報酬上の評価が拡大中。チーム医療の一員として安定。常勤求人は都市部に集中
教育 スクールカウンセラー(小中高)/教育支援センター/大学相談室 非常勤中心 時給4,500〜6,000円
週1〜2日勤務
SCは時給単価が高いが非常勤・年度更新が原則。複数校掛け持ちが標準
産業 EAP企業/健康管理室/人事部メンタルヘルス担当 常勤・業務委託 常勤450〜700万円
EAP委託:時間単価高め
ストレスチェック義務化以降需要拡大。臨床経験5年以上が条件のことも
福祉 児童相談所/発達障害者支援センター/障害者就労支援/高齢者施設 常勤・会計年度任用職員 常勤300〜500万円 公務員職が多く身分は安定。地方自治体採用は年齢制限あり
司法 少年鑑別所/少年院/家庭裁判所調査官/矯正施設 常勤(国家公務員) 初任給20〜23万円
30代後半で年収500万円台
法務省専門職員試験を別途受験。採用枠は少ないが安定度は高い

全国平均で見ると公認心理師の常勤年収は約400〜500万円帯が中央付近とされ、職場・経験年数・地域差で大きく上下します。非常勤の掛け持ちが業界の標準で、「医療常勤+スクールカウンセラー非常勤」「EAP業務委託+大学相談室」のように、複数分野で雇用契約を結ぶ働き方が広く採用されています。

臨床心理士との違い|5項目で徹底比較

心理職を目指す人が必ず直面するのが「公認心理師と臨床心理士、どちらを取るべきか」という問いです。結論から言えば、現場の標準は「ダブル取得」です。両者の違いを5項目で整理します。

項目公認心理師臨床心理士
資格区分国家資格(公認心理師法)民間資格(公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会)
誕生年2017年(試験開始2018年)1988年
所管厚生労働省・文部科学省日本臨床心理士資格認定協会
受験要件大学+大学院(A区分)等、A〜E区分の5ルート協会指定大学院(第1種・第2種)修了が中心
更新更新制度なし(生涯有効)5年ごとの更新制(研修・実績ポイント必須)

現場ではダブル取得が依然として標準

公認心理師は国家資格として権威ある立場を得ましたが、業界の研鑽の場・学会・研修体制は臨床心理士側に長年蓄積されてきました。スーパーバイズや研修受講機会、書籍・カンファレンスの仕組みは臨床心理士コミュニティが手厚く、「研修参加歴で5年更新する仕組み」が現場の質を支えています。
一方で、医療機関の診療報酬・スクールカウンセラーの公募要件・福祉制度上の配置基準では公認心理師の名称が前面に出ます。このため、求人応募の幅と現場研鑽の両方を確保する目的で、多くの心理職が両方を保持するのが現状です。大学院進学時に「指定+カリキュラム対応」両方の大学院を選ぶ動機もここにあります。

経過措置(Gルート)の終了状況|現任者向け特例は完全終了

⚠️ Gルートはもう新規申込できない

公認心理師法の施行(2017年9月15日)から5年間の経過措置として設けられたGルート(現任者特例措置)は、2022年実施の第5回試験を最後に受付終了しています。心理職に5年以上従事した現任者を救済する仕組みでしたが、想定された対象者の多くがすでに受験を済ませており、現時点では新規申込の窓口はありません。

Gルート時代に救済された人々

Gルートで合格した人の典型例は、臨床心理士として現場で経験を積んできた中堅・ベテラン大学院は出ていないが医療現場で長年心理職として働いてきた人看護師・保健師として精神保健の現場にいた人などです。第1回〜第5回まででGルート由来の合格者は累計数万人規模となり、これが現在の公認心理師の多数派を形成しています。

これから目指す人はA〜C区分の正規ルートのみ

Gルート終了以降、これから心理職を目指す人はA〜C区分の正規ルートを通る必要があります。社会人キャリアチェンジの場合も大学院進学が事実上の必須要件となり、働きながら通える夜間・週末開講の大学院、放送大学+大学院連携プログラムなど、社会人向けの学び直しコースを選ぶ人が増えています。

公認心理師制度の課題|現場が抱える3つの論点

制度発足から約8年が経過し、現場で議論されている主要な課題を整理します。受験を検討する段階で全体観として知っておくと、進路選択の助けになります。

① 更新制度がないことの是非

公認心理師は更新制度がなく、一度合格すれば生涯有効です。これは「資格を取ってからの研鑽は自助努力に委ねられる」ことを意味します。臨床心理士は5年ごとの更新で研修・実績ポイントを義務化しているのと対照的で、「国家資格化したのに研鑽の仕組みがない」という指摘が、心理職団体から繰り返し出ています。今後の法改正論点の一つです。

② 報酬の地域差と非正規雇用比率の高さ

心理職の労働市場は非常勤・業務委託の比率が高く、フルタイム正社員の心理職は今も多くありません。地方ではスクールカウンセラーの時給単価が都市部の半分〜2/3にとどまる地域もあり、生計を立てるには複数機関の掛け持ちが前提になります。診療報酬の評価拡大で常勤化の動きは出ているものの、全国一律ではなく地域差が大きいのが現状です。

③ 主治の医師の指示規定の解釈

公認心理師法第42条第2項「主治の医師の指示を受けなければならない」規定の解釈をめぐっては、運用ルールが2018年に厚労省・文科省連名で通知されました。しかし、医療機関外(学校・産業・福祉現場)で要支援者にすでに主治医がいる場合の指示の取り方など、運用上のグレーゾーンが残っており、現場ごとに対応が分かれています。

体験職場3パターン|公認心理師の働き方リアル

🏥 ① 精神科病院 常勤公認心理師(30代・女性)

総合病院の精神科病棟に常勤で勤務。朝のカンファレンス→外来心理検査→個別カウンセリング→デイケアプログラム→記録がルーティン。年収は420万円、賞与込み。チーム医療の一員として医師・看護師・PSWと毎日顔を合わせる環境で、「医療チームの中で心理の視点を伝える役割」が常勤心理職の核心です。残業は月20時間程度で、ワークライフバランスは比較的取りやすい職場。

🏫 ② スクールカウンセラー兼任型(40代・男性)

非常勤で中学校2校+大学相談室1か所を兼任。月〜水は中学(時給5,200円×週8時間)、木金は大学相談室(時給3,500円×週14時間)。年収換算で約480万円。「公認心理師は名称、現場では『カウンセラーの先生』」と呼ばれ、いじめ・不登校・進路相談・教員コンサルテーションが日常業務。学校行事や年度更新の不安定さがある一方、夏休み・春休みは余裕があり、研鑽や副業の時間を取りやすいのが特徴。

💼 ③ 企業EAP公認心理師(30代・男性)

外資系EAP企業に常勤で勤務。クライアント企業の従業員からの電話・オンライン相談を1日6〜8件対応。年収580万円。ストレスチェック義務化以降、需要は安定的に拡大。「症状の重い人は医療機関にリファーし、軽症〜予防段階の働く世代を支える」のがEAPの役割で、医療現場とは違う「働き続けるための心理支援」が中心。実務経験5年以上が応募要件になっており、新卒では入りにくい領域。

体験談|3つの取得ストーリー

💬 ① A区分・大学院ルートで合格(26歳・女性)

「高校時代から臨床心理士に憧れ、心理学部に進学。学部時代から公認心理師カリキュラムを意識して指定25科目を全部履修しました。大学院は『臨床心理士第1種指定+公認心理師カリキュラム対応』の大学院を選び、実習450時間を病院・小学校・児童相談所・少年鑑別所・EAP企業の5分野で履修。第7回試験を修了見込みで受験し、自己採点147点で合格。臨床心理士の試験も同年秋に合格してダブル取得しました」

💬 ② 看護師からのキャリアチェンジ(38歳・女性)

「精神科病棟で看護師として10年働き、心理職への転向を決意。社会人入試で心理学部の3年次に編入、卒業後は社会人向け夜間の心理系大学院に2年通って公認心理師カリキュラムを履修。実習は勤務先と連携してもらい、有給と業務調整でなんとか450時間を確保しました。看護師時代の患者対応経験のおかげで事例問題は得点源に。看護師の収入を維持しながら6年かけて取得したのは大変でしたが、看護・心理の二刀流でできる仕事の幅が広がりました」

💬 ③ 心理学非専攻からのチャレンジ(45歳・男性)

「文系学部卒で20年営業職、メンタル不調をきっかけに自分の経験を活かしたいと心理職を志しました。Gルートはすでに終了していたため、放送大学で心理学の指定科目25科目を5年かけて履修、その後通信制の心理系大学院に2年通って実習450時間を達成。家族の理解と職場の時短勤務制度があってこそ続けられました。第7回試験は1点差で不合格、第8回で合格。非専攻からでも、時間と家族の協力があれば不可能ではないことを伝えたいです」

ありがちな誤解5選|受験前に整理しておきたいこと

  • 「公認心理師は臨床心理士の国家資格版」ではない——両者は別資格で、出題範囲・受験要件・研鑽の仕組みも異なります。現場では補完的に併用されており、ダブル取得が主流です。
  • 「Gルートで今からでも受験できる」ではない——現任者向けGルートは2022年の第5回試験で完全終了しました。今から目指す人はA〜C区分が事実上の選択肢です。
  • 「指定大学院=公認心理師カリキュラム対応」ではない——「指定大学院」は臨床心理士養成課程の用語、「カリキュラム対応」は公認心理師の要件。大学院選びでは両方の表記を必ず確認しましょう。
  • 「公認心理師は業務独占資格」ではない——名称独占資格であり、カウンセリング行為そのものは無資格者にも認められています。ただし診療報酬や公的配置基準では資格保有が要件になります。
  • 「合格すれば仕事は安定する」ではない——心理職の労働市場は非常勤・業務委託の比率が高く、複数機関掛け持ちが標準です。資格取得は出発点であって、ゴールではありません。

よくある質問|公認心理師Q&A 10問

Q1. 公認心理師と臨床心理士、どちらを取るべきですか?

結論として、現場の標準はダブル取得です。公認心理師は国家資格として求人応募の幅を確保し、臨床心理士は5年更新の研鑽システムを通じて専門性を維持する役割を果たしています。大学院進学時に「臨床心理士第1種指定+公認心理師カリキュラム対応」の大学院を選べば、両方の受験資格を同時に満たせます。

Q2. 大学院に行かずに公認心理師になれますか?

制度上はB区分(大学+実務経験ルート)がありますが、対象となる「特定施設」は限定的で、実際に進むのは難しいのが現状です。Gルート(現任者特例)はすでに終了しており、これから目指す人はA区分の大学+大学院ルートが事実上の標準です。

Q3. 社会人で心理職にキャリアチェンジする現実的な道は?

放送大学・通信制大学で心理学の指定25科目を履修したうえで、社会人向けの夜間・週末開講の大学院(公認心理師カリキュラム対応)に進学する道が現実的です。合計で5〜7年かかります。実習450時間の確保が最大のハードルなので、勤務先の理解・有給活用・時短勤務制度の活用が鍵になります。

Q4. 公認心理師の試験は何点取れば合格できますか?

合格基準は総得点(230点満点)の約60%以上とされ、目安として例年138点前後がボーダーになります。難易度補正が入る年もあるため、確実な合格を狙うなら160点以上を目指して学習計画を立てるのが王道です。

Q5. 試験対策はいつから始めればいいですか?

大学院修士2年の春(4〜5月)から本格的に開始するのが標準です。基本書→過去問→模試→苦手分野→直前期の5ステップを半年から1年かけて回します。社会人で働きながらの受験は、修了見込みの1年前から週末を中心に計画的に進めるのが現実的です。

Q6. 受験料・登録費用は合計いくらかかりますか?

受験料は28,700円、合格後の登録手数料が7,200円(収入印紙)+登録免許税15,000円で合計約50,900円です。これとは別に、大学院学費(年間100万円前後×2年)、実習に伴う交通費・宿泊費が必要になります。

Q7. 公認心理師の平均年収はどのくらいですか?

常勤の場合400〜500万円帯が中央付近です。医療・産業領域は比較的高く、教育・福祉領域は低めの傾向。非常勤の掛け持ちが業界標準で、複数機関で雇用契約を結びながら年収を組み立てるのが現実的な働き方です。詳しくはカウンセラーの種類と活躍分野ガイドでも整理しています。

Q8. 更新制度がないと聞きました。研鑽はどう続けるの?

公認心理師には更新制度がありません。そのため、多くの心理職が臨床心理士の5年更新制度(年間ポイント研修)や、各種学会・職能団体の研修に自主的に参加して研鑽を続けています。日本公認心理師協会・日本公認心理師の会など職能団体も研修体系を整備中で、今後の制度発展が注目されています。

Q9. 主治の医師の指示規定とは何ですか?

公認心理師法第42条第2項は、要支援者に主治医がいる場合、その主治医の指示を受けなければならないと定めています。2018年に厚労省・文科省連名で運用通知が出ましたが、医療機関外(学校・産業・福祉現場)でクライアントに主治医がいる場合の指示の取り方は、現場ごとに対応が分かれています。試験でも頻出論点です。

Q10. 高校生です。今からできる準備は何ですか?

公認心理師カリキュラム対応の心理学系学部・人間科学部・教育学部がある大学を志望先に検討するのが第一歩です。大学のシラバスで「公認心理師指定25科目」がそろっているかを必ず確認しましょう。在学中に進学する大学院も「カリキュラム対応+臨床心理士指定」の二重対応校を選ぶと、卒業後の進路選択肢が広がります。カウンセラー資格完全ガイドで全体像を確認するのもおすすめです。

あわせて読みたい|次の一歩のヒント

参照元:公認心理師法(平成27年法律第68号、2015年9月成立/2017年9月施行)/厚生労働省「公認心理師制度」(https://www.mhlw.go.jp/)/文部科学省「公認心理師について」(https://www.mext.go.jp/)/一般財団法人 日本心理研修センター(試験実施機関、https://shinri-kenshu.jp/)/公認心理師カリキュラム等検討会報告書/日本公認心理師協会・日本公認心理師の会 公開情報(いずれも2026年5月時点。受験料・合格率・年収レンジは年度・回・地域・職場により変動があります)

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