のこの日記『[欲を満たす]黄色いの。[小説と短歌]』
visibility145 edit2023.11.07

「今年は遅かったな。」
人間たちが見上げられないほど高い空から、わざわざコンクリート目掛けて低いトーンで言ってやると、駅のコンクリートに横たわる黄色いのは、しずかに微笑んだ。そうして、いつものように「風の機嫌がようやくなおったんです。」なんて言って、ゆらりゆらりと雫のついたからだを揺らしてみせる。毎年見てる光景なのに、なんだかむずがゆくて、おかしくて、笑いそうになる。かっこうつかないから、頑張って耐えたけど。
その黄色いのと遭遇する日は決まって雨だ。時々良い日もあったけど、そういう日ほど風の力で別のところにぶっ飛ばされてしまう。まったくついてないやつだよな。たしか、初めて会った日も雨だった。朝から雨降られパニックにおちいった地上の人間たちは、慌ただしく傘をさしたり、急ぎ足でずぶ濡れ状態から駅の方へ走ってきたり、被り物をしたりとおのおの多種多様に目の前の雨と格闘をしていた。それを上から見下ろして、朝から落ち着かない奴等だなぁと呑気にしていた、その時だった。ゆらりゆらりとやってきた自慢の黒い翼に着いた"黄色い物体"に気がついた。"黄色い物体"は、やがて黄色いツバサをぷるぷると揺らすと、ほっと満足気な顔をして、さも当然の事のように言ってのける。 「友達の風さんが、ご機嫌斜めだったんです。だから、車のあたまに乗っけてもらって、電車のあたまに乗って、ここに着いた、と。」
――そう、それが"黄色いの"だ。
最初は、そんなふてぶてしいの、すぐにでも捨ててやるつもりだった。1羽でいるのは慣れてるし。あと、風には空でいつも世話になってたし、そんな風の友達ならいつ手放しても怒りはしないだろうし。なにより、俺は"かしこい"からな。奴が地面に辿り着いてから地面といっしょに長い眠りにつくことを知っていたわけだ。それなら尚更、長く居たってしょうがない。1羽でいるのは慣れているから。そのつもりだったはずなのに、あーあ。まんまとそのズルい喋りにはめられた。悔しい。なのに、面白い。だから、その、まことに悔しさでいっぱいではあるけれど、だから今日もこうしてコイツと話をしているというわけだ。まぁ何故か悪い気にはならないが。
「この時期に風が吹くのは、秋を連れてきてくれるからなんですよ。ご機嫌斜めになっちゃうのは勘弁ですけど。だから、貴方に会いに来ます。」
"いやカラスは沢山いるだろう"と返す俺に対して、黄色いのは、変わらず微笑みながら決まっていつもこう返事をする。
「私が知るカラスは貴方しかいませんから」 と。
そうしていつの間にかいなくなっている。なんて憎い奴だ。最悪だ。それで、なんだか悔しいから今年は短歌を作ってやった。「大風が秋の整理を手伝って、おかげでやっと冬が来る。」どうだ!凄いだろう!と俺はすっかり雨のやんだ天を仰いだ。カーカーという高笑いと駅のチャイムだけが、日が暮れた青黒い空一面に響き渡っていた。
(おわり)
今日よかったこと♪
・今朝、仕事始めに落ち着かせるため考えた創作を欲望のままに完成させた(割と勢い)
・気圧やばかったけど乗り切った💪
・自分にとって創作は落ち着きなんだと知れた。(時と場合にもよりそうだけど F)
明日は休むぞ〜«٩(*´ ꒳ `*)۶»
読んでくれた人へのメッセージ
今朝、黄色い落ち葉と落ち葉が風によって整理整頓されてる姿が忘れられなくて、つい……。添削してないのでそのつもりで読んでください。荒れ模様の日、お互いお疲れ様でした🐶🍀
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