結城の日記『静寂』

私は告げる、私を嫌え。
貴方は言う、絶対にできません。

私は告げる、きっと貴方は私を忘れる。
貴方は言う、絶対に忘れません。

私は告げる、貴方は絶対に諦める。
貴方は言う、絶対に諦めません。

私は告げる、私を忘れよ。
貴方は言う、絶対に忘れません。

少したって、貴方は言った。

「そんなことありましたか?」

これが、人生の本質である。
人は、忘却をすることで、前へ進む。
従って、忘却はなくてはならないことだ。

貴方は、私を忘れた。
私の名前は覚えていても、私の残したものはもう貴方の中には多く残っていない。

貴方は私を忘れ、前に進む。

そしてその先ゆく人生の中で、私の名前を忘れるだろう。

その時は、私の与えたものに書かれた名前も消えているだろう。

そうした時、私は、貴方の元へ、帰ってこよう。

そして、また同じことを、語りかける。

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