結城の日記『この傷』

気がつくと、眉間に大きな溝のような傷があった。

どちらかでいうと左目に近い方で、とても深かった。

ただ、いつも通り、寝起き特有の口内に住まう不快感を取り除こうと洗面台に立っただけだった。

私は、目の前に広がるであろう自分の傷に理解ができなかった。

不思議な日だなと思い、私は絆創膏で傷を隠し、予約をしていた整骨院へ向かった。

いつも通り診察券を渡しただけなのに、ビックリとした表情で迎えられた。確かに、いつもより体調が悪く、フラフラとしていた。

「救急車を用意しますか」と聞かれ、私は断り、自転車をふらつかせながら帰った。後に判明したことだが、予約はその日ではなかった。

ヒューマンエラーだらけの日を疑うと、その日を作っていたのは、私自身であった。

致死量の薬剤、異常をきたす量のアルコール。私は、異世界へ行くための準備をしていただけだった。

私は我に返ることなく、今も尚、当時のことを疑っている。

この傷は、いったいなんだろう。

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