結城の日記『賢者』

目が覚めると、そこには一人の男の後ろ姿があった。

本を読んでいるようだが、その背中は、偉大なる賢者の誇り高き言葉そのものだった。

彼は、私の存在と心の中を悟り、告げる。

「学んではならない。君が学べば、世界は崩壊してしまう」

死人が、生者に対し死を語る光景に、私は絶句した。

「なぜあなたは、本が手にあるのに、私に破壊を告げるのでしょうか」

「何を勘違いしている。壊れることは、決して悪いことではない。死があるから生があるように、学ぶということは、世界をリフォームするということだ」

私は、彼の言葉が理解できなかった。
なぜなら、“私は死を理解できないのに対して、賢者は生と死を理解し、超越した目線から私に対して私のわかる言葉で語っているからである”

「あなたは、何者ですか」

賢者は本を閉じ、振り返った。

「私は、君だよ」

神は、こういった。

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