のこの日記『とあるCさんの話【エッセイ的なやつ】』

大学生の頃、キャリアカウンセリングで自分を担当していたのがCさんだった。Cさんは本名とか呼称ではなく、オンライン予約する時に名前の代わりに表記された「ABC」のCさん。名前も聞いてるはずなのに、何故か今でも"Cさん"という名前だけが頭の中に残っている。名前を覚えるのが苦手だから仕方がないか。
Cさんは当時「自分が分からない」「好きなことはあるけど、何をしたいのか分からない」とかそういう事ばかり言う自分に対して、結構しっかり当たってくれた唯一の大人だった。それなのに、自分なりに考えて今日も相談しようと思い立ったある日の夕方、Cさんは何も言わずにいなくなってしまった。短期雇用だと聞いていたから、仕方がなかったんだ。そう自分に言い聞かせたものの、その日の帰り道はちょっとだけ泣いた。せっかく材料、もらったのにな。

「妖怪アパートの幽雅な日常って知ってる?
知りたい事、そこに書いてあると思う。作者の人もう亡くなっちゃってるんだけどね。」

その後中古で105円くらいのを4巻分まで買ったけど、結局そのうち読んだのは1巻くらいで、2巻は薄らとだけ内容を覚えてるくらいだった。だから、その時の自分には「肩の力をぬいていこう」とかそういう言葉もちゃんとは留めておく余裕も無かったのかもしれない。
それでも、言葉の力とは不思議なもので、ふとした瞬間に蘇ってくることがある。

この前暑さを凌ぐべく図書館に入ったら、なんだか急に読みたくなって。1巻はもう読んだからいいやと考えを捨て、勢いで2巻を読んだらもう、とまらなくなってた。面白すぎるだろ……!というか、ぶっ刺さりすぎてる。当時よりの倍くらいは言葉や環境が刺さる。心の栄養が足りてない時、この人の書く言葉の響きに癒されようと思った。帰る場所がある幸せ。価値観のある友達のいる心強さ。世界の広さ。好きな場所で食うご飯はうめぇ。世界はどんどん変わっていく。
まさかCさんがこの道を歩んできた自分を見越してこの物語を勧めてきたわけではないだろうけど、巡り巡ってちゃんと言ってくれる大人に出会えてよかった。
珍しく時間が過ぎるのが地獄のように早く、自分が伴わない。とてもじゃないけど「楽」とは言えないような1日だったけど、心の片隅にはCさんの言葉と一冊の本があった。

今夜は1巻最後まで読み終えそうだなぁ。

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