傾聴ボランティア完全ガイド|養成講座・活動場所・話の聴き方・よくある失敗

傾聴ボランティア完全ガイド|養成講座・活動場所・話の聴き方・よくある失敗

📌 この記事でわかること

  • 傾聴ボランティアとは何をする活動か——カール・ロジャーズの受容・共感・自己一致を噛み砕いた現場の聴き方
  • 高齢者施設・遺族サロン・ホスピス・病院・電話相談・SNS相談まで、傾聴が必要とされる6つの場面
  • 社協・日本傾聴ボランティア協会・ホールファミリーケア協会などが開く養成講座の受け方と修了後の流れ
  • うなづき・繰り返し・要約・沈黙・質問の5つの基本技法と、やってはいけない5つの振る舞い
  • 死別悲嘆・自殺念慮・共感疲労など、傾聴現場で避けて通れない重いテーマへの備え
  • 「話を聴くだけで誰かの役に立てるの?」という疑問に、現場の声と公的情報で冷静にお答えします

「話を聴くだけで、本当に誰かの役に立てるのだろうか」
「相手の重い話を受け止め続けられる自信がない」
「アドバイスもできないのに、ただ座っているだけでいいの?」

傾聴ボランティアは、数あるボランティアのなかでももっとも「何もしないようで、じつは深い」活動です。物を届けるわけでも、部屋を片付けるわけでも、医療行為をするわけでもありません。ただ、相手の隣に座り、相手の語りを遮らず、評価も否定もせず、最後まで聴く——たったそれだけのことが、高齢者施設・ホスピス・病院・電話相談の現場で、薬や処置では届かない孤独に光を当てているのです。

この記事では、ココトモが就労支援の現場で出会ってきた相談員・訪問ボランティア・電話相談員の声をもとに、カール・ロジャーズの来談者中心療法の考え方を噛み砕きつつ、日本傾聴ボランティア協会・日本いのちの電話連盟・よりそいホットライン・厚生労働省の公開情報を参照しながら、活動場所・養成講座・技法・失敗パターン・自己ケアまで、はじめての方が迷わずに一歩目を踏み出せるように整理しました。読み終えるころには、あなたが最初に電話すべき窓口と、向き合うべき心構えが見えているはずです。

傾聴ボランティアとは|「聴く」は最も奥深い支援

傾聴ボランティアとは、話し相手を必要としている人のそばに座り、相手の語りを遮らず、評価も否定もせず、最後まで聴くことに徹する活動です。高齢者施設の入居者、一人暮らしの高齢者、ホスピスで終末期を迎える方、入院中の患者さん、電話・SNSで孤独や苦しさを抱える方——対象はさまざまですが、共通しているのは「話を聴いてほしい人に、聴く人を届ける」というシンプルで奥深い役割です。

カール・ロジャーズの「3つの態度」を現場に

傾聴の考え方の土台になっているのは、アメリカの心理学者カール・ロジャーズが提唱した来談者中心療法(クライエント中心療法)の考え方です。ロジャーズは、援助者が持つべき態度として以下の3つを挙げました。

  • 受容(無条件の肯定的関心):相手の語りを善悪や正誤で判断せず、そのまま受け止める姿勢
  • 共感的理解:相手の心の動きを、相手の立場から感じ取ろうとする姿勢
  • 自己一致(純粋性):援助者自身が取り繕わず、自然な自分でそこにいること

これは心理療法の専門用語ですが、傾聴ボランティアはセラピストではありません。求められるのは治療ではなく「同じ時間を過ごすこと」。たとえば、お茶を飲みながら「そうでしたか」「それは大変でしたね」と相づちを打ち、相手が話し終えるまで黙って待つ。その30分、1時間が、孤立しがちな高齢者にとって「今日、誰かと話せた日」になる——その積み重ねが傾聴ボランティアの仕事です。

傾聴は「何をしない活動」か

傾聴ボランティアの特徴は、「しないことリストが長い」ことにあります。以下はすべて、傾聴の場では原則として行いません。

  • アドバイスをする(「こうしたらいいですよ」)
  • 相手の話を評価する(「それは間違っていますね」)
  • 相手の感情を否定する(「そんなに気にすることないですよ」)
  • 自分の話にすり替える(「私もそうだったんですけど…」と長く語る)
  • 励ます(「大丈夫ですよ」「元気出して」)
  • 解決策を提示する(「病院を変えてみては?」)

一見「冷たい」と思われるかもしれませんが、話を聴いてほしい人が本当に求めているのは、解決ではなく理解であることが多いのです。アドバイスや励ましは、ときに相手の感情を上から押さえつけてしまいます。「ただ聴いてほしかっただけなのに」と感じさせないために、傾聴ボランティアは自分の言葉を引き算する訓練を積みます。

参照:カール・ロジャーズ「来談者中心療法」概念/日本傾聴ボランティア協会公開情報/厚生労働省「地域共生社会」関連資料

傾聴が必要とされる6つの場面

「話を聴いてほしい人」は、じつは社会のあらゆるところにいます。医療・介護・福祉・自殺対策の各領域で、傾聴ボランティアが入っている代表的な場面を6つ整理します。

🏡

① 高齢者施設・デイサービス

特養・老健・グループホーム・デイサービスで入居者や利用者の隣に座り、お茶を飲みながら話を聴く。昔の暮らし・戦時中の記憶・家族の話題に耳を傾ける。月1〜週1回2時間が目安

🚪

② 一人暮らし高齢者への訪問

社協の「ふれあい・いきいきサロン」や訪問傾聴事業を通じて自宅を訪問。孤立防止・見守りを兼ねた活動で、民生委員と連携することも多い

🕊️

③ ホスピス・緩和ケア・遺族サロン

終末期を迎えた患者さんのベッドサイドでの傾聴、ティーサービス、音楽会の補助。大切な方を亡くされたご家族の遺族サロン運営の手伝い

🏥

④ 病院(小児病棟を含む)

長期入院の成人患者さんの話し相手、小児病棟での絵本の読み聞かせ、手紙の代筆、外来待合での寄り添い。守秘義務と感染対策の研修が必須

📞

⑤ 電話相談

いのちの電話・よりそいホットライン・チャイルドラインなど、匿名の電話相談で受け手を担う。半年〜1年以上の養成講座を修了した方が交代制で対応

💬

⑥ SNS 相談・自殺対策

厚生労働省の SNS 相談事業や BOND Project など、LINE・チャットを通じた若年層向け相談。文字のみでの傾聴という新しい形

① 高齢者施設・デイサービス

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、デイサービスなどでの活動です。ご高齢の入居者さんは、認知症の有無にかかわらず、「最近、職員以外と話していない」という状態になりがちです。傾聴ボランティアは、お茶を飲みながら、昔の仕事・故郷の話・戦時中の記憶・家族との思い出などに耳を傾けます。 同じ話を何度繰り返されても、「はじめて聞いた人のように」受け止めるのがコツ。社会福祉協議会(社協)や施設のボランティア担当が受け入れ窓口になります。高齢者福祉全般の入口については福祉ボランティア完全ガイドもご覧ください。

② 一人暮らし高齢者への訪問(社協のふれあい活動)

社協が全国で展開する「ふれあい・いきいきサロン」や訪問傾聴事業では、自宅を訪問して話し相手になる活動があります。民生委員・児童委員、地域包括支援センターと連携しつつ、孤立死予防・見守りも兼ねた役割を担います。 訪問型は相手との距離が近くなるため、個人情報の扱い・性的被害の防止・金銭トラブルの回避など、研修と運営ルールが重要になります。必ず2人1組で訪問する地域も多く、単独訪問が禁じられているケースもあります。

③ ホスピス・緩和ケア・遺族サロン

がんなどの終末期を迎えた患者さんが過ごすホスピス・緩和ケア病棟では、傾聴・ティーサービス・音楽会・庭仕事などを通して、医療職が担いきれない「暮らしの質」を支えます。残された時間を過ごす患者さんの語りに、答えを出さずに寄り添う姿勢が核心になります。 患者さんが亡くなった後、ご家族のための遺族サロン(グリーフケアの場)を運営する施設もあり、そこでの運営補助や話し相手として入ることもあります。死別の悲しみに向き合うため、ボランティア自身の心理的ケア体制が整っている施設を選ぶことが大切です。

④ 病院(小児病棟を含む)

長期入院の患者さん、外来の待合、小児病棟などが舞台になります。小児病棟ではチャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)ホスピタル・プレイ・スペシャリスト(HPS)といった専門職と協働し、子どもの語りや遊びを支えます。 成人病棟では、手紙の代筆・新聞を一緒に読む・窓辺の花を愛でる——そうしたささやかな時間が、治療で失われがちな日常を取り戻す助けになります。医療現場全般については医療ボランティア完全ガイドをあわせてどうぞ。

⑤ 電話相談(よりそいホットライン/いのちの電話)

日本いのちの電話連盟が全国約50のセンターで運営するいのちの電話、一般社団法人社会的包摂サポートセンターが運営するよりそいホットライン、特定非営利活動法人チャイルドライン支援センターが運営するチャイルドラインなどが代表例です。 電話相談は、顔が見えない匿名相手という特殊な条件で傾聴を行います。対面以上に「声・息づかい・沈黙の長さ」に神経を集中し、相手の状態を推し量ります。自殺念慮・DV・虐待・性被害など重いテーマが含まれるため、半年〜1年以上の養成講座と、相談後のデブリーフィング(振り返りミーティング)が必須です。

⑥ SNS 相談・自殺対策(BOND Project 等)

近年、厚生労働省の自殺対策事業として、若年層を対象とした LINE・チャット相談が広がっています。NPO 法人 BOND Project、特定非営利活動法人あなたのいばしょ、NPO 法人ライフリンクなどが運営し、文字のみで行う傾聴という新しい形が生まれました。 声の抑揚や表情が読めない分、絵文字・句読点・改行の速さから相手の心理状態を読み取る技術が求められます。匿名性が高いため相談しやすい一方で、相談員側の代理受傷(話を聴いて自分が傷つく状態)も起きやすく、運営体制の確認が重要です。

養成講座の受け方

傾聴は「話を聴くだけ」に見えて、体系的な訓練が必要な技術です。独学で始めてしまうと、良かれと思って相手を傷つけてしまう事故が起きやすい領域。まずは養成講座を受けるところから始めましょう。

  1. 1

    どこが開催しているか調べる

    各地の社会福祉協議会、日本傾聴ボランティア協会、NPO ホールファミリーケア協会、NPO メンタルケア協会、日本いのちの電話連盟の各センターなどが代表的。住んでいる市区町村の社協ホームページで「傾聴 講座」と検索すると近場の募集が見つかる

  2. 2

    基礎課程と実践課程

    多くは「基礎課程(講義+ロールプレイ)」と「実践課程(同行訪問+振り返り)」の2階建て。1日で修了するショート講座から、週1回×3か月の本格講座まで幅がある。電話相談員は半年〜1年以上が一般的

  3. 3

    受講費の相場を確認

    社協主催は無料〜数千円、民間の本格講座は数万円(テキスト代込み)が目安。電話相談の養成講座は多くが有料(2〜5万円程度)で、修了後に一定期間の活動を約束する形が多い

  4. 4

    修了後の登録・派遣

    修了者は団体の登録ボランティアとして名簿に載り、希望エリア・希望ジャンルに応じて派遣される。はじめは先輩とペアで同行訪問し、2〜3回を経て一人立ちするのが標準的な流れ

  5. 5

    継続研修・スーパービジョン

    活動開始後も月1回程度のケース検討会、年数回のフォローアップ研修が続く。指導者によるスーパービジョン(活動の振り返り面談)を通して、自分の聴き方の癖や迷いを言葉にする時間が確保される

💡 代表的な講座実施団体

日本傾聴ボランティア協会:全国で「傾聴ボランティア養成講座」を開催。基礎〜応用まで段階的。
NPO ホールファミリーケア協会:「メンタルサポーター養成講座」など、傾聴を中心にしたサポーター育成を展開。
NPO メンタルケア協会:精神対話士の認定講座ほか、傾聴の実践者育成。
日本いのちの電話連盟:各センターで電話相談員の養成講座を1年単位で開催(2〜5万円程度)。
社会福祉協議会(市区町村):地域住民向けの入門講座を無料〜数千円で開催していることが多い。

出典:日本傾聴ボランティア協会/NPO ホールファミリーケア協会/NPO メンタルケア協会/日本いのちの電話連盟/各市区町村社協 公開情報

傾聴 5つの基本技法

養成講座で繰り返し練習するのが、以下の5つの基本技法です。いずれも「派手さはないが効く」のが特徴で、ロールプレイで体に染み込ませていきます。

  • うなづき・相づち
    「ええ」「はい」「そうでしたか」「それで…?」など短い言葉で、相手に「あなたの話を聴いていますよ」というサインを送り続ける。うなづきは大げさにならず、相手のテンポに合わせるのがコツ。
  • 繰り返し(オウム返しの適切な加減)
    相手が言った言葉のキーワードを、そのまま短く返します(「つらかったんですね」「おひとりでがんばってきた、と」)。全文オウム返しは不自然になるため、感情がにじむ言葉だけを選んで繰り返すのが上級者の技。
  • 要約
    相手がひとしきり話し終えたところで、「ここまでのお話をまとめると、○○という時期に○○があって、今も○○というお気持ち、ということでしょうか」と整理して返す。相手が「そう、まさにそれ」と感じられれば成功。
  • 沈黙を恐れない
    相手が考え込んで黙った数秒間は、大切な内面の作業が進んでいる時間です。焦って話題を変えず、こちらも黙って待つ。沈黙に耐える力こそ、傾聴の真骨頂。
  • 質問(開かれた/閉じた)
    開かれた質問(オープン・クエスチョン)は「そのときどう感じましたか?」のように相手が自由に話せる問い。閉じた質問(クローズド・クエスチョン)は「お薬は飲まれましたか?」のようにYes/Noで答える問い。傾聴では開かれた質問を基本にしつつ、事実確認には閉じた質問を使い分けます。

これらの技法は、「聴いているフリ」のテクニックではありません。相手が自分の気持ちを自分で言葉にしていく——その作業を邪魔しないための、ささやかな足場がけです。

やってはいけない 5つのこと

⚠️ 傾聴の場で避けるべき5つの振る舞い

  1. アドバイスしてしまう
    「それなら○○したほうがいいですよ」という言葉は、相手の語りを遮り、「あなたの判断は間違い」と暗に伝えてしまいます。相談員の役目は答えを出すことではなく、相手が自分で考える時間を守ること。
  2. 自分の話に持っていく
    「私もそうだったんです」は一言までは共感の表れですが、そこから自分の思い出話を延々と語り始めると主従が逆転します。気づいたら話を聞いてもらっているのは自分——これは最もよくある失敗。
  3. 「大丈夫」「元気出して」の安易な励まし
    つらい話を聴いて黙っているのがつらくなると、つい「きっと大丈夫ですよ」と言ってしまいがち。しかし相手は「大丈夫じゃないから話している」のです。励ましは、相手の苦しみを否定する響きを持ちます。
  4. 個人情報を他の入居者に漏らす
    「あの部屋の○○さん、息子さんと仲が悪いんですって」という立ち話は、施設ボランティアで最もやってはいけない行為のひとつ。守秘義務は絶対。家族や友人に活動内容を話すときも、個人が特定される情報は出しません。
  5. 宗教・政治・金銭に踏み込む
    相手の信仰や政治信条を話題にしたり、自分の宗教を勧めたりすることは厳禁。金銭の貸し借り、保険・投資の勧誘、物品の販売も一切行いません。これらは信頼を一瞬で崩し、運営団体全体を揺るがす事故につながります。

初回訪問の会話例

85歳の女性、特養入居3年目。足の具合で外出が減り、最近元気がないと職員から聞いた——という設定で、良い聴き方つい言ってしまいがちな返しを並べてみます。

◎ 良い聴き方

——今日はよろしくお願いします。お隣に座ってもよろしいですか?
「どうぞ。あんたも忙しいのにねぇ」
——いえいえ、お話を聞かせていただけるのが楽しみで。最近はどんなふうに過ごされていますか?
「うーん、あんまりね…。足が悪くなっちゃってから、もう散歩もできないし、つまらないわよ」
——そうですか、散歩ができなくなって、つまらない、と。
「そうなのよ。前は毎朝、近くの神社まで行ってたの。あそこの桜がきれいでね」
——毎朝、神社までね。桜がきれい。
「あの桜のこと、考えてるとねぇ、娘がまだ小さかった頃を思い出すのよ……(しばし沈黙)」
——……(黙ってうなづき、待つ)
「……あの子も、もう60よ。信じられない」
——娘さんが、小さかった頃のことを、思い出されるんですね。

× つい言ってしまいがちな返し

——今日はよろしくお願いします。
「最近、足が悪くなっちゃってね…」
——あら、そうなんですか!でも今はリハビリも進んでるらしいですよ? うちの母も足が悪くて、でもリハビリ頑張って散歩できるようになったんです。○○さんもきっと大丈夫ですよ!
「そう…ねぇ…」
——元気出してください! 毎日お天気もいいし、気分転換しないと! 前向きに考えれば、施設の方も優しいし、いいことたくさんありますよ。趣味とかないんですか?
「…別に、ないわね」
——そうだ、編み物なんてどうですか? 最近、○○センターで教室やってるって聞きました! そこに通えば友達もできますよ!(以下、自分の家族の話と提案が続く)

左は相手の言葉を繰り返し、沈黙を待つだけで、相手が自分から過去の思い出に触れていきます。右は善意しかないのに、励まし・自分語り・提案の3段重ねで相手の語りを封じてしまっています。違いは「話す量」ではなく、「相手の時間を守っているか」です。

ホスピス・遺族傾聴の特別な配慮

🕊️ 死別の悲しみと向き合う場で大切なこと

ホスピス・緩和ケア病棟や遺族サロンでは、死別悲嘆(グリーフ)という特別な重さを抱えた方と向き合います。一般的な傾聴技法に加えて、いくつかの配慮が欠かせません。

グリーフの段階(目安):ショック・否認・怒り・抑うつ・受容と呼ばれる心の動きは、順番に進むとは限らず、行ったり来たりを繰り返すのが普通です。「もう半年経ったんだから前を向かないと」は絶対に禁句。泣いていい、思い出話をしていい、何度でも同じ話をしていい——その時間を守ることが仕事です。

自殺念慮を聴いた場合の対応:「もう死にたい」「消えてしまいたい」という言葉に出会ったら、否定もごまかしもせず、真剣に受け止めたうえで、必ず専門職につなぎます。運営団体ごとに決められた緊急連絡ルート(施設の看護師・精神科医・相談機関)に即座に報告するのが原則。ボランティアが一人で抱え込むのは、相手にもご自身にも危険です。

TALK の原則(自殺予防の基本として世界的に用いられる考え方):
Tell(誠実に心配を伝える)/Ask(死にたい気持ちについてはっきり尋ねる)/Listen(評価せず聴く)/Keep safe(安全を確保し専門職につなぐ)。
日本でも厚生労働省の自殺対策研修などで紹介されており、ボランティア養成講座で簡単に触れる団体が増えています。

参照:厚生労働省「自殺対策白書」/日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団「ボランティアの手引き」/NPO 法人ライフリンク 公開情報

電話相談・SNS 相談の場合

匿名で、顔が見えず、背景も分からない相手から電話・チャットを受けて話を聴く——これが電話相談・SNS 相談の特殊な形です。対面傾聴とは別の困難さがあり、養成も採用プロセスも厚く設計されています。

代表的な窓口

  • 日本いのちの電話連盟:全国約50センターで運営。自殺予防の裾野を担う代表的な相談窓口
  • よりそいホットライン:一般社団法人社会的包摂サポートセンターが運営。DV・外国籍・セクシュアリティなど多言語・多テーマ対応
  • チャイルドライン:特定非営利活動法人チャイルドライン支援センターが運営。18歳までの子ども専用
  • BOND Project:10代・20代の女性を対象とした夜の SNS 相談
  • あなたのいばしょ:24時間 SNS 相談チャット

採用プロセスと研修期間

電話相談員は、書類選考・面接・養成講座(3〜12か月)・実地研修・正式登録という段階を踏むのが一般的です。養成講座では、傾聴の基本技法に加えて、自殺念慮への対応・希死念慮の評価・継続支援へのつなぎ・守秘義務・自己ケアまでを体系的に学びます。受講料は2〜5万円程度で、修了後の最低活動期間が定められていることも多いです。

匿名相手だからこその難しさ

声や文字だけが頼りの相談では、相手の状態を推測する手がかりが少ない分、想像力と慎重さが求められます。

  • 背景情報(住所・氏名・年齢)を原則尋ねないため、危険な状況でも119番につなぐことができないジレンマがある
  • 同じ相談者から何度もかかってくる場合、運営団体のケース共有ルールに従って対応する
  • 相手が電話を途中で切った場合、その後の無事を確認できない重さを引き受けることになる
  • SNS 相談は絵文字・短文・返信速度の変化で相手の心理を読み取る、対面とも電話とも異なる独自のスキルが要る

これらの難しさがあるからこそ、電話・SNS 相談の運営団体では相談後のデブリーフィング(振り返り会)・スーパービジョン・心理職によるサポート体制が手厚く整えられています。

共感疲労・代理受傷への自己ケア

つらい話を聴き続けると、聴き手自身の心にもダメージが蓄積します。これを共感疲労(コンパッション・ファティーグ)、相手のトラウマ体験を追体験することで傷つく現象を代理受傷(ヴァイカリアス・トラウマ)と呼びます。医療・介護・相談業務全般でよく知られた概念で、ボランティアも例外ではありません。

主な症状(医療的断定ではなく、目安として)

  • 眠りが浅い・寝つきが悪い・悪夢を見る
  • 気分が落ち込む・やる気が出ない・興味が薄れる
  • 相談内容のフラッシュバック(相手の話の場面が何度も浮かぶ)
  • イライラしやすい・家族にあたってしまう
  • ボランティアに行くのが憂うつ・前日から不調

これらが2週間以上続く場合は、心療内科・精神科・産業医など専門職への相談を早めに検討してください。ボランティアを休む・一時的に活動ジャンルを変えるのも、決して後ろめたいことではありません。

自己ケアの具体策

  • 週次のデブリーフィング:活動終了後、同じチームのメンバー同士で「今日はこういう話を聴いて、こう感じた」を言葉にする。心に蓋をせず、外に出す習慣
  • スーパービジョン:経験豊富な指導者と1対1で、自分の聴き方・迷い・感情の動きを振り返る。月1回程度が目安
  • 活動内容を家に持ち帰らない工夫:帰り道に好きな音楽を聴く、お茶を飲む、お風呂に入るなど、切り替えの儀式を決めておく
  • 活動休止・卒業の判断を躊躇しない:人生の局面(介護・育児・病気・転職)と重なったときは、いったん休むことを選んでよい。長く続けることだけが正解ではありません

社会人で限られた時間のなかで続ける方は、働きながらできるボランティアの考え方もあわせてどうぞ。

始め方 5ステップ

  1. 1

    養成講座に申し込む

    市区町村の社協、日本傾聴ボランティア協会、ホールファミリーケア協会、いのちの電話連盟の最寄りセンターなどから、通える範囲・受講料・期間で選ぶ。「傾聴 養成 講座 ○○市」で検索するのが手堅い

  2. 2

    基礎研修を修了

    講義とロールプレイで傾聴の基本態度・5つの技法・やってはいけないことを体に入れる。短い講座でも、この「叩き台」を持たずに現場に出ないのが鉄則

  3. 3

    紹介先を選ぶ

    施設訪問(高齢者・ホスピス)、訪問傾聴(一人暮らし高齢者)、電話相談、SNS 相談など、自分の時間帯・体力・心の耐性に合う場を選ぶ。最初は週1回2時間程度から無理のない範囲で

  4. 4

    見学・ペア同行

    先輩ボランティアの活動に付いて見学し、次に先輩とペアで実施。2〜3回を経て、担当者から「一人で大丈夫そうですね」と確認が入る

  5. 5

    一人立ち→定期活動

    月1〜週1のペースで定期活動を開始。月1回のケース検討会・スーパービジョン・年数回のフォローアップ研修にも参加しながら、無理なく続けていく

より広い視点で一歩目を踏み出したい方は、ボランティアの始め方の総合ガイドもあわせてご覧ください。

失敗パターン 5選

傾聴ボランティアの現場で実際に起きやすい失敗を5つ。どれも「善意から生まれる」のが怖いところで、知っておくだけでかなり予防できます。

  1. 良かれと思ってアドバイス
    最も多い失敗。「それなら○○病院に変えてみては?」「お嫁さんに相談してみたら?」など、話を聞きながら頭のなかで解決策を組み立ててしまい、つい口に出してしまう。相手は答えを求めていないことを毎回思い出すのが予防策です。
  2. 個人的に深入りして施設外で会う
    「施設の外でもお茶したい」「連絡先を教えてあげたい」——気持ちは自然ですが、原則禁止です。相手を特定の個人との関係に依存させてしまい、自分が休んだ日の寂しさを強めたり、金銭トラブル・家族とのあつれきを生んだりします。運営ルールを超えた関係は築かないこと。
  3. SNS 発信
    「今日、ホスピスで○○さんのお話を聴きました」と個人が特定できそうな形でSNSに書くのは重大な守秘義務違反です。活動の感想を書きたい気持ちは分かりますが、施設名・地域名・エピソードが特定される情報は一切出さない。写真も原則不可です。
  4. 共感疲労を我慢して燃え尽き
    「私が休んだら相手が困る」と自分を追い込み、不調のサインを無視した結果、突然活動できなくなってしまうパターン。続けられる形で続けることこそ最大の貢献。疲れたら休む勇気を持ちましょう。
  5. 宗教や保険勧誘の疑いをかけられる
    信仰の話題を出す、健康食品を勧める、保険や投資の話をする——これらは一度でも行うと、所属団体の信用を大きく損ないます。相手の家族から「あのボランティアが勧誘してきた」と苦情が入ると、活動継続が難しくなる事例も。私的な価値観の持ち込みは厳禁です。

体験談

【55歳・女性・高齢者施設の訪問ボランティア歴3年】

母の介護をしていたとき、「話を聞いてくれる誰か」がどれほど必要かを身に染みて感じました。母が亡くなった後、社協の養成講座を受け、特養で月2回のお茶会に参加しています。93歳の女性が「あんたが来る日は朝から楽しみなのよ」と言ってくれた瞬間、報われた気がしました。私が母にしてあげられなかったことを、別の誰かにしている感覚です。

【42歳・男性・いのちの電話相談員歴7年】

会社員をしながら、月2回の夜間シフトに入っています。養成講座は1年、受講料も数万円かかりましたが、決めた以上は長く続けようと思って踏み出しました。いちばん変わったのは、家族との会話です。妻や子どもの話を、途中で遮らずに最後まで聴けるようになった——それだけでも、この活動を続ける価値があったと感じています。

よくある質問 10問

資格なしで本当にできる?

はい、可能です。傾聴ボランティアには国家資格は必要ありません。ただし、独学で始めるのではなく、社協・日本傾聴ボランティア協会・ホールファミリーケア協会などが開く養成講座を修了してから現場に入るのが標準的な流れです。短い入門講座でも受講するのと受講しないのでは大きく違います。

自分も病気経験があるけど相談員になれる?

当事者経験は、傾聴の現場で活かせる場面が多くあります。ピアサポート(同じ経験を持つ者同士の支え合い)という領域もあります。ただし、電話相談・SNS 相談の多くは自身の体調が安定していることを応募条件にしていて、治療中の場合は主治医と相談のうえ応募することが推奨されます。無理のない時期に始めるのが長く続けるコツです。

高校生・大学生でも参加できる?

団体によります。対面の傾聴ボランティアは18歳以上を条件とする団体が多い一方、施設内のイベント補助・レクリエーションから始められる場所もあります。電話相談員は多くの団体で原則22〜25歳以上としており、若年層はまず大学生ボランティア高校生ボランティアの入口から経験を積むのがおすすめです。

無口でも務まる?

むしろ、自分からあまり話さない方は傾聴に向いている傾向があります。傾聴は「話す技術」ではなく「聴く技術」。ただし、相手の語りを受け止める相づちや、終盤の要約など、ごく短い発話は必要なので、養成講座のロールプレイでウォーミングアップしてから現場に入ると安心です。

週にどれくらい活動する?

活動形態によります。施設訪問は月1〜2回×2時間程度、電話相談は月1〜4回×3〜4時間のシフト、SNS 相談は週1回×2〜3時間などが目安です。無理のないペースから始め、慣れたら頻度を上げるのが一般的。「毎週絶対に行かなければ」と自分を追い込まないことが、長く続けるコツです。

交通費・謝金は?

多くの団体で交通費は自己負担、謝金も原則ありません。電話相談は相談員の自宅から電話を受けるのではなく、団体の拠点に出向くことが多く、その場合の交通費も通常は自己負担です。活動保険(ボランティア活動保険)への加入は社協や団体がまとめて手続きするケースが一般的なので、募集要項で確認してください。

相談中に泣いていい?

自然に涙が出るのは人間として当然の反応で、相手を傷つけることはありません。ただし、こちらが号泣して相手が慰める側にまわるのは避けたいところ。涙は「心が動いた」サインとして短く受け止め、相手の語りに戻していく切り替えが大切です。活動後のデブリーフィングでその感情を言葉にする習慣を持ちましょう。

自殺念慮を聴いたらどうする?

ボランティアが一人で抱え込むことは絶対にしないでください。傾聴姿勢は保ったうえで、運営団体が定めた緊急連絡ルート(施設の看護師・精神科医・相談機関・運営事務局)に必ずつなぎます。TALK の原則(誠実に心配を伝える/はっきり尋ねる/評価せず聴く/安全確保のため専門職につなぐ)を軸に動きましょう。医療的判断はせず、必ず専門職へ。

相手が恋愛感情を向けてきたら?

傾聴の場では、相手が援助者に強い感情を向けるのは珍しくありません。個人的な連絡先交換・施設外での面会・贈り物の授受は原則すべて断るのがルール。一人で対応せず、運営団体のスーパーバイザーや施設責任者に速やかに報告し、担当替えなどの対応を相談してください。

燃え尽きないコツは?

(1) 週次のデブリーフィングと月1のスーパービジョンを欠かさない、(2) 活動後の「切り替えの儀式」を決めておく、(3) つらいと感じたら迷わず休む、(4) 一つの団体・一つの現場に依存しすぎない、(5) 生活の基盤(仕事・家族・健康)を傾聴より先に置く——この5つです。続けられる形で続けることが、いちばん大切な貢献の仕方です。

あわせて読みたい

出典:日本傾聴ボランティア協会/NPO ホールファミリーケア協会/日本いのちの電話連盟/一般社団法人社会的包摂サポートセンター(よりそいホットライン)/特定非営利活動法人チャイルドライン支援センター/厚生労働省「自殺対策白書」公開情報

「友達として相談にのる」無料相談サイトのボランティアメンバー募集中!
相談ボランティア募集

年間10,000件以上の相談が寄せられる当サイト「ココトモ」で『相談ボランティア』をしてみませんか?
年齢・性別・資格&経験は一切不問。webサイト内の活動なので全国どこにお住まいの方でもOK。自宅から活動可能です。

ボランティア募集の詳細はこちら
keyboard_arrow_up