スーパービジョン完全ガイド|SV種類・受け方・費用相場・スーパーバイザーの探し方

スーパービジョン完全ガイド|SV種類・受け方・費用相場・スーパーバイザーの探し方

「相談を受けたあと、自分の対応が正解だったか分からず眠れない」
「資格は取ったけれど、実践の場で誰に相談すればいいのか分からない」
「ベテランの先輩から『スーパービジョンを受けなさい』と言われたが、入口の探し方が分からない」

カウンセラー・心理職にとって、「ひとりで抱えない」ことは技術ではなく倫理です。自分の判断や感情の動きを別の専門家と共に振り返り、クライエントにとってより良い支援を目指す——その営みをスーパービジョン(Supervision、以下SV)と呼びます。

日本臨床心理士会・日本産業カウンセラー協会・日本公認心理師協会など、主要な職能団体はいずれも「継続的なSVを受けること」を倫理綱領または倫理的推奨として明文化しています。臨床心理士の場合、資格更新の研修ポイントにもSV受講が含まれており、公認心理師には更新制度自体はないものの、生涯学習の枠組みのなかでSVの重要性が繰り返し強調されています。

本記事は、ココトモが相談員プラットフォームを運営するなかで出会ってきた「駆け出しカウンセラーの戸惑い」と「中堅のSVer(スーパーバイザー)の声」をもとに、SVの種類・受け方・費用相場・スーパーバイザーの探し方・倫理的注意点まで、入口から実践まで一気通貫でまとめたガイドです。

📌 この記事でわかること

  • スーパービジョンの定義と目的、そして「ひとりで抱えない」がカウンセラーの倫理である理由
  • 個人SV/グループSV/ピアSV/ライブSVなど、SVの4タイプとその使い分け
  • 個人SV:おおむね5,000〜15,000円/回、グループSV:3,000〜8,000円/回の費用相場(年度・地域・SVerにより幅あり)
  • 駆け出し・中堅・ベテラン別の受ける頻度の目安と、スーパーバイザーの探し方5ステップ
  • 良いSVerを選ぶ5ポイント・準備するもの・SVで扱う内容と、SVと教育分析の違い
  • オンラインSVの広がり・倫理的注意点・ありがちな失敗5選・体験談3パターン・FAQ10問まで網羅

スーパービジョンとは|定義と目的

スーパービジョン(Supervision)とは、カウンセラー・心理職・対人援助職が、自身の臨床実践について、より経験豊富な専門家(スーパーバイザー、以下SVer)から定期的に指導・助言・振り返りを受ける営みを指します。指導される側はスーパーバイジー(以下SVee)と呼ばれ、両者は契約に基づいた専門的関係を結びます。

SVの目的は3層構造で理解する

Bernard & Goodyear(2019)など海外の代表的なSVテキストでは、SVの目的を①教育的機能(技術の向上)、②支持的機能(バーンアウト予防)、③管理的機能(クライエント保護・倫理遵守)の3層構造として整理してきました。日本臨床心理士会の倫理綱領や日本産業カウンセラー協会の指針も、この3層を踏まえてSVの位置づけを示しています。

「指導」より「ともに考える」関係

日本語の「スーパービジョン」は語感がやや一方向的ですが、実際の場面ではSVerが一方的に教える「指導」ではなく、SVeeの実践をともに振り返り、新しい視点を加える協働作業です。SVerの権威的な発言ではなく、SVeeが「自分でも気づかなかった盲点」に気づく気づきのプロセスこそが本質と言えます。

出典:日本臨床心理士会「倫理綱領」/日本公認心理師協会「倫理綱領」/日本産業カウンセラー協会「倫理綱領」/Bernard, J. M. & Goodyear, R. K. (2019) Fundamentals of Clinical Supervision/APA Ethics Code(American Psychological Association, 2017 Amendment)

SVが必要とされる3つの理由|技術・倫理・自分自身を守る

なぜ資格を取ったあとも、現役の間ずっとSVが推奨されるのでしょうか。職能団体の倫理綱領と、現場の声から整理すると、大きく3つの柱があります。

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① 技術向上(教育的機能)

独学・自己流に陥らず、技法・見立て・介入の引き出しを増やす。とくに駆け出し期は、自分の対応の「何が良くて何が課題か」を客観的に評価する基準を持てない。SVerの視点を借りて、専門家としての判断軸を育てる

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② クライエント保護(管理的機能)

心理職には守秘義務と善行原則(do no harm)がある。判断に迷うケース・重篤化リスクのあるケース・倫理的に曖昧な場面で、SVerと事例を共有することは、クライエントの安全を組織的に担保する仕組みでもある

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③ バーンアウト予防(支持的機能)

対人援助の仕事は共感疲労・代理受傷のリスクが構造的に大きい。SVは技術相談だけでなく「自分自身が壊れないため」の場でもある。継続的な振り返りは、長く現役でいるための最大の防波堤になる

ここで重要なのは、SVは「未熟だから受ける」ものではないという事実です。臨床経験20年・30年のベテランも、複数のSVer・ピアSVを使い分けて自身の実践を点検し続けています。「現役の間ずっと受け続ける」のがSVの本来の姿で、これは医師・看護師・教師など他の対人援助職にも共通する考え方です。

SVの4タイプ|形式の違いと使い分け

SVには大きく4つの形式があります。それぞれ役割が異なるため、1つに絞らず複数を組み合わせるのが標準的な使い方です。

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① 個人SV(Individual)

SVerと1対1で行う、最も標準的な形式。1回50〜90分、月1〜2回が中心。SVeeの抱えるすべての事例を扱える深さがあり、駆け出し期と方針転換期に必須。費用は1回5,000〜15,000円が目安

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② グループSV(Group)

1人のSVerと3〜6人のSVeeが集まる形式。1回90〜120分、月1回が中心。他者の事例から学べるのが最大の利点で、視野が広がる。費用は1回3,000〜8,000円で個人SVより安価

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③ ピアSV(Peer)

同程度の経験を持つ仲間どうしで、SVerを置かずに事例検討する形式。互いに対等な立場で気づきを交換する。費用はかからないが、外部の専門家の視点が入らないため、個人SV・グループSVと併用するのが原則

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④ ライブSV(Live)

SVeeのセッションの様子をSVerが録音・録画・実観察し、リアルタイムまたは直後にフィードバックする形式。大学院・訓練機関で実施されるのが中心で、現場ではプライベートな関係でのライブSVは稀。クライエントの同意が必須

4タイプは「同時に」使い分ける

実際の臨床家は、「個人SV月1回 + グループSV月1回 + ピアSV隔月」のように複数を組み合わせるのが一般的です。個人SVは深さ、グループSVは広がり、ピアSVは継続性——それぞれの良さを引き出す配合を、自分の経験段階と財布事情に合わせて設計します。

費用相場|1回いくら?年間どのくらい?

SVの費用は、SVerの経験年数・所属領域(精神分析・認知行動療法・家族療法など)・地域・所属機関の有無によって大きく変動します。以下は2026年時点の一般的な目安であり、年度・地域・SVerにより幅があることに留意してください。

形式 1回あたりの費用 頻度の目安 年間費用イメージ
個人SV 5,000〜15,000円 月1〜2回(50〜90分) 60,000〜360,000円
グループSV 3,000〜8,000円 月1回(90〜120分) 36,000〜96,000円
ピアSV 原則無料(場所代のみ) 月1回〜隔月 0〜12,000円
ライブSV 個人SVと同等〜上乗せ 不定期 大学院は学費に含まれる
大御所SVer 20,000〜30,000円超 月1回 240,000〜360,000円超

出典:日本臨床心理士会・日本精神分析学会・日本認知行動療法学会の公開する研修・SV制度情報、個人開業SVerの料金表(2026年時点・関東圏中心の調査)。地域・所属領域・SVerの経歴により変動するため、必ず個別に見積もりを取って確認してください。

「高ければ良い」ではない

費用は経験年数の目安にはなりますが、「高額なSVerほど自分に合う」とは限りません。駆け出し期の方が、いきなり大御所SVerに月3万円を支払うのは経済的にも心理的にも負担が大きく、続かないことが多いです。最初は所属協会の若手向け制度や、中堅SVerから始めるのが現実的です。

受ける頻度の目安|駆け出し・中堅・ベテラン

どのくらいの頻度で受ければよいかは、経験年数・抱えているケース数・直面している課題で変わります。以下は職能団体の研修指針と現場感覚を踏まえた目安です。

  • 駆け出し期(実践開始〜3年):個人SV月2回 + グループSV月1回——基礎を固める時期。可能なら週1回相当の振り返り機会を確保するのが理想。臨床心理士の更新ポイントの基礎を作る期間でもある
  • 中堅期(4〜10年):個人SV月1回 + ピアSV隔月——独立心が出る一方で、独学化のリスクが高まる時期。意識的に外部の視点を入れる。専門領域を絞ったSVerに変更するタイミングでもある
  • ベテラン期(10年〜):個人SV随時 + ピアSV/同僚スーパービジョン——困難ケース・倫理的に揺れるケースが出たときに随時SVを取る形に移行。自身がSVerを担う立場にも回り、SVerのSV(メタSV)を受ける人もいる
  • 困難ケース直面時:頻度を一時的に増やす——自死リスク・虐待疑い・転移逆転移が強いケースなどは、駆け出し・中堅問わず週1回相当のSVを組む。これは個人の選択ではなく倫理的責務
  • 休職・復職時:個人SVから再開——ブランクのある復職時は、いきなり多数のクライエントを抱えるのではなく、SVを軸にケース数を段階的に戻していくのが安全

スーパーバイザーの探し方|5ステップ

「SVerを探したいが、どこから始めればいいか分からない」——これは駆け出し期のもっとも多い悩みです。以下の5ステップで進めると、おおむね1〜3か月以内に最初のSVerにたどり着けます。

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    ① 所属協会・職能団体の紹介制度

    日本臨床心理士会・日本公認心理師協会・日本産業カウンセラー協会・日本認知行動療法学会など、所属している学会・協会のSVer登録名簿または若手研修制度を確認します。協会経由の場合、SVerの資格・経験年数・専門領域が明示されており、入口としてもっとも安全です。

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    ② 学会大会・研修会で出会う

    学会大会・研修会の事例検討会やワークショップは、SVerと実際に話せる絶好の場です。「いまSVer探していて、空きはありますか?」と直接打診できる関係に育てるのが現実的な近道。年に数回ある大会は、見込み客のいないSVerにとっても受け入れの窓口です。

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    ③ 出身大学院・指導教員のネットワーク

    大学院修了後、最初のSVerは出身大学院の指導教員から紹介してもらうのが定番ルート。指導教員が現役でSVerを担っている場合もありますし、別領域に進む場合は適切な紹介者を案内してもらえます。修了後5〜10年は、母校とのつながりを大切にしておくと困ったときに頼りやすくなります。

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    ④ SNS・知人・先輩の紹介

    X・Facebook・LinkedInなどで活動を発信しているSVerは増えています。ただしSNSでの判断だけは避け、必ず共通の知人・先輩を介した紹介を間に挟むのが安全。「自分の臨床志向が近そう」「人柄が信頼できる」と複数の評価がそろってから打診します。

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    ⑤ トライアル契約から始める

    いきなり長期契約せず、「まず3回ほど受けてから継続を判断する」と最初に伝えるのが定番。フィット感が悪いまま続けるとSV自体の効果が下がります。SVerの側もトライアル契約に慣れているため、率直に伝えて問題ありません。

良いSVerの選び方|5つのチェックポイント

SVerは「経歴が立派」だけでは選べません。自分にとって良いSVerかどうかを、以下の5点で確認します。

  • ① 専門性が一致している——自分が扱う領域(児童・青年・成人・産業・医療など)と、技法的志向(精神分析・認知行動療法・家族療法・統合的など)が、SVerの専門と重なっているか。専門外のSVerでも基礎は学べるが、深い議論には専門の重なりが必要
  • ② 倫理意識が明確——契約・記録・守秘・SVerとの境界線などについて、初回に明確な説明があるか。曖昧にする・後回しにするSVerは要注意。倫理綱領の話題が自然に出てくる人が望ましい
  • ③ 契約書または合意書を作成する——料金・頻度・キャンセル規定・記録の扱い・終結条件などを書面または明文化したメールで確認するSVerは信頼できる。「なんとなく」で始まる関係はトラブルになりやすい
  • ④ フィット感がある——技術以上に重要なのが「この人になら本音を話せるか」という肌感覚。SVeeが緊張で本当の事例を出せないと、SVは機能しない。無理に憧れの先生を選ばないのが鉄則
  • ⑤ 継続性が期待できる——SVerが多忙すぎる・転居予定がある・体調に不安がある等、継続が困難な要素がないか初回に確認する。最低でも2〜3年は同じSVerと続けられる関係が、SVの効果を最大化する

SVで扱う内容|事例検討だけではない

SVと聞くと「持参した事例を検討する場」というイメージが強いですが、実際にはもっと幅広いテーマを扱います。

  • 事例検討——SVeeが担当しているケースの見立て・介入計画・困難場面の振り返り。SVの中心軸
  • 自己理解(逆転移の検討)——「このクライエントになぜ怒りを感じるのか」「なぜ眠気が来るのか」など、SVee自身の内的反応を理解する作業
  • 倫理的判断の相談——守秘の例外(自死リスク・虐待通告)、二重関係、SNS上の遭遇など、判断が一つに定まらないグレーゾーンを共に検討する
  • キャリア・進路の相談——専門領域の選択、勤務先の選び方、開業の準備、学会発表など、職業人生全体の相談
  • 人生での出来事の共有——SVee自身の結婚・出産・離婚・近親者の死・自身の病気など、臨床の継続に影響する人生上の出来事を共有し、ケースへの影響を一緒に整理する
  • 論文・発表の指導——事例論文・学会発表の準備をSVと並行して行うケースもある

SVと教育分析の違い|似て非なるもの

精神分析系の訓練を受けた人ほど、SVと教育分析(Training Analysis/個人分析)の違いに戸惑います。両者は目的も契約も別物です。

項目 スーパービジョン 教育分析(個人分析)
主な目的 臨床実践の振り返り・技術向上 自分自身の無意識・葛藤の理解
中心の話題 クライエントの事例 自分自身の人生と内面
関係性 SVer ⇄ SVee(同業者間の専門関係) 分析家 ⇄ 被分析者(治療的関係に近い)
頻度 月1〜2回 週1〜4回(精神分析志向の場合)
必須か 多くの職能団体で倫理的に推奨 精神分析的心理療法家の訓練では必須
同じ人に依頼するか SVerと分析家は分けるのが原則

認知行動療法・統合的アプローチなど、教育分析を必須としない学派の場合は、SVのなかで自己理解の側面も扱うのが一般的です。ただしSVが個人分析に変質してしまうのはNGで、その線引きはSVerの倫理感に大きく依存します。

オンラインSVの広がり|コロナ禍以降の選択肢

🌐 オンラインSVは「主流の一つ」になった

2020年のコロナ禍を機に、Zoom・Google Meetなどを用いたオンラインSVが一気に広がりました。当初は緊急避難的な位置づけでしたが、現在は「対面・オンラインを併用」あるいは「完全オンライン」を標準とするSVerも増えています。地方在住者・育児中の臨床家にとっては、選択肢を大きく広げる転換点になりました。

オンラインSVの利点と注意点

  • 地理的制約からの解放——東京・大阪・福岡など特定都市に集中していたSVer候補が、全国どこからでも依頼可能になった
  • 移動時間の削減——往復2時間が浮き、その分ケース準備と振り返りに使える
  • 録画の可否はSVerと相談——SVeeが自分の振り返り用に録画したい場合は、必ず事前にSVerの同意を取る。原則は録画しない
  • 通信環境とプライバシー——自宅から接続する場合、家族に聞かれない環境を確保する。カフェ・職場の共有スペースからの接続は厳禁
  • 個人情報管理——画面共有でケース記録を見せる際、クライエント名・特定可能情報は事前に匿名化する。これは対面SVと同じだが、画面録画されるリスクのあるオンラインでは一層注意が必要

SVを受けるときの準備|事前に整えるもの

SVは「持っていく材料」で密度が大きく変わります。最低限のチェックリストを共有します。

  • 事例まとめシート——主訴・初回からの経過・現在の見立て・直近のセッション要約・困っている点を1〜2枚にまとめておく。話しながら整理するより、紙にしてから持参するほうがSVerの理解が早い
  • クライエントの同意——「あなたのケースについて、外部の専門家と振り返ることがあります」と初回契約時に必ず説明し、書面で同意を得ておく。これはSV利用の倫理的前提
  • 録音・録画はSV用途のみ——録音・録画を持参する場合、クライエントの追加同意と、SVer以外には共有しない約束が必要。SV後の速やかな破棄も明記する
  • 匿名化の徹底——氏名・所属・地名・固有名詞は事前にイニシャルや仮名に置き換える。第三者から見て個人特定できる情報は伏せる
  • 倫理的に迷うポイントの明確化——守秘の例外・二重関係・SNS上の遭遇など、自分が「これは判断に迷う」と感じた箇所をピックアップしてSV冒頭で共有する
  • 振り返りメモを書き起こす時間——SV直後の30分間、メモをまとめる時間をスケジュールに入れておく。書かないと半分は忘れる

SV関係の倫理|料金・SVer変更・記録の扱い

SVは「先生と弟子」の私的関係ではなく、明文化された倫理に支えられた専門的関係です。とくに次の3点は曖昧にしてはいけません。

① 料金は必ず事前に合意する

「お世話になっているから値引きしてもらう」「友達価格」「無料」などの非対称な金銭関係は、SVの機能を歪める原因になります。フェアな料金で、フェアな契約をすることが、率直なフィードバックを支える土台です。

② SVer変更は権利として認められている

「お世話になったから変更しづらい」「申し訳ない」と感じてSVerを変えられない人がいますが、SVer変更はSVeeの正当な権利です。専門領域の変更・フィット感の悪化・SVer自身の事情など、変更理由はさまざまです。礼を尽くして伝えれば、ほとんどのSVerは快く受け入れます。

③ 記録の扱いは契約で明確化する

SVのやりとりをSVerがメモ・記録する場合、その記録は誰の所有物で、いつまで保管され、どう破棄されるかを事前に確認します。SVee側も、メモは個人ファイルに保管し、SNS・第三者には共有しないのが原則です。

相談員プラットフォームでのSV・振り返り体制

ココトモのように、複数の相談員が登録するプラットフォーム形式の場合、個人開業より組織的なSV・振り返り体制を整えやすいという利点があります。具体的には、月例のグループ事例検討会、ケースの困難場面で運営側に相談できる窓口、相談員どうしのピアSV枠などです。

ただし、プラットフォーム側のSVだけでは、自分の臨床志向に合った深い個人SVはカバーしきれません。プラットフォーム内のSV機会と、外部で自分が選んだSVerとの個人SVを併用するのが、長く健全に続けるための現実的な設計です。組織内のSVだけに依存しないバランス感覚が、相談員としての自律を支えます。

体験談|3人のSVをめぐる物語

💬 駆け出し期:個人SVに月3万円、それでも「やめられない」(28歳・公認心理師2年目)

「修了したばかりで月収も多くないのに、個人SV1万円×月2回+グループSV5,000円×月1回で月25,000円を払っています。最初は『高い』と感じましたが、SVがなかった月は判断に自信が持てず眠れない夜が増え、結果的に体調を崩しました。いまはSVを続けるために他の出費を削っています。これは投資というより『自分が壊れないための保険』だと思っています」(123字)

💬 中堅期:SVerを2人に増やした転換点(38歳・臨床心理士11年目)

「10年目に専門領域を成人から思春期に広げたとき、長く付き合った最初のSVerだけでは限界を感じ、思春期専門の別のSVerに新たに依頼しました。2人体制は費用も時間も2倍ですが、違う角度から同じケースを照らせるのはとても豊かです。SVerを増やすのは『先生を裏切る』ことではなく、自分の臨床を成熟させるための自然な選択でした」(128字)

💬 SVer側:教える側に回って初めて見えた景色(52歳・臨床心理士25年目)

「自分がSVerを担うようになって5年。SVeeの事例を聴くことで、自分自身の盲点に気づく瞬間が何度もありました。『SVerもSVeeから学ぶ』のは比喩ではなく事実です。私自身も今でも月1回、別のSVerに自分のSVerとしての振る舞いをSVしてもらっています。生涯学習者であることが、対人援助職の前提だと改めて感じています」(120字)

ありがちな失敗5選|SVをめぐるよくあるつまずき

SVを利用しない・うまく機能させられない理由として、現場でよく見られる5つのパターンを挙げます。

  • ① SVなしで開業・独立してしまう——資格を取った勢いで開業し、誰にも相談しないまま実践を重ねるパターン。倫理的にもクライエントの安全的にも危険。開業準備の段階で、開業後のSV体制を必ず設計する
  • ② 相性が悪いまま惰性で続ける——「失礼だから」「お世話になったから」と、フィット感の悪いSVerと数年続けてしまう。SVは機能していなければ意味がない。3〜6回試して合わなければ、丁寧に変更を伝えるのが正解
  • ③ 持参するケースを選びすぎる——「うまくいっているケース」「綺麗な事例」だけを持参してしまうと、本当に困っている場面でのSVが機能しない。むしろ「困っているケース」「うまくいっていないケース」こそ持参するのがSVの正しい使い方
  • ④ 教育分析と混同する——SVのなかで自分自身の人生や家族の話ばかりになり、ケースの検討が後回しになるパターン。SVと教育分析は別物。SVerもSVeeも、線引きを意識する責任がある
  • ⑤ 費用が惜しくて削ってしまう——収入が不安定な駆け出し期に、まず削るのがSV費用というケースは少なくない。しかし、SVを削ることはクライエントの安全を削ることと直結する。優先順位は最後にする

よくある質問|スーパービジョンQ&A 10問

Q1. SVは法律で義務づけられていますか?

いいえ、法律上の義務ではありません。しかし、日本臨床心理士会・日本公認心理師協会・日本産業カウンセラー協会など、主要な職能団体の倫理綱領では「継続的なSVを受けること」を倫理的責務として明示しています。法律ではなく倫理の問題であり、職能団体の会員でいる以上は実質的に必要不可欠です。

Q2. 臨床心理士の資格更新にSVは必要ですか?

臨床心理士は5年ごとの資格更新制度があり、その研修ポイントの一部としてSV受講が含まれます。一定回数のSV受講が研修ポイントとして認められる仕組みで、SVを継続している人は更新時にスムーズです。最新の細かい単位数は、日本臨床心理士資格認定協会の公式情報を確認してください。

Q3. 公認心理師にも更新制度がありますか?

いいえ、公認心理師には資格の更新制度はありません。一度合格すれば生涯有効です。ただし、日本公認心理師協会は生涯学習・継続的なSVを倫理的に強く推奨しており、更新制度がないからといってSVが不要というわけではありません。むしろ更新制度がない分、自律的な学び続けが問われる資格です。

Q4. SVerは1人に絞るべきですか?それとも複数?

駆け出し期は1人の個人SVerに集中するのが基本です。複数のSVerから異なる助言を受けると混乱しやすいためです。中堅期以降、専門領域が複数になる・新しい技法を学ぶなど必要に応じて、領域別に複数のSVerを持つのが標準的になります。グループSV・ピアSVは個人SVと並行して持つのが推奨されます。

Q5. SVerと友人・知人関係でも大丈夫ですか?

基本的には避けます。二重関係(dual relationship)はSV機能を歪めるためです。プライベートで親しい関係にある人にSVを依頼すると、率直なフィードバックがしづらくなり、また料金交渉や終結時に関係がこじれやすくなります。専門的関係として一定の距離を保てる相手を選ぶのが原則です。

Q6. クライエントの同意なくSVに事例を持っていけますか?

原則として初回契約時にSV利用について説明し、同意を得ておく必要があります。「あなたのケースについて、外部の専門家と振り返ることがあります。その際は氏名・特定情報を伏せます」と明示するのが標準的な運用です。同意なくSVに持ち込むことは、守秘義務の観点で問題になり得ます。

Q7. SVer変更を切り出すコツはありますか?

「専門領域を変えたい」「別の技法を学ぶ必要が出てきた」「ライフステージが変わって頻度を変えたい」など、SVeeの側の事情として伝えるのが角の立たない伝え方です。SVerとの関係性そのものを否定する必要はなく、節目として丁寧に区切ることが大切です。多くのSVerはSVer変更に慣れており、快く受け入れます。

Q8. オンラインSVだけで効果は十分ですか?

コロナ禍以降、オンラインSVのみでも十分な効果が得られるとする見方が主流になりつつあります。とくに地方在住・育児中の臨床家にとっては、SVへのアクセスを大きく広げる転換点になりました。ただし非言語的なやりとりの繊細さは対面に分があるため、可能であれば年に数回は対面を組み合わせるとさらに良いです。

Q9. 自分が体調を崩したとき、SVはどう活用すべきですか?

SVerに早めに状況を共有してください。共感疲労・代理受傷・うつ症状などの兆候があるときは、担当ケース数の調整・休職判断・自分自身の治療への接続を一緒に検討します。ただしSVは治療の場ではないため、SVeeの治療が必要な場合は別途、医療や心理療法を受けるのが原則です。

Q10. SV費用を勤務先に経費として認めてもらえますか?

医療機関・教育機関・企業内カウンセリングルームなど、組織で雇用されている場合、SV費用を職能向上経費として一部負担する制度を持つ職場もあります。就業規則・福利厚生制度を確認し、なければ上司・人事に交渉する余地があります。フリーランス・開業の場合は、事業所得の必要経費として確定申告で計上するのが一般的です。

あわせて読みたい|次の一歩のヒント

参照元:日本臨床心理士会「倫理綱領」/日本公認心理師協会「倫理綱領」/日本産業カウンセラー協会「倫理綱領・SV制度」/日本臨床心理士資格認定協会「資格更新制度」/日本臨床心理学会「事例検討・SV指針」/APA Ethics Code(American Psychological Association, 2017 Amendment)/Bernard, J. M. & Goodyear, R. K. (2019) Fundamentals of Clinical Supervision, 6th ed., Pearson(いずれも2026年5月時点で参照。費用相場・頻度の目安は年度・地域・SVerにより幅があります)

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