桜の日記『おばけがありがとうと言われなかった日』

あるところに、小さなおばけがいた。
おばけは、小さないたずらが好きで、よく人々にいたずらをしていた。
そのおばけに、町の人は皆、頭を抱えていた。
それを見据えた神様は、おばけのところに行った。

「おばけ。お前の悪さに、皆頭を抱えておる」

おばけは驚きました。
いたずらを悪さだとは思っていなかったからです。

「おばけ。これから一週間の間に「ありがとう」と言われなかったら、お前を悲しい目に遭わすぞ!」

そうとだけ言って、神様は去っていきました。

「アリガトウ?」

いたずら好きのおばけは、到底、「ありがとう」の意味を知りませんでした。
でも、おばけも悲しい目が辛いことなのは分かっています。
だから、何が何でも「ありがとう」と言われなければいかなかったのです。

――それから、しばらく経ちました。
もうすぐで、一週間が経とうとしています。
おばけは一度も、ありがとうと言われていません。

カチッ。
町の大時計が、0時を指します。
神様がおばけの元に来てから、一週間が経ちました。
「悲しい目」におばけが怯えていると、神様がやってきました。

「おばけ。お前は「ありがとう」と言われなかったな。お前を悲しい目に遭わせてやる!」

そう言って、神様は杖をおばけの方に向けます。
でも、おばけは痛くも痒くもありませんでした。

「お前を違う世界に飛ばした。お前の生きがいを無くした世界だ。ここは、元いた世界にそっくりだが、全く別の世界だ。ここで、お前の悪事を悔やむんだな!」

神様が言います。
そのまま、神様はフッと消えました。

不意に、おばけの目から涙が流れました。

朝が来ました。いつも通りの朝ではありませんでした。
誰も、笑顔ではないのです。

おばけの生きがいは、人間の笑顔を見ること。
おばけがいたずらをした時は、結果的に、「またあのおばけかー」と笑顔になってくれたのです。
おばけがいたずらをする理由は、人を笑顔にしたかったからでした。

でも、この世界では、おばけの生きがいがない。つまり、誰も人間は笑わないということ。
すごく悲しくなりました。
おばけは、自分がしたことを悔やみ、何度も何度も泣きました。

それから、どれくらい経ったでしょうか。
未だに、おばけは生きがいがない世界で泣き続けていました。

その時です。
目の前で、1人の老人が転んでしまったのです。
その老人が持っていたカバンから、沢山の物が飛び出しました。

おばけは、真っ先に老人に駆け寄り、落ちた物を回収していきます。
物を拾い終わり、老人にカバンを渡しました。

「ありがとうねえ。お陰で助かったわ。」

その老人は、笑っていました。
気がつくと、後ろに神様が立っています。

「やっとありがとうと言われたな。」

やれやれ、と言いたげに苦笑いをしています。
町の人も皆、いつもの笑顔です。

「ありがとう」と言われて、元の世界に戻ってこられたのです。
おばけは、もう一度涙を流します。
悲しい涙ではありません。
喜び、そして安堵の涙でした。

「ありがとう」

そう言って、おばけはみんなの輪に入っていきました。
おばけはやっと、「ありがとう」の意味を理解したのでした。

star今日よかったこと♪

・日記投稿

favorite読んでくれた人へのメッセージ

こんばんは、桜です。

今回は、おばけが悲しい目に遭うストーリーを書いてみました。
それはさておき………

皆さん、体調はいかがですか?
インフルエンザが流行っていますね。
体調を崩さないように気をつけてくださいね。

それでは、明日のあなたに、桜のような暖かさがありますように。
おばけにも桜のような暖かさがありますよーに!

ログインするとこの日記をフォローして応援できます

keyboard_arrow_up