ダー子の日記『余白にて、心遊ばせ。』

私は声を失った。
無くしたのではない。
失ったのだ。

今でこそ思う。
それは序章にしか過ぎなかったのだ。

振り返ろう。
当時、私は所謂電話オペレーターなる仕事をしていた。
‘声’の仕事だ。
今思えば前兆はあったのだ。

では前兆とは如何に。
月に一度の割合で、言葉がつかえる。
始まりはそんなものだった。
月に一度というのは、女性の月のものの時期だ。

私は同期に問うた。
このようなものは有るのかと。
同期は答えた。
私もあるよ、と。

私は安堵した。
安堵してしまったのだ。
この時私は気づいていなかった。
言葉がつかえるより、大切な変化を。

それは何だと問われれば。
今にして思うと、これがメインなのだ。
ひとつの会話を終えると、私の身体は明らかに硬直しているのだ。
首をすぼめ、足の指に至るまで。

電話オペレーターという仕事は、生業上穏やかなお客様ばかりでは無い。
当たり前に怒鳴られる、罵倒されるものなのだ。
とはいえ、これは私の物語。
全てにおいて、私が居た場所か外界か。二択しか無いのである。
この二択において、外界とは全く預かり知らぬとことである。誤解なきよう。

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