ゲーム依存・ネット依存の自助グループ完全ガイド|ICD-11ゲーム症・OLGA・家族会・専門治療機関

ゲーム依存・ネット依存の自助グループ完全ガイド|ICD-11ゲーム症・OLGA・家族会・専門治療機関

「中学生の息子が、朝までゲームをやめられない」
「在宅勤務になってから、仕事の合間のスマホが止まらない」
「ガチャに月10万円使い、消費者金融に手を出してしまった」

ゲームやインターネットは、いまや生活インフラに近い存在になりました。仕事・学習・友人関係・趣味——その多くがオンラインで完結する時代に、「ハマる」と「依存する」の境界はますます見えにくくなっています。

そんな状況のなか、2019年5月にWHO(世界保健機関)はICD-11(国際疾病分類 第11版)で「Gaming Disorder(ゲーム症/ゲーム障害)」を正式な疾病として採用し、2022年1月に発効しました。日本でも厚生労働省・久里浜医療センターなどが治療・研究を進め、当事者・家族をつなぐ自助グループが少しずつ立ち上がっています。

この記事では、「ゲーム症って結局なに?」という基本から、当事者と家族が回復に向けて頼れる自助グループ・家族会・専門医療機関までを、公的資料と一次情報に基づいてまとめました。ゲームを敵視するための記事ではありません。「健康的な楽しみ」と「依存」の境界を見極め、必要なときに必要な仲間につながるための地図として読んでいただければ幸いです。

📌 この記事でわかること

  • 2019年WHOがICD-11で正式採用し、2022年1月に発効した「Gaming Disorder(ゲーム症)」の診断基準4要素
  • 日本のネット・ゲーム依存の有病率推計と、中高生・社会人それぞれの広がり方
  • AA(アルコホーリクス・アノニマス)の12ステップを応用したOLGA(Online Gamers Anonymous)など主要な自助グループ5つ
  • 日本でゲーム・ネット依存治療の先駆けである久里浜医療センターと、全国の依存症治療拠点
  • 家族の自助グループ・親の会と、共依存を防ぐ「親ができること/できないこと」
  • 子ども・若者の不登校・引きこもりとゲーム依存の関連、ガチャ課金・オンラインカジノとの重複問題まで

ゲーム症・ネット依存の現状|ICD-11以後の世界

まずは、いま日本と世界で「ゲーム・ネット依存」がどう位置づけられているか、数字と国際的枠組みで整理します。

項目 内容 出典・年
ICD-11での疾病採用 WHOが「Gaming Disorder(6C51)」を正式採用 2019年5月採択/2022年1月発効
DSM-5での位置づけ 「Internet Gaming Disorder」を今後の研究のための病態として記載 米国精神医学会/2013年〜
中高生のネット依存推計 約93万人(中高生の約14%)がネット依存傾向 厚労省研究班/2017年度推計
成人のネット・ゲーム依存推計 成人の数%程度に依存傾向が見られるとする調査が複数 各種研究・年度差あり
治療拠点の整備 久里浜医療センターを先駆けに、全国に専門外来が拡大中 厚労省/2024年時点
家庭での平均ゲーム時間 中高生の平均1日あたり2〜3時間台、上位層で5時間超 各種調査/年度差あり

なお、上記の数字は調査主体・年度・対象によって幅があります。「ゲームをする時間が長い=依存」ではない点はとくに注意が必要です。後述する診断基準のとおり、時間の長さよりも、生活機能の障害が継続しているかどうかが判断の核になります。

出典:WHO「ICD-11 Mortality and Morbidity Statistics(6C51 Gaming disorder)」/米国精神医学会「DSM-5」/厚生労働省研究班報告/独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター 公開資料

ゲーム症の診断基準|ICD-11が示す4要素

ICD-11におけるGaming Disorder(6C51)は、ゲーム(オンライン/オフライン問わず)が以下のような状態に達したものを指します。「ハマっている」ではなく、生活が壊れているかどうかが問われます。

  • ① コントロールの喪失——ゲームの開始・頻度・時間・場面・継続をコントロールできない(やめようと思ってもやめられない)
  • ② 優先順位の逆転——ゲームが他の生活上の関心や日常活動よりも優先される(学業・仕事・睡眠・食事・人間関係を犠牲にしてもゲームを選ぶ)
  • ③ 問題が起きてもやめられない——明らかなネガティブな結果(成績低下・解雇・関係破綻・健康被害)が生じても、ゲームを継続する/さらに優先する
  • ④ 12か月以上の継続——上記のパターンが個人・家族・社会・教育・職業など重要な機能領域に著しい障害を引き起こすほど深刻で、通常少なくとも12か月以上継続している(重症の場合は短期間でも診断可能)

⚠️ 「長時間ゲームをする=ゲーム症」ではない

よくある誤解ですが、長時間プレイしているだけで診断されるわけではありません。プロゲーマー・eスポーツ選手・ゲームクリエイターは、職業として長時間ゲームに関わっていても、生活機能が保たれていれば「ゲーム症」とは呼びません。鍵は「やめようと思ってもやめられず、生活が壊れている」状態が一定期間続いているかどうかです。

なぜ自助グループが有効なのか|AAの枠組みを応用する理由

アルコール・薬物・ギャンブルなど、他の依存症で長年にわたり「最も再発を防ぐ手段」とされてきたのが自助グループです。ゲーム症・ネット依存にもこの枠組みがほぼそのまま応用できる理由は、依存のメカニズムが共通しているからです。

依存症の脳科学的な共通点

アルコール・薬物・ギャンブル・ゲームに共通するのは、脳の報酬系(ドーパミン神経系)が繰り返し強く刺激されることで、コントロール能力が低下するという点です。物質依存(アルコール・薬物)と行動嗜癖(ギャンブル・ゲーム)は別カテゴリーですが、脳の変化と「やめられない苦しみ」の構造は似通っています。

自助グループに共通する4つの力

  • 同じ苦しみを経験した仲間がいる——「自分だけじゃなかった」と知ることで孤立感が解け、回復への希望が生まれます
  • 匿名性と守秘の文化——本名を出さず、肩書も問わない場。職場・学校で言えないことを安心して話せます
  • 12ステップなどの構造化されたプログラム——「気合いで治す」ではなく、回復への手順が言語化されています
  • ヘルパーセラピー効果——回復した先輩が新しい仲間を支えることで、自分の回復も深まる相互作用が働きます

自助グループの効果や仕組みの基礎は、自助グループとピアサポート完全ガイドと、ヘルパーセラピー効果の解説に詳しくまとめています。あわせてお読みください。

主な自助グループ・家族会5つ|回復を支える場の地図

ゲーム症・ネット依存の自助グループは、アルコール・ギャンブル分野と比べると歴史が浅いものの、国際的・国内的に少しずつ拠点が増えています。代表的な5つを紹介します。

🎮

① OLGA(Online Gamers Anonymous)

2002年に米国で設立された国際的な自助グループ。AAの12ステップをゲーム依存に応用し、英語圏を中心にオンラインミーティングを開催。日本からも時差を踏まえて参加できる回がある

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② 久里浜医療センター系の当事者ミーティング

ネット・ゲーム依存治療の先駆的拠点である久里浜医療センターでは、入院・外来プログラムの一環として当事者ミーティング・家族会・親子合同プログラムが運営されている

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③ 不登校・引きこもり家族会の派生グループ

全国の不登校・引きこもり家族会のなかで、ゲーム依存を主訴とする家族のサブグループが立ち上がっている地域がある。子のゲーム依存に悩む親が、同じ立場の家族とつながれる

💻

④ オンラインリカバリーコミュニティ

SNS・Discord・専用掲示板で運営される、当事者主体の匿名コミュニティ。Game Quitters(英語圏)など海外発の枠組みに日本人参加者が増えており、地理的制約なく毎日アクセスできる利点がある

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⑤ 親の会・家族の自助グループ

中高生・若年成人のゲーム依存に悩む親が中心となる家族会。各自治体の精神保健福祉センターや民間支援団体が事務局となり、月1回前後で開催。共依存を防ぐ学びの場としても機能する

出典:Online Gamers Anonymous 公式情報/独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター 公開資料/各都道府県 精神保健福祉センター 公開情報

12ステップ的アプローチをゲーム依存に応用する|3つの工夫

AA(アルコホーリクス・アノニマス)の12ステップは、世界の依存症回復プログラムの土台です。ゲーム依存・ネット依存にも応用できますが、「物質を完全にやめる」アルコール・薬物との大きな違いから、いくつかの工夫が必要になります。

工夫① 「完全断ゲーム」と「節度ある利用」の選択

アルコール・薬物は「断酒・断薬」が回復の基本ですが、ゲームの場合、仕事・学習・社交がオンライン上に組み込まれているため完全に断つことが現実的でないケースもあります。当事者ごとに「完全に絶つ(断ゲーム)」を選ぶか、「節度ある利用に戻す」を選ぶかを、医療スタッフ・仲間と相談しながら決めるのが現実的です。

工夫② 「無力さの認識」をゲームに翻訳する

12ステップの第1ステップは「自分の力ではどうにもならないと認める」こと。ゲーム依存の場合は、「自分の意思の力だけでは時間や課金をコントロールできなくなっていた」と認めるところからスタートします。これは敗北ではなく、回復の出発点としての宣言です。

工夫③ デジタルな引き金(トリガー)への対処

アルコール・薬物の引き金は飲食店・特定の場所・人間関係が中心ですが、ゲーム依存の引き金はスマホ・PC・SNSの通知・友人からのチャットなど、生活のあらゆる瞬間に紛れ込んでいます。回復段階では、デバイス設定・利用時間制限アプリ・寝室にスマホを持ち込まないなど、環境調整が極めて重要になります。

自助グループへの参加5ステップ|最初の一歩

「参加してみたいけれど、何から始めればいいか分からない」という方のために、ゼロからの手順を5つに整理しました。多くの方が1〜2週間以内に「最初のミーティング」にたどり着けます。

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    ① 自分・家族のどちらが対象かを整理する

    当事者本人なら「OLGA」や「オンラインリカバリーコミュニティ」、家族なら「親の会」「家族の自助グループ」が入り口です。中高生の本人参加が難しい場合、まず親が家族会に通うところから始めるケースが多数派です。

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    ② お住まいの精神保健福祉センターに電話

    各都道府県・政令市にある精神保健福祉センターは、地域の自助グループや家族会の情報を持つ最初の相談窓口です。匿名の電話相談が可能で、依存症支援拠点機関を兼ねている自治体も多くあります。

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    ③ オンラインミーティングを「見学」してみる

    いきなり対面は怖い、という方は、カメラオフ・音声オフ・名前匿名でオンラインミーティングを見学するところから始められます。OLGAやオンラインコミュニティでは見学歓迎の運用が一般的です。

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    ④ 必要に応じて専門医療機関を受診

    睡眠障害・うつ・自傷・家庭内暴力など、依存以外の症状が重なっている場合は、自助グループと並行して医療機関の受診を検討します。久里浜医療センターをはじめ、各地に専門外来が広がっています。

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    ⑤ 月1回以上の継続参加を目指す

    自助グループは「1回行けば回復」ではなく、継続して通うことで効果が現れる仕組みです。月1〜2回のペースで半年続けると、仲間の名前と顔がわかり、自分の話もできるようになります。焦らず、続けることが何よりの力になります。

専門医療機関|久里浜医療センターと全国の依存症治療拠点

🏥 久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)

独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターは、日本におけるネット・ゲーム依存治療の先駆的医療機関です。2011年に日本初のネット依存治療外来を開設し、現在は外来診療・入院プログラム(10代向け/成人向け)・親子合同プログラム・家族プログラムを展開しています。ICD-11への提言や全国の治療ガイドライン整備にも中心的な役割を担ってきました。

全国の依存症治療拠点

厚生労働省は「依存症対策総合支援事業」のもと、各都道府県・政令市に依存症治療拠点機関・専門医療機関を整備しています。アルコール・薬物・ギャンブルが中心ですが、近年はネット・ゲーム依存に対応する医療機関も増えました。代表的な拠点として、肥前精神医療センター(佐賀)・成増厚生病院(東京)・新阿武山病院(大阪)などが知られています。

自助グループと医療機関の使い分け

  • 自助グループ——同じ仲間と回復を歩む場。費用は基本無料(カンパ制)。診断・処方はしない
  • 専門医療機関——医学的診断・治療・薬物療法(合併症がある場合)・入院プログラム・診断書発行
  • 精神保健福祉センター——行政の相談窓口。地域資源の紹介・家族相談・自助グループ立ち上げ支援
  • スクールカウンセラー・産業保健スタッフ——学校・職場で「気づき」が起きる現場の最前線

多くの当事者は、これらを同時並行で活用します。「自助グループだけ」「医療だけ」ではなく、複数の支援を重ねることが回復を確かなものにします。

家族の自助グループと共依存ケア|「親の回復」が子の回復を支える

ゲーム症・ネット依存の現場で、もっとも忘れられがちなのが「家族自身のケア」です。とくに中高生・若年成人の依存に直面する親は、24時間の見張り役を強いられ、不安・怒り・自責で消耗していきます。

「共依存」というワナ

依存症の家族にしばしば見られるのが、「共依存」と呼ばれる関係パターンです。本人を心配するあまり、本人がやるべきこと(食事・睡眠・登校・退学手続き)まで親が肩代わりし、結果的に本人の「失敗からの学び」を奪ってしまう状態を指します。共依存は親の善意から生まれる現象であり、責められるべきものではありません。気づき、距離を取り直すことが回復の道です。

家族会・親の会で得られるもの

  • 「自分だけじゃない」と知る安心感——同じ局面を経験した親の存在は何よりの支えになります
  • 「正解探し」をやめる勇気——「こうすれば必ず治る」という方法は存在しないと知ることで、肩の力が抜けます
  • 専門家の知見の翻訳——医療・福祉・教育の専門用語を、生活レベルの言葉で噛み砕いて学べます
  • 長期戦への覚悟——依存からの回復は数か月〜数年単位という現実を共有することで、短期決戦の焦りから解放されます
  • 自分自身の回復——親自身が眠れる・食べられる・笑えるようになって初めて、本人の回復を支えられます

家族会の全体像と運営の基本は、精神疾患の家族会完全ガイドと、より幅広いピアサポート完全ガイドに整理しています。

子ども・若者のゲーム依存特有の事情|不登校・引きこもりとの関連

中高生・若年成人のゲーム依存は、成人の依存とは別の難しさがあります。とくに不登校・引きこもりとセットで現れることが多いため、原因と結果を見極めながら関わる必要があります。

「不登校になったからゲームに依存した」のか「ゲームに依存したから不登校になった」のか

現場では、この順序を判断するのが難しいケースが多くあります。学校での人間関係・学習のつまずき・発達特性などが先にあり、避難先としてゲームが機能している場合と、ゲームへの没頭が先にあり、生活リズムが崩れて不登校に至る場合とでは、必要な支援が変わります。
前者の場合、ゲームを取り上げるだけでは根本問題が残り、別の症状(自傷・抑うつ・依存対象の置き換え)が出る可能性があります。後者の場合は、生活リズムと家族関係の立て直しが優先課題になります。「何が苦しくてゲームに逃げているのか」を本人と一緒に探る姿勢が、どちらの場合でも基本です。

不登校支援とゲーム依存支援は重なる

不登校・引きこもりの家族支援とゲーム依存の家族支援には、共通する原則がたくさんあります。「本人を急かさない」「ゲームを取り上げない」「親自身が支援につながる」——これらは、不登校支援の現場で長く培われた知恵です。詳しくは不登校の親の会・ピアサポート完全ガイドもあわせてご覧ください。

親ができること/できないこと|境界線を持つために

子のゲーム依存に直面した親が、何より迷うのが「どこまで親が関わるべきか」という境界線です。現場で長く効果が確認されている指針を、できる/できないの両面で整理します。

  • 親ができること①——本人を待つ。「治してあげる」ではなく「いつでも戻れる場を保つ」姿勢に立つ
  • 親ができること②——自分の生活と健康を守る。眠る・食べる・笑う時間を確保する
  • 親ができること③——家族会・親の会・精神保健福祉センターに自分自身がつながる
  • 親ができること④——必要な制度(就学・退学・診断・年金・障害福祉サービス)の情報を集める
  • 親ができること⑤——本人が「相談したい」と言ったときの行き先(医療機関・自助グループ)をリスト化しておく
  • 親にはできないこと①——本人の代わりにゲームをやめる決断をする
  • 親にはできないこと②——24時間の見張りで本人の行動を制御する(短期的に押さえても再発する)
  • 親にはできないこと③——金銭問題を本人の代わりに無限に肩代わりする(共依存の典型パターン)
  • 親にはできないこと④——医療・心理・福祉の専門家の役割を兼任する
  • 親にはできないこと⑤——本人の人生の主人公として代わりに生きる

「親にできないこと」を認めることは、敗北でも放置でもありません。本人を信じて待ち、専門家と仲間に支援を任せる——それが長期戦における親の最大の役割です。

体験談|3人のリカバリーの物語

💬 高校2年で不登校→入院プログラムを経て自助グループに(17歳・男性)

「中3の終わりからオンラインゲームに毎日12時間。高1の二学期から学校に行けなくなり、昼夜逆転。親が病院を探してくれて、夏休みに専門病院の入院プログラムへ。同じ年代の仲間と過ごす2か月で、初めて『自分だけじゃない』と思えた。退院後はオンラインミーティングに月2回参加。完全に断つのではなく、時間を決めて遊ぶスタイルに落ち着いています」(120字)

💬 在宅勤務×ガチャ課金で借金、SNSで仲間を見つけた(32歳・男性)

「コロナで在宅勤務になり、仕事の合間のスマホゲームが止まらなくなりました。ガチャで半年で200万円を超え、消費者金融に手を出して妻にバレた瞬間に、何かが切れました。地域のギャンブル依存自助グループの紹介で、Discordベースのオンラインリカバリーコミュニティに参加。匿名で毎晩誰かが話していて、『自分だけじゃない』と知れたことが救いでした」(130字)

💬 中2の息子のゲーム依存で、私のほうが先に倒れた(48歳・母)

「息子が中1の冬から朝までゲームを続けるようになり、私は毎晩眠れず、3か月で7kg痩せました。スクールカウンセラーに『お母さんが先に倒れます』と言われて家族会へ。最初は『私のことより息子を』と思っていましたが、半年通うなかで、私自身が眠れて笑えるようになりました。息子はまだ完全には回復していませんが、家の空気は確実に変わりました」(140字)

オンラインカジノ・ガチャ課金との重複問題|ゲーム依存と賭博依存の境界

近年、ゲーム症の議論で特に重要になっているのが、「ガチャ課金」「オンラインカジノ」「賭博的要素を含むゲーム」との重複領域です。

ガチャ課金が「ゲーム依存」と「ギャンブル依存」の境界に立つ理由

スマートフォンゲームに広く実装されている「ガチャ」(ランダム報酬システム)は、希少アイテムを引く確率がランダムで、本質的には賭博と同じ報酬構造を持ちます。海外(ベルギー・オランダ等)では一部のルートボックス(ガチャ類似機能)が賭博法の対象とされた事例もあり、国際的にも議論が続いています。
日本国内では、消費者庁・関係省庁が「ガチャ」の表示・確率公開などに関するガイドラインを整備していますが、未成年の高額課金トラブルは依然多く発生しています。

オンラインカジノは「日本国内では違法」

オンラインカジノ(海外サーバー型)は、日本国内からアクセスして賭けた場合、賭博罪(刑法185条/賭博開帳図利罪等)の対象になり得ます。「海外で運営されているから合法」という認識は誤りで、警察庁・消費者庁も繰り返し注意喚起をしています。
オンラインカジノ依存の自助グループとしては、GA(ギャンブラーズ・アノニマス)がそのまま枠組みを提供しています。詳しくはGA(ギャンブラーズ・アノニマス)完全ガイドをご覧ください。

デジタルデトックスとリカバリーの違い|健康増進と治療は別物

SNSや雑誌で見かける「デジタルデトックス」と、依存症からの「リカバリー」は、よく混同されますが、目的も方法もまったく違います。両者を整理しておきましょう。

項目 デジタルデトックス 依存症のリカバリー
対象者 健康な人の生活改善 依存症の診断・該当者
目的 休息・集中力回復・睡眠改善 生活機能の回復・再発予防
期間 数日〜数週間の短期 数か月〜数年の長期
担い手 本人の意思・健康増進サービス 医療機関・自助グループ・家族
失敗時 「また今度」で済む 再発として丁寧にフォロー

つまり、デジタルデトックスは健康な人がさらに健やかになるためのライフスタイル、リカバリーはすでに生活が壊れた人を立て直すための治療的取り組みです。「デトックスで治る」と過信せず、診断レベルに達している場合は専門機関につながることが大切です。

よくある質問|ゲーム依存・ネット依存Q&A 10問

Q1. 子どもが1日4時間ゲームをしているのは「依存」ですか?

時間の長さだけでは判断できません。ICD-11の診断基準は、コントロールの喪失・優先順位の逆転・問題が起きてもやめられない・12か月以上の継続の4要素で構成されます。学校に通えていて、睡眠・食事・人間関係も保たれているなら、長時間プレイ=依存ではありません。逆に、時間が短くても生活機能が崩れているなら専門家への相談を検討します。

Q2. ゲーム機を取り上げれば治りますか?

多くの場合、取り上げるだけでは治らず、家族関係の悪化・別の依存対象への置き換え・自傷・暴力など二次的な問題を引き起こすことがあります。「なぜゲームに逃げているのか」を本人と一緒に探る姿勢と、家族自身が支援につながることが先決です。物理的な制限が必要な場合も、医療スタッフ・自助グループ・親の会と相談しながら段階的に行うのが安全です。

Q3. プロゲーマーやeスポーツ選手はみんなゲーム症なのですか?

いいえ、職業としてゲームに関わっていても、生活機能が保たれていれば「ゲーム症」とは呼びません。WHOも、競技・職業としてのゲームと、病的ゲーム症は明確に分けています。重要なのは時間ではなく、「やめようと思ってもやめられず、生活が壊れているか」です。

Q4. OLGAなど海外の自助グループに、英語が苦手でも参加できますか?

英語に自信がない場合は、まず日本語で運営されている自助グループ・家族会・オンラインコミュニティから入るのが現実的です。日本国内の依存症拠点機関や精神保健福祉センターに問い合わせると、地域・オンラインの日本語ミーティング情報を案内してくれます。英語が苦手でもいずれ国際ミーティングに参加したい方は、まず日本語の会で基本的な12ステップの言葉に慣れるとスムーズです。

Q5. 自助グループだけで治せますか?医療機関は必要?

ケースによります。生活機能の障害が軽度で、本人に自助グループへ通う意欲がある場合は、自助グループ中心でも回復するケースがあります。一方、睡眠障害・うつ・自傷・家庭内暴力など合併症がある場合や、本人の苦しみが大きい場合は、医療機関の受診を並行することで回復が早まり、安全性も高まります。判断に迷う場合は精神保健福祉センターに相談を。

Q6. ガチャに月20万円を使っています。これはゲーム依存?ギャンブル依存?

両者の境界領域にあたり、診断は専門家による評価が必要です。ガチャはランダム報酬構造を持つため、賭博依存(ギャンブル症)の枠組みで捉えるほうが回復にしっくりくる方も多くいます。自助グループとしてはGA(ギャンブラーズ・アノニマス)が選択肢に入ります。詳しくはGA完全ガイドを参照してください。

Q7. オンラインカジノは「海外サイトだから日本では合法」と聞きました。本当ですか?

誤った認識です。日本国内からオンラインカジノで賭けた場合、運営が海外であっても日本の賭博罪の対象になり得ると警察庁・消費者庁は繰り返し注意喚起しています。SNS広告・芸能人のPRなどで誤解が広がっていますが、ご自身と家族を守るためにも正確な情報を確認してください。

Q8. 不登校とゲーム依存の境目が分かりません。どう考えればいいですか?

どちらが原因でどちらが結果かは、現場でも判断が難しいケースが多くあります。重要なのは、「ゲームを止めれば学校に行ける」と単純化しないこと、そして本人の苦しみの背景に何があるかを丁寧に見ていくことです。スクールカウンセラー・教育相談・不登校の親の会と、ゲーム依存の家族会を並行して活用するのが現実的です。

Q9. 大人の自分が「ネット依存かもしれない」と思ったら、どこから始めればいいですか?

まずは自分の使用時間と影響を1〜2週間記録してみてください。仕事・睡眠・人間関係に明らかな支障が出ているなら、最寄りの精神保健福祉センターまたは依存症専門外来へ。気軽な相談先としては、職場の産業医・産業保健スタッフ、地域のメンタル系自助グループも有効です。当事者会・オンラインコミュニティへの匿名参加から入る方も増えています。

Q10. ゲーム症の治療には保険が使えますか?費用はどのくらい?

ICD-11正式採用後、専門医療機関での診療は健康保険の対象となるケースが広がっています(実際の運用は医療機関・自治体により差あり)。自助グループは原則無料(カンパ制)です。入院プログラムは食費・差額ベッド代等の自己負担があり、所得に応じた高額療養費制度の対象になります。費用面の不安は、医療ソーシャルワーカーや精神保健福祉センターに早めに相談すると安心です。

あわせて読みたい|次の一歩のヒント

参照元:WHO「ICD-11 Mortality and Morbidity Statistics(6C51 Gaming disorder)」(2019年5月採択/2022年1月発効)/米国精神医学会「DSM-5」(2013年〜)/独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター 公開資料/厚生労働省「依存症対策総合支援事業」公開情報/厚生労働省研究班「飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究」関連報告(中高生ネット依存推計)/Online Gamers Anonymous 公式情報/各都道府県 精神保健福祉センター 公開情報/警察庁・消費者庁 注意喚起情報(オンラインカジノ関連)を参照(いずれも2026年5月時点。有病率・推計値は調査主体・年度・対象により差があります)

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