結城の日記『ごめんなさい』

「それじゃあ、このコップを落としてみて。お、綺麗に割れたね。君は、コップが割れてどう思う?」

「では、君の家に行って、コップやお皿を全部落としてみようか。君は、コップが割れて楽しかったんだよね。なら、君の家のもので一緒に楽しもうよ。」

「では、この落としたコップにごめんなさいをしてみて。よし、よくできたね。でも、コップは割れたままだね。許してもらえたのかな?僕には、許してもらえてないように見えるな。僕は、明日から熱々のココアを手で飲まないといけない。これじゃ、僕は火傷をしちゃう。でも、君が割ったから、君が僕を病院へ連れていってくれるんだよね?」

「あのね、傷つけた後に謝っても、それはもう壊れたあとかもしれないんだ。だから、コップは元には戻らない。人間の心も、壊れたらどうなっちゃうかわからないし、この割れたコップのように二度と元に戻らないかもしれない。もちろん、絶対に傷を付けないことの方が難しいから、この先も僕たちは人を傷つけて生きることになる。でも、覚えておいて。君が、かみさまに傷つけられたことがないように、僕らが誰かやなにかを進んで傷つけちゃいけない。元には戻せないから。ごめんなさいをして、許して貰えたとしても、それは言葉だけかもしれない。心のコップは、割れたままかもよ」

ログインするとこの日記をフォローして応援できます

keyboard_arrow_up