就労継続支援A型の大量閉鎖(2024年問題)|原因・現状・利用者ができる対策

就労継続支援A型の大量閉鎖(2024年問題)|原因・現状・利用者ができる対策

📌 この記事でわかること

  • 2024年に起きた329事業所・約5,000人のA型大量閉鎖の全体像(数字と時系列)
  • 「うちの事業所、大丈夫かな?」を確かめる危険信号チェックリスト6項目
  • もし通所先が閉鎖されたら:3つの選択肢のメリット・デメリット比較
  • 転所先のA型を探すときに必ず見るべきリスク回避の7ポイント
  • 失職した場合に使える雇用保険・職業訓練・自治体の救済制度
  • これからA型を検討する人が今やるべき「事前確認の3ステップ」
  • 支援員視点で見えた「2024年問題で実際に起きたこと」のリアル

「うちの事業所、最近スタッフがバタバタしている気がする。もしかして閉鎖される?」
「ニュースで5,000人解雇って見たけれど、自分の通っているA型は大丈夫?」
「これからA型を申し込もうとしているけれど、リスクが気になる」

2024年に全国で起きた就労継続支援A型事業所の大量閉鎖は、利用者・家族・支援関係者にとって「他人事ではない」事件でした。共同通信の全国自治体調査などの報道によれば、2024年3〜7月のわずか5か月間で329事業所が閉鎖し、約5,000人の障害のある方が解雇・退職を経験しています。

この記事は、報酬改定の細かい仕組みや経営難の構造を解説するものではありません。「利用者として、いま何ができるか」に絞って、危険信号の見分け方・万が一閉鎖されたときの選択肢・救済制度・支援員視点のリアルな話をまとめました。なお、報酬改定そのものや事業所経営の構造については別記事に詳しく譲り、本記事では利用者の視点に集中します。

2024年問題とは何が起きたのか|数字で見る全体像

まず、報道や厚生労働省の公表資料で確認できる「数字」を時系列で整理しておきましょう。「自分の知っているA型業界で、いったい何が起きたのか」を冷静に把握することが、これからの判断の出発点になります。

項目数値・内容
全国のA型事業所数(2024年3月時点) 3,922か所
2024年3〜7月に閉鎖した事業所数(A型・B型合算/報道ベース) 全国 329事業所
同期間に解雇・退職した利用者数(報道ベース) 5,000人
うちB型事業所へ転換・移行した割合 4割
令和6年度報酬改定の施行時期 2024年4月(処遇改善加算一本化/A型のスコア方式見直し 等)
A型の平均賃金月額(令和5年度) 86,752円

出典:厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」(mhlw.go.jp)/「平均工賃(賃金)月額の実績について」(mhlw.go.jp)/「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(mhlw.go.jp)/閉鎖事業所数・解雇者数は共同通信2024年9〜10月配信の報道、福祉新聞・障害者ドットコム等の報道を参照

時系列:報酬改定告示から閉鎖の連鎖まで

2024年問題は、ある日突然起きたわけではありません。前年からの制度変更の動きが、利用者の身近な事業所閉鎖という形で表面化したものです。報道ベースでまとめると、おおむね次のような流れでした。

  1. 1

    2024年2月:令和6年度報酬改定の内容が告示

    A型の基本報酬を決める「スコア方式」の評価項目が大幅に見直され、特に「労働時間」「生産活動」の重みが増したことが事業者間で話題になりました。

  2. 2

    2024年4月:報酬改定の施行

    生産活動収益で利用者賃金を支払えていない事業所は、新しいスコアで報酬が下がる仕組みに。多くの事業所で経営計画の見直しを迫られました。

  3. 3

    2024年春〜夏:閉鎖の連鎖が顕在化

    3月から7月にかけて全国で閉鎖が相次ぎ、共同通信の自治体アンケートで329事業所・約5,000人解雇という規模が明らかに。地方から大都市まで広く影響が及びました。

  4. 4

    2024年秋:国会で取り上げられ、厚労省が対応

    解雇者の再就職支援や、B型・他のA型への移行支援が課題に。厚労省はハローワークと連携した雇用継続支援を打ち出しました。

  5. 5

    2025〜2026年:選別の時代へ

    2025年10月には新たに「就労選択支援」が施行。利用者が自分に合うサービスを選びやすくなる制度が整いつつある一方、A型を取り巻く「経営の安定性が問われる」環境は2026年も続いています。

💡 「全A型がダメになった」わけではない

329事業所の閉鎖は、業界全体(約3,922か所)の1割弱にあたります。大きな数字ですが裏を返せば約9割の事業所は引き続き運営しているということ。報道の数字に過剰反応せず、「自分の通う事業所が大丈夫か」「これから選ぶならどう見極めるか」という具体的な視点で読み進めてください。

なぜ起きたのか:要点だけ簡潔に

閉鎖の理由を一言でいうと、「生産活動の利益で利用者の賃金を支払えていない事業所」が、報酬改定でふるいにかけられたからです。

A型は本来、雇用契約を結んで利用者に最低賃金以上の給与を支払う仕組みです。その給与の原資は、事業所が請け負う仕事(生産活動)の売上でまかなうのが原則。ところが従来は、生産活動の売上が赤字でも、国からの給付金(自立支援給付)で賃金を補填している事業所が一定数ありました。「あしきA型」と呼ばれることもあったこうした構造を是正するため、2024年4月の報酬改定でスコア方式の評価が厳格化され、生産活動収益や労働時間がより重く評価される形に変わりました。

🙋 報酬改定や経営難の構造をもっと知りたい方へ

この記事はあえて「利用者の対策」に絞った構成です。報酬改定そのものの仕組み(スコア配点・加算の変更点)、経営難に陥る事業所の構造分析・診断軸については、以下の関連記事にそれぞれ詳しくまとめています。

影響を受けた利用者のリアル|失職・収入激減・心理的影響

数字の裏には、5,000人分の生活と人生の現実があります。報道や支援現場で語られた声をもとに、利用者がどのような影響を受けたのかを整理します。

① 突然の失職と「数週間後の閉鎖」通告

多くの閉鎖事業所では、利用者に対して1〜2か月前、なかには数週間前に「事業所を閉めることになりました」と伝えられたケースが報じられました。雇用契約を結んでいる以上、本来は労働基準法に基づく解雇予告(30日前まで)や予告手当の対象です。しかし、突然の通告で気持ちの整理がつかないまま次の道を考えざるを得なかった人も少なくありません。

② 月収約8〜10万円の喪失とその意味

A型の平均賃金月額は86,752円(令和5年度)。これに障害年金や家族の支援を組み合わせて生活設計をしていた方にとって、A型からの収入が途絶えることの影響は決して小さくありません。とくに、一人暮らし・グループホーム入居中・親元を離れて自立準備中という方は、家賃や食費の見直しを急いで考える必要に迫られました。

③ B型へ転換した場合の収入差

報道では閉鎖A型の利用者の約4割がB型へ転換したとされています。B型は雇用契約のない働き方で、得られるのは「工賃」。令和5年度の全国平均工賃月額は22,649円と、A型給与とは大きな差があります(※令和6年度報酬改定で計算方法が変更されたため、旧来比で大幅増となった水準です)。

項目A型(閉鎖前)B型(転換後)
契約形態雇用契約あり雇用契約なし
金銭の名称給与(最低賃金以上)工賃
月額の目安約86,752円約22,649円
社会保険・雇用保険条件を満たせば加入原則対象外
労働基準法の適用ありなし

出典:厚生労働省「平均工賃(賃金)月額の実績について」(令和5年度実績)(mhlw.go.jp

④ 心理面・体調面への影響

精神障害・発達障害のある方にとって、「慣れた環境が突然変わる」ことは想像以上のストレスです。閉鎖前後で体調を崩し、しばらく在宅療養に戻った方、転所先がなかなか決まらずに家にこもる時間が増えた方など、目に見えにくい影響も多く報告されています。「働く場所が一つなくなる」だけでなく、「居場所と人間関係を一気に失う」という側面が見過ごせません。

「いま通っているA型」が危ない?危険信号チェックリスト

ここからが、もっとも実用的なパートです。「自分の通うA型は大丈夫か」を確かめるために、現場でよく語られる危険信号をチェックリストにまとめました。当てはまる項目が多いほど注意が必要、と捉えてください。あくまで一般的傾向であり、必ずしも閉鎖を意味するものではありませんが、面談で確認したり情報を集める際の参考にしてください。

A型 危険信号チェックリスト6項目

  • ① 利用者数が半年で目に見えて減った:朝の出席が以前より明らかに少ない/空席が目立つようになった
  • ② 生産活動(仕事の量)が縮小している:以前あった仕事が打ち切りに/「今日は作業がない」が増えた
  • ③ スコア方式の評価が公表されない:「経営状況の説明」をお願いしても曖昧な回答しか返ってこない
  • ④ 役職員の入れ替わりが激しい:管理者・サービス管理責任者・支援員が短期間で交替している
  • ⑤ 給与の遅配・端数処理の不審がある:給与日が遅れる/時給計算の根拠を聞いても明確な答えがない
  • ⑥ 経営母体や法人名の変更があった:突然オーナー会社が変わる/吸収合併・事業譲渡が発生した

⚠️ 「不安なら直接質問する」のが最も確実

面談や個別相談の機会で、「最近の経営状況はどうですか?」「今後1年の運営方針を教えてもらえますか?」と率直に聞いてみてよいのです。雇用契約を結ぶ労働者として、職場の継続性を確認するのはまっとうな権利です。説明を嫌がる事業所は、それ自体が一つのサインかもしれません。

客観データはWAMNETで誰でも確認できる

主観的な印象だけでなく、WAMNET(独立行政法人福祉医療機構の情報公表システム)で事業所の情報公表データを誰でも閲覧できます。A型の場合、特に注目すべきは「就労継続支援A型のスコア」。基本報酬の算定根拠となる項目で、スコア105点以上が目安、120点以上であれば比較的安定していると言われています。WAMNETサイトで事業所名を検索するだけで確認できるので、判断材料の一つに加えましょう。

万が一閉鎖されたら:3つの選択肢を比較

通っているA型が閉鎖されることになったとしても、選べる道は一つではありません。大きく分けると「B型へ転換」「別のA型へ転所」「一般就労へチャレンジ」の3パターンが考えられます。それぞれのメリット・デメリットを整理しましょう。

選択肢① B型事業所へ転換する

✅ メリット

  • 雇用契約のプレッシャーがなく、体調優先で通える
  • 週1〜2日・1日2時間〜と短時間から始められる事業所が多い
  • 地域に事業所が多く、通いやすい場所を選びやすい
  • 同じ法人がB型を運営している場合、転所先がスムーズ

⚠️ デメリット

  • 収入が大きく減る(A型約8.7万円 → B型約2.3万円が全国平均)
  • 労働基準法の適用がなくなり、有給・社会保険等は対象外
  • 「給与で生活設計していた」場合は資金計画の見直しが必須
  • 「働く」感覚から「通所する」感覚への気持ちの切り替えが必要

選択肢② 別のA型へ転所する

✅ メリット

  • 給与水準を維持できる可能性が高い
  • 雇用契約・社会保険・有給休暇の権利が継続する
  • 同じ職種・スキルを活かせる事業所を探せる
  • 仕事をしながら一般就労を目指す道も残せる

⚠️ デメリット

  • 地域によってはA型事業所自体が少なく、選択肢が限られる
  • 2024年問題以降は転所希望者が増え、空き枠が見つかりにくいことも
  • 新しい事業所を「再びリスク評価」する手間がかかる
  • 慣れた職場・人間関係を失うストレスは避けられない

選択肢③ 一般就労(障害者雇用・オープン就労)へ進む

✅ メリット

  • 収入アップが期待できる(フルタイムなら月15〜20万円も)
  • キャリアの選択肢が広がる
  • 就労定着支援を併用すれば職場での悩みもサポートを受けられる
  • 体調が安定している方には自然なステップアップになる

⚠️ デメリット

  • 体調が不安定なまま挑戦すると、再び休職・離職のリスクがある
  • 応募・面接・採用までに時間がかかり、その間の収入が空白に
  • 福祉的な配慮の手厚さは事業所より弱くなる
  • 就労移行支援を一度はさんでスキル準備するほうが安全な場合も

💡 「正解」は人によって違う

3つのうちどれが最適かは、体調・年齢・家族の支援・経済状況・本人の希望で大きく変わります。閉鎖が決まった時点で、相談支援専門員・市区町村の障害福祉窓口・地域障害者職業センター・障害者就業生活支援センター(ナカポツ)と早めに話し合い、複数のシナリオを並行検討するのがおすすめです。

転所先のA型を探すときのリスク回避ポイント7選

「もう一度A型で働きたい」という方は、過去の経験を活かしてより慎重に事業所を選ぶことが重要です。閉鎖を経験したからこそできる「2回目だから外せない確認項目」を7つ挙げます。

  1. 1

    WAMNETでスコアと運営年数を必ず確認

    スコア105点以上、できれば120点以上が目安。運営年数が3年未満の事業所はリスクがやや高まる傾向があります。

  2. 2

    運営母体の規模・他事業の有無を確認

    医療法人・社会福祉法人・上場企業のグループ会社・複数の事業所を運営する法人は、単独経営の事業所よりも経営体力がある場合が多いです。

  3. 3

    生産活動の中身を見学で確かめる

    実際に行われている仕事を見せてもらい、「外部企業から請け負う安定的な仕事があるか」を確認。発送代行・データ入力・カフェ運営など、自前の収益源があるかが鍵です。

  4. 4

    利用者数の推移を質問する

    「ここ1年、利用者は増えていますか?減っていますか?」とストレートに尋ねましょう。増加傾向の事業所は、地域内での評判も良いと考えられます。

  5. 5

    給与・賞与の支給実績を書面で確認

    「直近1年の月給支給実績、賞与の有無、昇給ルール」を提示してもらいましょう。口頭の説明だけで決めず、雇用契約書のひな形を事前にもらうのが安心です。

  6. 6

    通所中の利用者の声を聞く

    見学時に、可能であれば通所中の利用者と短い会話を。表情・話しぶり・スタッフとの関係性は、HPやパンフレットでは絶対にわからない情報です。

  7. 7

    相談支援専門員に第三者目線で聞く

    地域の事業所を熟知している相談支援専門員に「この事業所、率直にどう思いますか?」と質問。営業色のないリアルな評価が得られることがあります。

🙋 事業所選びの全体ガイドはこちら

2024年問題後の事業所選びをさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考になります。

利用者が活用できる救済・支援制度

A型を解雇・退職した場合、活用できる公的制度は意外と多くあります。「次が決まるまでの空白期間」を乗り切るためにも、知っておきたい代表的な制度を整理します。

① 雇用保険(失業給付・基本手当)

A型は雇用契約に基づく就労なので、週20時間以上・31日以上の雇用見込みの条件を満たして雇用保険に加入していた方は、離職後にハローワークで求職申込をすることで失業給付(基本手当)の対象になります。事業所都合の閉鎖は「特定受給資格者」にあたり、自己都合より受給開始が早いのが一般的です。離職票を必ず受け取り、住所地のハローワークで早めに手続きをしましょう。

② ハローワーク・障害者就業生活支援センターの相談

ハローワークの専門援助部門では、障害のある方の求人紹介と就労相談に応じています。A型の閉鎖で行き場を失った方の相談実績も多く、地域の別事業所情報や障害者雇用枠の求人をまとめて紹介してもらえます。あわせて障害者就業・生活支援センター(通称ナカポツ)では、就業と生活両面の相談を受けられます。

③ 公的職業訓練(ハロートレーニング)

雇用保険の受給資格があれば、無料で受講できる公共職業訓練、雇用保険の対象外の方なら求職者支援訓練が選択肢になります。PC・事務・介護・IT・デザインなど分野は多彩。訓練期間中は失業給付や職業訓練受講給付金(月10万円)を受け取りながら学べる場合があります。

④ 自立支援医療・障害年金など既存制度の継続

A型を辞めても、自立支援医療(精神通院)障害年金は原則として継続できます。むしろ、収入が減ったタイミングで医療費負担をさらに軽くする手段になります。年金受給中の方は、収入減を等級判定に反映させる更新もありえるので、年金事務所で相談を。

⑤ 自治体独自の緊急雇用対策

一部の自治体では、A型閉鎖が地域経済に与えた影響を受け、独自の緊急雇用相談窓口転所支援費用の補助を実施した事例も報じられています。お住まいの市区町村の障害福祉窓口・労働政策課に問い合わせてみる価値があります。

出典:厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」(mhlw.go.jp)/「障害者の利用者負担」(mhlw.go.jp)/「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」(mhlw.go.jp

これからA型を検討する人へのアドバイス

「2024年問題のニュースを見て、A型の利用そのものをためらっている」という方も多いはず。結論から言えば、A型という選択肢が消えたわけではなく、選び方の難易度が上がっただけです。これから利用を考えている方が、申し込み前にやっておくべき3ステップを示します。

  1. 1

    候補事業所のWAMNETスコアを事前に確認

    見学に行く前に、WAMNETで気になる事業所のスコアと公表情報をチェック。105点未満や、極端に新設の事業所は優先順位を下げ、安定感のある法人を上位候補にしましょう。

  2. 2

    2025年10月施行の「就労選択支援」の活用も検討

    どのサービス(A型・B型・就労移行支援)が自分に合うか迷う場合は、新設の就労選択支援を利用してアセスメントを受けるルートも有効です。「A型に決めたうえで事業所を選ぶ」よりも一歩手前から考えられます。

  3. 3

    3か所以上を比較し、契約は急がない

    「人気で枠が埋まる前に決めて」と急かす事業所には注意。複数を見学・体験し、雇用契約書の条件まで含めて納得してから決めるのが、2024年問題後の鉄則です。

支援員視点で見えた「2024年問題で実際に起きたこと」

最後に、ニュースの数字や制度解説には載らない現場感覚の話を共有します。報道による情報や、各種公開資料・支援関係者の発信を踏まえた、現場視点での所感です。

① 「閉鎖の前に兆候はあった」が多くの共通点

閉鎖した事業所の利用者から後日聞くと、「振り返れば兆候はあった」という声がよく聞かれました。スタッフの離職、仕事量の減少、社長や管理者の説明が増える/減る、利用料金請求の混乱などです。「気がついていたけれど、自分の生活を考えて言い出せなかった」というのが正直なところでしょう。早めに支援機関へ相談する習慣の大切さを、この問題は突きつけました。

② B型転換は「悪い選択」ではない

収入が下がるという意味でB型転換にネガティブな印象を持つ方もいますが、現場で見ていると、体調を整え直すきっかけとしてB型を選び、結果的に安定した方も多くいます。A型雇用契約の重さがストレスになっていた方にとっては、B型のほうが体調的に合うケースも少なくありません。「収入の絶対額」だけでなく「生活全体の安定」で判断することが大切です。

③ 経営の安定した事業所はむしろ評価が上がった

報道では閉鎖の話が中心ですが、同じ報酬改定で評価を高めた事業所も多数あります。生産活動を地道に積み上げてきた事業所、利用者の働き方を丁寧に支えてきた事業所は、新しいスコア方式でも上位に位置しているケースが目立ちます。「2024年問題=A型全体が危険」と短絡せず、選別の時代が始まったと前向きに捉えるのがフェアな見方でしょう。

④ 利用者の「自分で選ぶ力」が問われる時代に

2025年10月の就労選択支援施行と相まって、これからは利用者自身が情報を集めて選ぶ姿勢がより重要になります。事業所選びは、就職活動と同じくらい慎重に。家族・支援員・相談支援専門員と一緒に複数の選択肢を並べて検討することが、結果的に長く働ける場所を見つける近道です。

よくある質問

2024年問題の「329事業所閉鎖」は今後も続きますか?

2024年3〜7月の急激な閉鎖ピークは過ぎたと見られていますが、報酬改定の影響は中長期的に続く見通しです。経営体力の弱い事業所は引き続き淘汰されていく一方、安定した事業所は逆に存在感を強めると予想されています。「数年に分けてゆるやかに整理が進む」とイメージしておくのが現実的です。

通っているA型が閉鎖されたら、解雇予告手当はもらえますか?

A型は雇用契約に基づく就労なので、労働基準法第20条の解雇予告(30日前までの予告、または30日分以上の予告手当の支払い)の対象です。事業所側がこれを守らない場合は、お住まいの労働基準監督署に相談できます。離職票も必ず受け取り、雇用保険の手続きをしてください。

B型へ転換するとき、新たに受給者証の手続きが必要ですか?

原則として、利用するサービスが変わるので受給者証の変更申請が必要です。市区町村の障害福祉窓口や相談支援専門員が手続きを案内してくれます。閉鎖が決まった時点で早めに動けば、空白期間を最小限にすることができます。

WAMNETのスコアはどこで見られますか?

独立行政法人福祉医療機構が運営する「WAMNET(ワムネット)」の障害福祉サービス等情報公表システムで、事業所名・地域から検索できます。事業所詳細ページで「就労継続支援A型のスコア」項目を確認しましょう。105点以上が目安、120点以上は比較的安定している傾向があります。

失職した期間中の生活費はどうすればいい?

第一に雇用保険の失業給付。第二に世帯収入が大きく減った場合は、自治体の生活困窮者自立支援窓口や生活福祉資金貸付制度が利用できる場合があります。住宅費が苦しい場合は住居確保給付金も検討できます。一人で抱え込まず、市区町村窓口で「収入が減った」と早めに相談してください。

これからA型に通おうか迷っています。やめておくべきですか?

結論としては「事業所選びを慎重にすれば、A型は引き続き有力な選択肢」です。WAMNETスコア・運営母体・生産活動の中身を確認し、複数を比較して納得してから決めれば、過度に恐れる必要はありません。迷う場合は、2025年10月から始まった「就労選択支援」を使ってアセスメントを受けるのも一案です。

家族として、本人が通っているA型が心配です。何ができますか?

本人の同意があれば、家族も事業所の見学・面談に同席できます。WAMNETでスコアを一緒に確認し、危険信号チェックリストを話題に話し合うことで、本人だけでは気づきにくい兆候を早めに察知できます。決して「やめなさい」と一方的に伝えるのではなく、本人の希望を尊重しつつ第二・第三の選択肢を一緒に考える姿勢が大切です。

地域のA型事業所がそもそも少なくて、転所先が見つかりません。

地方では選択肢が限られるのが現実です。隣接市町村まで範囲を広げる、送迎付き事業所を探す、在宅型のA型・就労移行支援を検討する、といった方法があります。相談支援専門員やナカポツ(障害者就業・生活支援センター)に相談すると、自分では見つけにくい情報も得られます。

まとめ:2024年問題は「終わり」ではなく「選別の始まり」

2024年のA型大量閉鎖は、利用者にとってとても大きな出来事でした。しかし全体の約9割の事業所は今も運営を続けており、安定した事業所はむしろ存在感を増しています。恐れすぎず、しかし油断もしない——それが利用者として取るべき姿勢です。

📋 押さえておきたい7つのポイント

  • 2024年3〜7月で329事業所閉鎖・約5,000人解雇(業界全体の約1割)
  • 原因は令和6年度報酬改定で生産活動収益が厳格に評価されるようになったこと
  • 「いま通うA型」の危険信号は利用者数減・仕事量減・スタッフ流出などで察知できる
  • 万が一閉鎖されたらB型転換/別A型/一般就労の3択を比較
  • 転所先選びはWAMNETスコア・運営母体・生産活動の中身を必ず確認
  • 失職期間は雇用保険・職業訓練・自立支援医療・障害年金などをフル活用
  • これから利用を検討する人は就労選択支援の活用3か所以上の比較見学

最後に大切なことを一つ。「自分の通う事業所が大丈夫か」を確かめるのは、利用者としてまっとうな権利です。不安があれば遠慮なく面談で質問し、納得できなければ別の選択肢を相談支援専門員と一緒に検討しましょう。事業所はあくまで「働く場所の選択肢の一つ」。あなたの人生の主役は、いつもあなた自身です。

関連記事: 就労継続支援A型とは令和6年度報酬改定の中身A型経営難の構造分析A型事業所の選び方就労支援事業所とは(ピラー記事)

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