就労継続支援A型の2024年報酬改定を完全解説|スコア方式と事業所への影響
edit2026.04.23 visibility44
📌 この記事でわかること
- 2024年4月施行の令和6年度報酬改定がA型をどう変えたか、3年に一度のサイクルの中での位置づけ
- A型の基本報酬を決める「スコア方式」7項目の中身(労働時間/生産活動/多様な働き方/支援力向上/地域連携/経営改善/利用者目線)
- スコア合計点と基本報酬単価の対応関係、105点ラインの意味、新規指定時のみなし算定
- 「生産活動収支差」が赤字だと大きく減点される仕組みと、A型大量閉鎖の根本原因
- 2024年6月から始まった「福祉・介護職員等処遇改善加算」の一本化(IV〜I区分)
- 賃金向上達成指導員配置加算・就労移行連携加算・ピアサポート実施加算など主要加算の改定ポイント
- 改定が事業所に迫った4つの選択と、利用者・家族が事前に「自分の事業所のスコア」を確認する具体的方法
「ニュースで『A型の報酬改定で経営が苦しい』と聞いたけど、何がどう変わったの?」
「自分が通っているA型は、改定後も大丈夫なのか不安」
「これから利用を考えているけれど、事業所の良し悪しを見抜く判断材料がほしい」
2024年4月に施行された「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定」は、就労継続支援A型のあり方を大きく揺さぶりました。基本報酬が「スコア方式」と呼ばれる7項目評価で決まる仕組みが大きく見直され、生産活動が赤字の事業所はマイナス評価を受け、結果として全国で大量閉鎖が発生──という流れは、利用者・家族にとっても他人事ではありません。
この記事では、報酬改定の「中身そのもの」を、専門家でない方にも理解できるよう徹底解説します。難しい単位数の話を最低限に抑えつつ、「なぜA型が苦しくなったのか」「自分の事業所のスコアはどう確認するのか」「次の改定で何が起こりそうか」までを、2026年4月時点の最新情報に基づいて整理しました。閉鎖の実情そのものや経営構造の深掘りは別記事に譲り、ここでは「制度のしくみ」を腹落ちさせることを目的としています。
令和6年度報酬改定の全体像|2024年4月、何が始まったのか
障害福祉サービスの報酬は、原則として3年に一度、見直しが行われます。介護報酬・診療報酬と同じサイクルで、社会保障審議会・障害福祉サービス等報酬改定検討チームでの議論を経て、最終的に厚生労働省が告示する仕組みです。直近の見直しが「令和6年度(2024年度)報酬改定」で、2024年(令和6年)4月1日に施行されました(処遇改善加算の一本化のみ2024年6月施行)。
報酬改定は単なる「単価の上下」ではなく、国がそのサービスに何を期待しているかを示すメッセージでもあります。今回の改定でA型に向けて発せられたメッセージは、ひとことで言えば「『預かるだけ』のA型は卒業し、利用者の労働時間と賃金、そして事業の自立性を上げてください」というものでした。
💡 令和6年度改定のキーワード
- スコア方式の見直し:A型の基本報酬を決める7項目評価が拡充され、項目によってマイナス点が新設
- 生産活動収支の重視:賃金総額を生産活動収益が下回る事業所には大幅な減点
- 処遇改善加算の一本化:3つあった加算が「福祉・介護職員等処遇改善加算」に統合
- 就労選択支援の新設:2025年10月から運用開始。A型・B型・移行のサービス選びを後押し
- 賃金向上・就労移行連携の強化:A型から一般就労への移行や、賃金向上に取り組む事業所への加算
出典:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について」(mhlw.go.jp)/「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」公開資料(mhlw.go.jp)を基に作成
そもそも「スコア方式」はいつから始まった?
A型の基本報酬は、もともとは「利用者数 × 単価」というシンプルな仕組みでした。しかし2018年度(平成30年度)改定で「平均労働時間」によって単価を区分する方式が導入され、2021年度(令和3年度)改定で本格的にスコア方式へ転換。2024年度(令和6年度)改定で、その評価項目と配点が大きく見直されました。
つまり、令和6年度の改定は「スコア方式そのものを生み出した」のではなく、「スコア方式を厳しくチューニングした」と捉えるのが正確です。経営が安定していない事業所、利用者の労働時間が極端に短い事業所、生産活動の収益で賃金を賄えていない事業所には、より明確に減点が向くようになりました。
A型「スコア方式」を徹底解説|7項目で決まる基本報酬
A型事業所の基本報酬(1日あたりの単位数)は、以下7つの観点で点数化したスコア合計によって区分が決まります。令和6年度改定で、従来の5〜6項目から「経営改善計画」「利用者の知識・能力向上」が独立評価され、合計の枠組みも拡充されました。事業所はこのスコアを毎年算定し直し、自治体に提出・公表する義務があります。
| 評価項目 | 何を見るか | 主な配点イメージ |
|---|---|---|
| ① 労働時間 | 利用者の1日平均労働時間(雇用契約上の労働時間が長いほど高評価) | 最大80点規模 (時間に応じ加点) |
| ② 生産活動 | 過去3年の生産活動収支差(収益が賃金総額を上回れば加点/下回れば減点) | 加点+40点/ 減点 大幅マイナス |
| ③ 多様な働き方 | 短時間勤務制度・在宅ワーク・フレックスなど、多様な勤務形態の整備状況 | 最大35点規模 |
| ④ 支援力向上 | 職員の研修受講、外部資格、虐待防止・身体拘束廃止の取組み等 | 最大35点規模 |
| ⑤ 地域連携活動 | 地元企業・官公庁・学校との共同事業や地域行事への参加 | 10点規模 |
| ⑥ 経営改善計画 | 収支が悪化した事業所が経営改善計画を期日内に提出しているか | 未提出 −50点 等 |
| ⑦ 利用者の知識・能力向上(利用者目線評価) | 個別支援計画に基づく就労スキル・知識向上の取組み実績 | 最大10点規模 |
配点イメージは厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」(mhlw.go.jp)および同改定検討チーム第38回資料2「就労継続支援A型に係る報酬・基準について」(mhlw.go.jp)に基づく整理。実際の配点は事業所規模・地域加算等で変動するため、最新の告示・自治体通知で必ず確認してください。
令和6年度で変わった3つの強調ポイント
7項目を眺めるだけでは「結局どこが厳しくなったの?」という疑問が残ります。改定検討チームの議論を踏まえると、強調された変化は以下の3点に集約されます。
⏱️
① 労働時間の比重UP
「平均1日◯時間以上で◯点」という時間刻みが細かくなり、長時間勤務者が多い事業所ほど高得点を取りやすい設計に
📉
② 生産活動の減点強化
収支差が赤字(賃金総額>生産活動収益)の事業所は明確にマイナス点。経営改善計画の未提出も重ねて減点
📋
③ 経営透明性の要求
スコア表の自治体提出と公表が必須化。利用者がWAMNET等で確認できる「見える化」が進んだ
⚠️ 配点の細かな数値は告示・通知で必ず確認を
本記事のスコア表は「全体像をつかむための整理」です。同じ「労働時間」項目でも、定員・地域・利用形態によって細かな単位数が異なり、また自治体ごとの解釈差もあります。具体的な算定根拠は、厚生労働省告示・解釈通知、および自治体の集団指導資料を必ず参照してください。
スコアと報酬単価の対応関係|「105点ライン」の意味
スコアの合計点は、最高で200点規模に達します。この合計点が一定の区間に入ると、それぞれに対応する基本報酬単価(1日あたりの単位数。1単位=原則10円〜地域加算で変動)が適用される仕組みです。
令和6年度改定で各区分の単価は全体的にやや引き上げられましたが、それ以上に注目すべきは「105点未満になると単価が大幅に下がる」というガケがあること。これが事業所経営に強烈なインパクトを与えました。
| スコア合計 | 評価のニュアンス | 基本報酬 (1日あたりの目安) |
|---|---|---|
| 170点以上 | 最上位。生産・労働・支援すべて高水準 | 最高単価 |
| 150〜169点 | 上位ゾーン。安定経営が見込まれる | 高単価 |
| 130〜149点 | 標準的な良好事業所 | 中上単価 |
| 105〜129点 | 合格ライン。多くの事業所が目指す水準 | 中単価 |
| 80〜104点 | 注意ゾーン。ここから単価が大きく下がる | 下位単価 |
| 60〜79点 | 要改善。経営継続が厳しくなる水準 | 最低水準近く |
| 59点以下 | 最低区分。経営改善計画の提出が必須 | 最低単価 |
出典:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」(mhlw.go.jp)、および各都道府県の集団指導資料を基に整理。具体的単位数は事業所規模・地域・年度で変動するため、必ず最新告示で確認してください。
新規指定の事業所はどう評価される?
開設したばかりで実績がない事業所は、「初年度および2年度目は『80点以上105点未満』とみなして算定」するルールが適用されます。つまり立ち上げ直後は中位やや下のスコア相当として扱われ、3年目以降に実績で勝負する形です。これにより、「実績ゼロでいきなり最上位区分を取る」ような制度の抜け穴は塞がれています。
🙋 利用者目線で押さえたい「105点」の意味
105点を境に基本報酬が一段下がるため、「スコア105点未満が常態化している事業所」は経営的に厳しいと判断できます。スコアが100点ギリギリで運営している事業所と、130点を安定的に維持している事業所では、同じ「A型」でも経営の体力が大きく違うのです。事業所選びの際は「直近年度のスコアと、過去3年の推移」をセットで確認しましょう。詳しい確認方法はA型事業所の選び方でも解説しています。
生産活動収支差の取扱い|A型最大の関門
7項目の中でも、令和6年度改定で最も多くの事業所を直撃したのが「生産活動収支差」の評価です。これは、事業所が外部から得た売上(生産活動収益)から、利用者に支払った賃金総額を差し引いた額のこと。プラスなら加点、マイナスなら減点という、シンプルかつ厳しい仕組みです。
なぜ「生産活動収支」が重視されるのか
A型事業所は、利用者と雇用契約を結び最低賃金以上の給与を支払う義務があります。本来であれば、給与の原資は「事業所がビジネスとして稼いだお金(生産活動収益)」から出さなければなりません。しかし2024年改定前は、赤字を国からの給付金(基本報酬)で補填して賃金を払っている事業所が少なくないと指摘されていました。
国は「給付金は支援の対価であって、利用者の賃金を直接賄うものではない」という立場を取ります。給付金で賃金を埋め合わせる構造を是正するため、令和6年度改定で「生産活動収支がマイナスなら、基本報酬のスコアでも明確に減点する」方針が打ち出されました。
⚠️ 利用者の賃金が「給付金頼り」だった事業所の末路
生産活動収支が赤字の事業所は、令和6年度改定でスコアが大幅に下がり、結果として基本報酬も下落。給付金収入が減ることで賃金原資がさらに細り──という負のスパイラルに陥った事業所が多数発生しました。これが2024年に起きたA型大量閉鎖の最大の原因です。
実情の詳細はA型2024年閉鎖問題と利用者の備え、経営構造の分析はA型事業所の経営難と業界構造で深掘りしています。
「生産活動収支差」の判定ルール
生産活動収支差は過去3年間の平均で判定されます。単年度の赤字が即座に最大減点になるわけではありませんが、慢性的な赤字が続いている事業所は厳しい評価を受けます。
| 過去3年の生産活動収支差(平均) | 評価 |
|---|---|
| 賃金総額を上回る(黒字) | +40点規模の加点 |
| 賃金総額と同程度(収支均衡) | ±0点 |
| 賃金総額を下回る(赤字) | −点(赤字幅により段階的に減点) |
| 賃金総額を著しく下回る(大幅赤字) | 大幅減点+経営改善計画提出義務 |
つまり、「利用者の賃金を、自前の事業収益で稼げているか」が、A型事業所の存続を左右する最重要指標になったわけです。なお具体的な配点は事業所規模等で変動する場合があるため、自治体の集団指導資料を必ず確認してください。
処遇改善加算の一本化|「福祉・介護職員等処遇改善加算」へ
令和6年度改定でもう一つ大きな変更が「処遇改善加算の一本化」です。これは事業所職員(支援員)への給与原資となる加算で、2024年6月から施行されました。
これまでの3加算と、新加算の関係
改定前は、職員の処遇改善のための加算が以下の3種類に分かれていました。
| 改定前(〜2024年5月) | 主な目的 |
|---|---|
| 福祉・介護職員処遇改善加算 | 職員全般の給与水準引き上げ |
| 福祉・介護職員等特定処遇改善加算 | 経験・技能のある職員に重点配分 |
| 福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算 | 月額ベースアップへの直接反映 |
これら3つが、2024年6月から「福祉・介護職員等処遇改善加算(IV〜I区分)」に統合されました。区分が上がるほど算定要件が厳しく、加算率も高くなります。
| 新区分 | 位置づけ | 主な要件イメージ |
|---|---|---|
| IV(最も低い区分) | キャリアパス・職場環境等要件の基本部分 | 月額賃金改善要件+基礎要件 |
| III | IVに加えキャリアパス要件を一部充足 | 研修体系・評価制度の整備 |
| II | 経験・技能職員への重点配分 | 勤続10年以上等への重点処遇 |
| I(最上位) | すべての要件を満たす最高ランク | 職場環境等要件をフル充足 |
出典:厚生労働省「『処遇改善加算』の制度が一本化(福祉・介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」(mhlw.go.jp)/「福祉・介護職員の処遇改善」(mhlw.go.jp)
利用者にとっての意味
処遇改善加算は支援員の給与に直結するため、上位区分を取得している事業所ほど人材定着率が高い傾向にあります。利用者にとっては「長く同じ支援員に支援してもらえる」ことにつながり、結果的に支援の質が安定します。事業所選びの際、運営規程やパンフレットに「処遇改善加算I取得」と明記している事業所は、職員教育・処遇に投資している証拠と読めます。
その他の主要改定項目|A型に効いた3つの加算
基本報酬・処遇改善加算以外にも、令和6年度改定ではA型に関連する加算がいくつか新設・見直されました。事業所選びの際の「質の指標」として知っておくと役立ちます。
① 賃金向上達成指導員配置加算(A型)
利用者の賃金引き上げを推進する「賃金向上計画」の作成と推進を担う指導員を、常勤換算で1名以上配置している事業所に算定される加算です。「最低賃金ぎりぎりの給与のまま停滞」ではなく、計画的に賃金を上げていく姿勢を持つ事業所を後押しする位置づけ。利用者にとっては「将来的な給与アップが見込める事業所」を見極めるサインの一つです。
② 就労移行連携加算
A型・B型から一般就労への移行を実現した利用者について、移行後の就労定着支援事業所等に必要な情報を引き継いだ場合に算定される加算。「A型は終身利用」ではなく、「ステップアップの場」としての機能を高める狙いがあります。一般就労を視野に入れる利用者は、この加算を算定実績がある事業所を選ぶと、卒業後の伴走も期待しやすくなります。
③ ピアサポート実施加算
自身も障害のある「ピアサポーター(障害者ピアサポート研修修了者)」と管理者を配置し、利用者へのピアサポートを実施した場合に、1日あたり100単位が加算されます。同じ立場を経験した支援員からの「経験に基づく寄り添い」を受けられる事業所として、特に精神障害・発達障害のある方からの評価が高い加算です。
出典:大阪府「ピアサポート実施加算関係資料」(pref.osaka.lg.jp)/加算の有無や運用は事業所により異なる場合があります。
💡 加算の有無を「事業所選び」のサインに活用する
賃金向上達成指導員配置加算・就労移行連携加算・ピアサポート実施加算・処遇改善加算Iなどは、「事業所が何にコストをかけているか」を映す鏡です。複数の加算を取得している事業所は、それだけ職員配置・研修・体制整備に投資していると言えます。事業所のパンフレット・運営規程・WAMNET公表情報で、加算の取得状況を比較してみましょう。
改定が事業所に迫った4つの選択
令和6年度改定によって、A型事業所は明確な選択を迫られました。生産活動収支の改善という「重い宿題」が、わずか1〜2年の準備期間で課されたためです。実際に各事業所が取った(または取らざるを得なかった)選択肢は、大きく次の4つに分けられます。
-
①
生産性向上で正面突破
受注先の開拓、自主製品の高付加価値化、IT・データ入力など単価の高い業務へのシフト等で生産活動収益を増やす道。経営体力のある事業所はここに舵を切り、結果的にスコアを高水準で維持しています。
-
②
利用者の労働時間延長
スコア項目「労働時間」で点数を稼ぐため、利用者の1日の勤務時間を延ばす方針。ただし利用者の体調・特性とのバランスが重要で、無理な延長は離職や体調悪化を招きます。利用者目線では「合理的配慮との両立がなされているか」を確認したいポイントです。
-
③
事業の多角化・複合化
A型単独経営ではなく、就労移行支援・グループホーム・相談支援事業等と多角化することでリスクを分散する道。法人としての体力を高め、A型部門の赤字を他事業で吸収する形も見られます。
-
④
閉鎖/B型への転換
上記①〜③が難しい場合、事業所を閉鎖、もしくは雇用契約のないB型へ転換する選択。実際、2024年3〜9月で全国329事業所が閉鎖、約5,000人の利用者が解雇・退職を経験し、うち約4割がB型へ転換したと報告されています。詳しい動向と利用者の備えはA型2024年閉鎖問題と利用者の備えを参照してください。
事業所により対応は異なりますが、ほとんどの事業所は①〜③のどれかに本気で取り組んでいるか、④に追い込まれているかのいずれかです。利用者・家族としては「自分の通っている事業所はどの方向に進んでいるのか」を、契約更新時の説明や運営状況の発信から読み取る習慣を持つと安心です。
利用者にとっての影響と注目ポイント
報酬改定は事業所の話のように見えますが、実際には利用者の毎日の働き方・給与・雰囲気に直結します。具体的にどんな変化が起きうるのかを整理しましょう。
✅ プラスに働く可能性
- 生産活動が安定すれば賃金引き上げの余地が広がる
- 処遇改善加算で支援員の定着率が向上し、長く同じ担当者に相談できる
- 賃金向上達成指導員加算により、計画的な昇給が見込める事業所が増える
- 就労移行連携加算で、一般就労へのステップアップを支援する事業所が増える
- スコア公表が義務化され、事業所の質を比較しやすくなった
⚠️ マイナスに働く可能性
- 「労働時間延長」を急ぐ事業所では、体調を考慮しない長時間勤務を求められる懸念
- 「生産性向上」を急ぐ事業所では、業務難易度の急上昇や受注先からのプレッシャー増
- 経営難の事業所では、突然の閉鎖通告を受けるリスク
- B型転換時、雇用契約・給与から工賃へと収入条件が変わる
- 事業所間でサービス品質の二極化が進行
契約時・更新時に必ず確認したい3つの質問
- 「直近年度のスコア合計と、各項目の点数を教えてください」
- 「過去3年の生産活動収支はどう推移していますか?経営改善計画の提出は必要ですか?」
- 「処遇改善加算は何区分(IV〜I)を取得していますか?賃金向上達成指導員加算・就労移行連携加算は算定していますか?」
これらは事業所が自治体に届出している公的データに基づくため、隠す理由がありません。質問にスムーズに答えられる事業所は、運営の透明性が高いと評価できます。
自分の事業所の評価点を確認する方法
A型事業所のスコアは、事業所自身による自治体への届出と、インターネット等での公表が義務付けられています。利用者・家族が確認できるルートは主に4つあります。
-
1
事業所のホームページを直接見る
多くの事業所は「事業所情報」「運営規程」のページにスコア表をPDFで掲載しています。「事業所名 + スコア」「事業所名 + 公表」で検索すると見つかることが多いです。
-
2
WAMNET(独立行政法人福祉医療機構)で検索
全国の障害福祉サービス事業所の「障害福祉サービス情報公表制度」に基づく情報がまとまっています。地域名・事業所名で検索し、運営状況・職員配置・加算取得状況等を確認できます。
-
3
自治体ホームページで「指定事業所一覧」を見る
都道府県・政令市・中核市は、A型事業所のスコア表を自治体ホームページにまとめて公開しています。「○○県 就労継続支援A型 スコア」で検索すれば、エクセルや一覧表が見つかります。
-
4
契約時に事業所に直接質問する
見学・契約・更新時に「最新のスコア表をください」と依頼するのが最も確実。提示を渋る事業所は警戒シグナルと捉え、別の事業所も比較検討してください。
🙋 スコアをどう「読む」か
合計点だけでなく項目別の点数バランスを見ることが重要です。「労働時間で稼いでいるが生産活動が赤字の事業所」と「両方バランス良く取れている事業所」では、安定性が大きく違います。105点未満が常態化している事業所は、利用継続の判断を慎重に。基本的な事業所選びの考え方はA型事業所の選び方、就労支援サービス全体の比較は就労支援事業所5サービス完全ガイドをご覧ください。
次回改定(令和9年度)の見通し
報酬改定は3年に一度のサイクルなので、次回は令和9年度(2027年度)改定となる見込みです。検討は2026年〜2027年初頭にかけて行われ、社会保障審議会・障害福祉サービス等報酬改定検討チームでの議論を経て、最終的に告示される流れです。2026年4月時点で確定した情報はまだ多くありませんが、令和6年度改定の延長線上で議論が進む可能性が高いと見られています。
注目される論点
- スコア方式のさらなる精緻化:利用者目線評価や地域連携の比重強化
- 就労選択支援との接続:2025年10月施行の就労選択支援との連動性
- A型→一般就労への移行率を直接評価する指標の導入
- 処遇改善加算のさらなる引き上げ:人材確保の社会的要請
- 生産活動収支の評価期間(現行3年)の見直し議論
💡 「次の改定」を待つよりも、今の事業所の実力を見ることが大事
令和6年度改定で淘汰された事業所と生き残った事業所では、「生産活動を自立させる力」「利用者の労働時間と賃金を継続的に上げる力」が決定的に違いました。次回改定がどうなるかを予想するよりも、今の事業所が「どの方向に向かって運営されているか」を確認することが、利用者にとっても新規参入を考える事業者にとっても、最も実用的な視点です。
よくある質問
令和6年度報酬改定はいつ施行されましたか? ▼
2024年(令和6年)4月1日に施行されました。ただし「福祉・介護職員等処遇改善加算」の一本化は2024年6月1日施行と、加算の一部にずれがあります。次回改定は令和9年度(2027年度)の予定です。
スコア方式は、いつから導入されたのですか? ▼
本格導入は令和3年度(2021年度)報酬改定です。前段として平成30年度改定で「平均労働時間による区分」が導入され、令和3年度改定で7項目評価のスコア方式に拡張、令和6年度改定で配点と項目の見直しが行われました。
「105点」の意味を教えてください。 ▼
スコア合計が105点を境に基本報酬の単価が一段下がる区切りラインです。新規指定の事業所も初年度・2年度目は「80点以上105点未満」とみなして算定されるため、業界では「105点ライン」が経営安定の最低目安として広く意識されています。詳しくは本文「スコアと報酬単価の対応関係」セクションを参照してください。
生産活動収支差が赤字だと、どのくらい減点されますか? ▼
過去3年平均で賃金総額を生産活動収益が下回ると、赤字幅に応じて段階的に減点されます。経営改善計画を期日までに提出していない場合は、さらに「−50点」の減点が加わるなど、慢性赤字事業所には厳しい仕組みです。具体的な配点は事業所により取扱いが異なる場合があるため、自治体の集団指導資料や告示を確認してください。
処遇改善加算の一本化で、利用者には何が変わりますか? ▼
直接的に利用者の負担額が変わるわけではありませんが、上位区分(特にI)を取得している事業所は支援員の処遇が手厚く、人材定着率が高い傾向にあります。結果として「長く同じ支援員に相談できる」「支援の質が安定する」という形で、利用者にも恩恵が及びます。
「自分が通うA型のスコア」はどこで見られますか? ▼
事業所自身のホームページ、WAMNETの障害福祉サービス情報公表制度、自治体(都道府県・政令市・中核市)のホームページの3か所が主な確認ルートです。見つからなければ、契約時や面談時に事業所へ「最新のスコア表をください」と直接依頼すれば公開してもらえます。提示を渋る事業所は警戒シグナルと捉えましょう。
令和6年度の改定で、A型の単価そのものは下がったのですか? ▼
各スコア区分の単価そのものは全体的にやや引き上げられました。ただしスコア方式の基準が厳しくなったため、「同じ事業所でも改定後にスコア区分が下がってしまい、結果として実質減収になった」というケースが多発しました。これがA型大量閉鎖の構造的背景です。
新しく開設するA型事業所は、最初からスコア評価を受けるのですか? ▼
新規指定の事業所は、初年度および2年度目は実績がないため「80点以上105点未満」とみなして算定されます。3年目以降は実績ベースの評価が始まるため、開設当初からスコア向上を意識した運営が必要になります。
次回(令和9年度)の改定は何が変わる見込みですか? ▼
2026年4月時点では確定情報は限られますが、就労選択支援との接続、A型から一般就労への移行率を直接評価する指標、処遇改善加算のさらなる引き上げなどが論点になる可能性があります。検討は2026年〜2027年初頭にかけて社会保障審議会・障害福祉サービス等報酬改定検討チームで進められる見込みです。
まとめ:報酬改定の「仕組み」を知れば、事業所選びが変わる
令和6年度報酬改定は、A型事業所に「給付金頼みの経営から、自立した事業運営へ」という大きな転換を求めるものでした。スコア方式の見直し、生産活動収支の重視、処遇改善加算の一本化──これら一つ一つが、「利用者にきちんと労働の対価を払える事業所だけが生き残る」方向へ業界を動かしています。
制度の細部は複雑ですが、利用者・家族・新規参入を検討する方が押さえておくべきポイントは多くありません。「スコアの確認方法」と「生産活動収支のチェック」──この2つさえ習慣にすれば、事業所選びの精度は一段上がります。
📋 報酬改定の「仕組み」で押さえるべき7つのこと
- 令和6年度報酬改定は2024年4月施行(処遇改善加算は同6月)。次回は令和9年度
- A型の基本報酬は7項目スコア方式で決まる(労働時間/生産活動/多様な働き方/支援力/地域連携/経営改善/利用者目線)
- スコア合計105点を境に基本報酬が一段下がる。新規指定は2年間「80〜105点未満」とみなし算定
- 生産活動収支差が赤字だと大幅減点。経営改善計画未提出はさらに−50点
- 処遇改善加算は2024年6月から「福祉・介護職員等処遇改善加算(IV〜I)」に一本化
- 賃金向上達成指導員配置加算・就労移行連携加算・ピアサポート実施加算の取得状況も事業所の質の指標
- 自分の事業所のスコアは事業所HP/WAMNET/自治体HP/直接問い合わせの4ルートで確認できる
報酬改定の話は専門用語が多く、つい「事業所側の話」として遠ざけてしまいがちです。でもその仕組みを知っていることが、利用者・家族にとって最大の自衛策になります。本記事を出発点に、A型に関する基礎知識は就労継続支援A型とは、閉鎖問題への備えはA型2024年閉鎖問題と利用者の備え、経営構造の深掘りはA型事業所の経営難と業界構造へと進んでいくと、立体的に理解できます。事業所選びの実務はA型事業所の選び方、就労支援5サービス全体像は就労支援事業所完全ガイドもぜひ参照してください。
※本記事のスコア配点・単価区分・加算要件は、厚生労働省告示・通知および各自治体の集団指導資料に基づいて整理した一般的な目安です。具体的な算定根拠や運用は事業所規模・地域・年度・自治体の解釈により異なる場合があるため、最新の公式情報を必ずご確認ください。
- 全国の就労支援事業所を掲載中!
-
ココトモでは、全国の就労移行支援・就労継続支援A型・B型事業所を掲載しています。2万件以上の事業所を都道府県/対応障害/訓練分野などから探せます。
就労支援事業所の一覧はこちら
