A型事業所の経営難はなぜ起きたか|利用者として知っておくべき見分け方
edit2026.04.23 visibility32
📌 この記事でわかること
- 就労継続支援A型のビジネスモデル(収入・支出)の基本構造と「給付費で給与を払ってはいけない」原則
- A型経営が構造的に難しい4つの理由(最低賃金上昇/生産活動ノウハウ/業務確保/報酬改定)
- 2024年問題(329事業所閉鎖・約5,000人解雇)が「ビジネスモデル崩壊の表面化」だったという視点
- 経営難に陥っている事業所の8つの危険サインと利用者が観察できるポイント
- WAMNETと運営法人の決算公告から経営状態を確認する具体的なチェック手順
- 経営が安定している事業所の5つの共通点と、見学・面談で聞くべき5つの質問
- もし通所先の経営難の予兆を感じたときの相談先と転所準備のステップ
「A型って、なんでこんなに次々と閉鎖しているの?」
「自分が今通っている事業所は大丈夫なのか心配」
「経営難の事業所って、どこを見れば見分けられる?」
2024年に全国で329か所のA型事業所が閉鎖し、約5,000人の利用者が解雇・退職を余儀なくされたニュースは、利用を検討している方にも、すでに通っている方にも大きな不安をもたらしました。
実は、A型事業所の経営難は「悪質な事業者の問題」というよりも、ビジネスモデル自体が構造的に難しいという背景があります。この記事では、なぜA型経営は無理ゲーになりやすいのかを仕組みから分かりやすく解説しつつ、利用者として「危ない事業所」を見分けるための実践的な診断ポイントをまとめました。2026年4月時点の最新情報と、現場視点の観察ポイントを総動員してお届けします。
⚠️ 本記事の前提
事業所の経営状況は時期や地域によって大きく変動します。本記事は特定の事業所を評価するものではなく、一般論としての構造的傾向と見分け方の視点を解説するものです。最終的な判断は、必ず見学・面談・相談支援専門員への相談を経て行ってください。
A型事業所のビジネスモデル|収入と支出の基本構造
なぜA型の経営は難しいのか――それを理解するには、まず「A型事業所のお金の流れ」を知ることが出発点になります。一般企業とも、B型作業所とも違う独特な収益構造を持っているからです。
収入は「2本立て」、支出には法的な縛りがある
A型事業所の収入は大きく2つに分けられます。①国(自治体)から支払われる給付費と、②利用者の生産活動から得られる売上です。一方の支出には、利用者の給与・人件費・運営費が含まれますが、ここに重要な「ルール」があります。
| 区分 | 内訳 | 性格 |
|---|---|---|
| 収入① 給付費(公費) |
基本報酬 (利用者数 × 単価 × スコア) |
運営費・人件費に充当 |
| 各種加算 (処遇改善・賃金向上・福祉専門職員 等) |
条件を満たせば積み増し | |
| 収入② 生産活動売上 |
受注作業の対価/自社製品の販売/役務提供 等 | 利用者の給与原資に充当(ここが最重要) |
| 支出 | 利用者の給与(最低賃金以上) | 生産活動売上から支払う原則 |
| 支援員・職員の人件費 | 給付費から充当 | |
| 家賃・水道光熱費・原材料費 等の運営費 | 給付費から充当 |
出典:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(mhlw.go.jp)/厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」(mhlw.go.jp)の枠組みを基に整理
ポイントは、「給付費」と「生産活動売上」がそれぞれ別の役割を担っていること。給付費は事業所そのものの運営費・職員の人件費に使うお金で、利用者の給与は基本的に「生産活動でどれだけ稼いだか」で決まる――これがA型の大原則です。
「給付費で利用者の給与を払ってはいけない」原則
A型経営の難しさを語るうえで、絶対に外せないルールがあります。それが、「自立支援給付費から利用者の賃金を支払ってはいけない」という原則です。
これは2017年の厚生労働省通知(A型事業の運営に関する留意事項の改正)で明確化されました。それ以前は、給付費の一部を利用者の給与に充てて辻褄を合わせる、いわゆる「給付費頼みのA型」が全国で問題化していたためです。「働いた対価」は、本来、生産活動で得た売上の中から支払うのが筋――これが福祉の理念にも、労働法の建前にも沿った姿だ、というのが厚労省の考え方です。
💡 なぜこの原則が大事なのか
仮に給付費で給与を払えてしまうと、「利用者を集めれば集めるほど給付費が増え、その一部を給与に回せばいくらでも雇える」という構図になります。これでは、生産活動の中身(仕事を取ってくる努力・付加価値の高い作業を作る工夫)がなくても事業が回ってしまい、利用者は「形だけ働いている状態」に置かれかねません。「働く力をつける」というA型の本来目的が骨抜きになるリスクがあるのです。
2024年報酬改定でさらに強化|「収支差」がスコアの基軸に
令和6年度(2024年4月)の報酬改定では、A型基本報酬の評価項目(スコア方式)の中で、「生産活動収支差(売上 − 利用者賃金)がプラスかどうか」がより重く評価されるようになりました。具体的には、生産活動の収支差が利用者の賃金総額を下回る事業所は、スコアが大きく減点されます。
これは「給付費で賃金を補填するA型は淘汰する」という政策的メッセージそのもの。経営努力で生産活動の売上をしっかり伸ばせない事業所は、自動的に基本報酬が減り、運営が成り立たなくなる仕組みに変わったのです。詳しい改定内容は別記事で解説しています。
👉 A型 2024年報酬改定の詳細|スコア・基本報酬・加算の変化
出典:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(mhlw.go.jp)/厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料(mhlw.go.jp)
A型経営が「構造的に無理ゲー」になる4つの理由
ルールを整理すると、A型は「最低賃金以上の給与を、生産活動の利益から支払い続ける」事業モデルです。これが現場でいかに難易度の高いミッションか、4つの観点から見ていきましょう。
① 最低賃金は毎年上がり続ける
各都道府県の最低賃金は、ここ数年で毎年30〜50円ペースで上昇しています。2025年10月改定では全国加重平均で1,121円、東京都は1,226円に達しました。A型はこの最低賃金以上を支払う義務があるため、生産活動の売上も毎年同等以上のペースで伸ばさなければ、収支差が縮んでいくことになります。
一方で、A型の利用者は障害特性により1日4〜6時間・週20〜30時間といった短時間勤務が中心。短い時間で最低賃金以上の付加価値を生み出すのは、一般企業でも容易ではありません。
② 生産活動で「稼ぐ」ノウハウを持つ事業所が少ない
A型を運営するのは、社会福祉法人・NPO・株式会社などさまざまですが、いずれも母体が「福祉の専門家」であって、ビジネスの専門家ではないケースが多いのが実情です。営業・販売・マーケティング・原価計算といった一般企業では当たり前のスキルが組織の中に蓄積されていない事業所は、安定した売上を作るのに苦戦します。
結果として、近隣企業から請け負う単価の安い軽作業(封入・シール貼り・部品組立など)に依存し、受注変動や単価の引き下げに脆弱な体質に陥りがちです。
③ 障害特性に合わせた業務確保の難しさ
A型は最低賃金以上を保証する一方で、利用者には体調の波・通院・短時間勤務などの事情があります。そのため、「納期厳守の高単価業務」を安定して回せる体制を作ることが極めて難しい。発注元の企業から見れば、納期遅延リスクのある事業所には、単価の高い仕事は出しづらいのが現実です。
この「働き方の制約」と「単価の関係」のジレンマを解くには、ITや軽製造の自動化、内製化された自社製品開発などの工夫が必要ですが、それを実装できる事業所はごく一部に限られます。
④ 報酬改定で「スコア」「収支差」の影響が拡大
2021年改定で導入されたスコア方式が、2024年改定でさらに「生産活動収支差」の重みが増し、形だけ存続してきた事業所が一気に経営難に追い込まれました。逆に言えば、もともと健全な収支構造を持っていた事業所は、評価が高くなり加算も取れて運営が安定する――「強い事業所はより強く、弱い事業所は退場」という二極化が起きています。
⚠️ 4つの理由が重なるとどうなるか
最低賃金は毎年上がる/生産活動の売上は伸ばしにくい/業務確保はもともと難しい/報酬改定で給付費頼みは即減点。この4つが重なり合うのがA型の現場です。「真面目に運営してきたのに気づいたら赤字」という事業所も少なくない、という事実が、構造的な難しさを物語っています。
2024年問題は「A型ビジネスモデル崩壊」の表面化だった
2024年3〜9月の半年で、全国で329か所のA型事業所が閉鎖し、約5,000人の利用者が解雇・退職を余儀なくされました(うち約4割はB型事業所へ転換)。「A型大量閉鎖問題」「A型2024年問題」などと呼ばれた一連の出来事は、社会的には突発的な事件のように報じられました。
しかし、ここまで整理してきた構造を踏まえると、これは「ある日突然起きた事件」というより、もともと続いていた構造的なひずみが、報酬改定をきっかけに一気に表面化した出来事と捉えるのが正確です。給付費に頼って利用者賃金の不足分を埋めてきた事業所、生産活動の売上が低水準のまま規模だけ広げてきた事業所――そうした「無理を続けてきた」事業所が、ふるいにかけられた格好です。
出典:閉鎖事業所数・解雇者数は厚生労働省 国会答弁・各種報道(共同通信2024年10月/福祉新聞 等)/背景制度は厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(mhlw.go.jp)
時系列の事件詳細・利用者の対策手順は、姉妹記事で深掘りしています。
👉 A型2024年問題|大量閉鎖の経緯と利用者の取るべき対策
裏を返せば「健全な事業所」はむしろ評価される時代
2024年問題のもう一つの側面は、「真っ当に経営してきた事業所が報われる構造」に変わったことです。生産活動の収支差をきちんと出している事業所、付加価値の高い業務を確保している事業所、地域や運営母体と連携して安定運営している事業所は、スコアが高く加算もしっかり取れるため、むしろ運営は安定しています。
つまり利用者にとっての教訓は、「A型は怖いから避けよう」ではなく、「A型を選ぶときは、健全な事業所を見抜く目を持とう」ということに尽きます。次章からは、その「見抜く目」の具体的な作り方を解説していきます。
経営難に陥っている事業所の8つの特徴|利用者でも観察できるサイン
数字の細かい分析ができなくても、見学時や通所中の観察で気づけるサインはたくさんあります。次の8項目は、現場で「経営が苦しい事業所」によく見られる特徴です。複数該当する場合は、慎重な判断を。
経営難に陥っている事業所の8つの特徴
- ① 利用者の離脱が多い:定員に空きが目立つ/途中退所する人の話をよく聞く/在籍期間が短い人ばかり
- ② 生産活動が縮小気味:以前あった作業ラインが減っている/新規受注の話がない/作業のない時間が増えている
- ③ 人員(支援員)の入れ替わりが激しい:管理者・サビ管が短期間で交代/「人手が足りない」と現場が口にする
- ④ 施設の老朽化・備品の不足が放置されている:プリンタ・PC・作業机などの修繕がされない
- ⑤ 加算がほとんど取れていない:処遇改善加算・福祉専門職員配置加算などが未取得(重要書類で確認可)
- ⑥ 運営法人の本業が赤字:A型以外の主力事業の業績が悪化している場合、A型部門にしわ寄せが来る
- ⑦ 決算公告・情報公表をしていない:法人の決算情報が一切外に出ていない/HPすら更新されていない
- ⑧ SNS・口コミで利用者からの問題報告がある:給与遅配・突然の事業所閉鎖アナウンス・支援員の急な離職などの声
すべて完全に当てはまる事業所は珍しいですが、3つ以上当てはまる場合はかなり注意が必要と考えてよいでしょう。とくに「①利用者の離脱」「⑤加算未取得」「⑥本業赤字」は経営難の三大サインと言われます。
WAMNETと運営法人の決算で見る|公的データのチェック方法
観察だけでなく、客観的な公的データでも事業所の健康状態を確かめられます。すべて無料・誰でも閲覧可能なので、利用前・在籍中の定期チェックに使えます。
① WAMNETで「事業所情報」と「スコア」を確認
独立行政法人福祉医療機構が運営するWAMNET(ワムネット)では、全国の障害福祉サービス事業所の基本情報・運営状況・スコア(A型の評価点)を検索できます。トップページ(wam.go.jp)から「障害福祉サービス事業所情報」を選び、地域名・事業所名で検索するだけです。
WAMNETで必ず見るべきポイント
- 運営主体・開設年月日:開設から3年未満の事業所は実績が少ない(必ずしも危ない訳ではないが見学を慎重に)
- 定員と現員(利用者数):定員割れが大きい事業所は集客難の可能性
- 従業員(職員)の配置:常勤換算で必要数を満たしているか/資格者の人数
- 加算の取得状況:処遇改善加算・福祉専門職員配置加算・重度者支援体制加算 等の取得が多いほど運営に余力
- A型評価点(スコア):105点以上が目安、120点以上ならかなり健全
- 苦情解決の状況・実地指導の指摘:自治体からの指摘事項が公開されている場合あり
② 運営法人の決算情報を法人形態別にチェック
A型事業所を運営している法人は、形態によって決算の閲覧方法が異なります。法人本体の財務状況を確認することは、A型部門の経営安定性を間接的に示す重要なチェックです。
| 法人形態 | 決算閲覧方法 | 注目すべき指標 |
|---|---|---|
| 社会福祉法人 | WAMNET「社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム」で公開(wam.go.jp 内) | 事業活動収支差額/純資産/繰越活動収支差額/A型部門のサービス区分 |
| NPO法人 | 所轄庁(都道府県・指定都市)または内閣府NPO法人ポータルサイト | 正味財産増減計算書/経常収益・経常費用/前期繰越正味財産 |
| 株式会社・合同会社 | 官報・会社HPの決算公告/非上場の場合は登記情報・信用調査会社の情報 | 当期純利益/自己資本比率/A型単体の状況は開示が限定的なことが多い |
| 医療法人 | 都道府県への事業報告書(閲覧請求可)/一部はHP公開 | 医業収益と障害福祉事業の収支/法人全体の純資産 |
社会福祉法人はWAMNETで誰でも財務諸表が見られるため、もっとも透明性が高い形態と言えます。一方で株式会社運営は決算公告すら出していない事業所もあるため、HP・SNSの更新頻度・運営姿勢から間接的に判断することになります。
出典:独立行政法人福祉医療機構 WAMNET(wam.go.jp)/社会福祉法人の財務諸表等電子開示システムは同サイト内で運用
経営が安定している事業所の5つの共通点
逆に、報酬改定後も安定した運営を続けているA型事業所には、いくつかの共通した特徴があります。事業所選びの際は、こうした要素を持つ事業所を優先的にチェックしましょう。
💻
① 高付加価値業務がある
IT・Webデザイン・データ入力・委託加工・動画編集・翻訳など、単価の高い業務を確立している
🛒
② 自社製品・サービスを持つ
パン・焼き菓子・コーヒー・ハンドメイド・農産物など、外販ルートを確保した自社ブランドがある
🏢
③ 大手法人・医療法人が運営
複数事業を展開する社会福祉法人・医療法人・上場企業が母体で、経営の体力がある
📊
④ 加算をフルに取得
処遇改善・福祉専門職員配置・賃金向上・就労移行連携などの加算をしっかり取得している
🤝
⑤ 地域連携が強い
商工会・地元企業・自治体・相談支援事業所と連携が深く、業務発注ルートが多角化されている
これら5つをすべて満たす事業所はトップ層と言えます。最低でも①〜③のうち1つ、④加算取得、⑤地域連携――を備えた事業所であれば、十分に安定運営が見込めるでしょう。
なお、A型事業所の選び方の総合的なポイントは、関連記事でも詳しく解説しています。
👉 A型事業所の選び方|失敗しないための具体的なチェック手順
見学・面談で聞くべき「経営チェック質問」5つ
見学や面談は、利用者側からも事業所の経営状態を確認できる貴重な機会です。遠慮せず、次の5つは必ず聞いてみることをおすすめします。回答の具体性・誠実さで、事業所の体質がはっきり見えます。
-
Q1
「主な仕事内容と、その発注元・売上規模を教えていただけますか?」
安定経営の事業所は、自信を持って具体的な業務名・取引先(守秘義務の範囲で)・受注規模を答えてくれます。「いろいろあります」「軽作業中心です」と曖昧な回答が続く場合は要注意。
-
Q2
「直近の生産活動の収支はどんな状況ですか?」
報酬改定で生産活動収支差が重要視されているため、健全な事業所は概況を答えられます。「黒字を維持しています」「現在改善中で、こう取り組んでいます」など、状況把握ができているかがポイント。
-
Q3
「現在のスコア(A型評価点)と、取得している加算を教えてください」
スコア105点以上、加算取得が複数あれば安定運営の目安。スコアを把握していない/教えたがらない事業所は、運営が逼迫している可能性も。
-
Q4
「過去3年で利用者数の推移はどう変化していますか?」
定員に対して9割前後を維持している事業所は、地域に支持されている証。連年定員割れが続いている場合は、集客力の低下=経営難の予兆と捉えるべきです。
-
Q5
「運営法人の他事業や、運営方針について教えてください」
母体法人の事業多角化・経営理念を聞くことで、A型部門への投資姿勢が見えます。「A型一本」の小規模株式会社よりも、複数事業で支え合っている法人のほうがリスク分散されています。
🙋 質問するときのコツ
経営に関する質問は遠慮しがちですが、「自分の生活を預ける場所だから、長く安定して通えるかが心配で」と前置きすれば、ほとんどの事業所は誠実に答えてくれます。逆に「そんなことは聞かないで」「考えなくていい」と回答を避ける事業所は、それ自体が大きな警告サインです。
経営難の予兆を感じたらどうするか|相談先と転所準備
すでに通っているA型事業所に「あれ?」と感じる変化があったとき、ひとりで抱え込まずに早めに動くことが大切です。突然の閉鎖通知になってから慌てるより、予兆段階で情報収集と準備を始めるほうが確実に選択肢が広がります。
相談できる主な窓口
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| 相談支援事業所(計画相談支援) | 転所先候補の紹介/受給者証の更新・変更/サービス等利用計画の見直し |
| 市区町村の障害福祉窓口 | 地域の事業所一覧/緊急対応/給与未払い等のトラブル相談 |
| 障害者就業・生活支援センター(ナカポツ) | 働き方の方向性相談/一般就労への切り替え検討 |
| 労働基準監督署 | 給与遅配・解雇予告手当の未払いなど、労働法違反の相談 |
| 都道府県・指定都市の障害福祉指導担当課 | 事業所の運営に関する苦情・通報(行政指導の対象に) |
転所準備のステップ
-
1
まず相談支援専門員に状況を伝える
「今の事業所に不安を感じている」と素直に相談しましょう。地域の事業所事情に詳しい専門員が、候補先の絞り込みを手伝ってくれます。受給者証の変更手続きも一緒に進めてくれます。
-
2
複数の候補事業所を見学・体験
本記事のチェック項目を参考に、複数の事業所を見学。体験利用は通常2〜5日程度で、現所属を続けながら可能です。仕事内容・支援員との相性・経営の安定感を比較しましょう。
-
3
転所手続きと現所属への退所申し出
転所先が決まったら受給者証の事業所変更申請(市区町村窓口)。現事業所には退所希望日の1か月前を目安に申し出るのが一般的なマナーです。
-
4
必要に応じて他制度・他サービスへの切り替えも検討
A型に強くこだわる必要がなければ、B型・就労移行支援・一般就労(障害者雇用)への切り替えも視野に。2025年10月開始の就労選択支援を活用すれば、自分に合うサービスを専門家と一緒に再アセスメントできます。
👉 就労支援事業所の5サービスを比較|自分に合うサービス診断
👉 就労継続支援A型とは|仕事内容・給与・利用条件の総合ガイド
よくある質問
A型の経営はなぜ難しいのですか?一般企業との違いは? ▼
A型は最低賃金以上の給与を、原則として「生産活動の売上」から支払う必要があります。一般企業のように利益を上げて給与を払う構造に見えますが、利用者の障害特性に合わせた短時間・低負荷の働き方では高単価業務を確保しにくく、なおかつ給付費を給与に充ててはいけないルールがあるため、構造的に黒字化のハードルが高いのです。
自分が通っているA型事業所が経営難かどうか、どうやって見分けますか? ▼
本記事の「経営難に陥っている事業所の8つの特徴」を参考にしてください。利用者の離脱、生産活動の縮小、人員の入れ替わり、加算未取得、運営法人の本業赤字などが代表的なサインです。3つ以上当てはまる場合は注意し、相談支援専門員に状況を伝えましょう。
WAMNETのスコアは何点以上なら安心ですか? ▼
一般的に105点以上が目安、120点以上ならかなり健全な事業所と言われます。スコアは生産活動収支差・利用者の賃金水準・地域連携・支援体制など複数要素から算出されるため、スコアが高い事業所は総合的に運営が安定している可能性が高いと言えます。
運営法人の決算は、株式会社でも見られますか? ▼
社会福祉法人はWAMNETで誰でも財務諸表を確認できますが、株式会社・合同会社の場合は決算公告(官報・自社HP)が中心で、開示の有無は法人によります。非上場の場合は信用調査会社の情報も限定的です。決算公告すら出していない法人は、透明性の観点からは慎重に見るべきと言えます。
2024年の閉鎖問題以降、A型を新しく利用するのは危険ですか? ▼
むしろ「健全な事業所が選びやすくなった」と捉えるのが正確です。経営体力のない事業所が淘汰された結果、残っている事業所は構造的に強いところが多くなっています。本記事のチェック項目を踏まえて選べば、過度に怖がる必要はありません。詳しくは A型2024年問題の解説記事 もご参照ください。
経営難の事業所で給与の遅配が起きたらどうすればいいですか? ▼
A型は雇用契約に基づく労働ですから、給与遅配は労働基準法違反です。まずは事業所に書面で支払いを求め、改善されない場合は最寄りの労働基準監督署に相談してください。あわせて、市区町村の障害福祉窓口・相談支援専門員にも状況を伝え、転所の準備を始めることをおすすめします。
事業所の閉鎖が決まったら、利用者はどうなりますか? ▼
多くの場合、閉鎖の数か月前に告知があり、運営法人と自治体・相談支援事業所が連携して転所先の調整に入ります。雇用契約に基づくため解雇予告手当の対象にもなります。慌てず、相談支援専門員と一緒に転所候補を絞り、必要なら就労選択支援でサービス自体の見直しも検討しましょう。
「給付費で給与を払うA型」がなぜ問題視されたのですか? ▼
給付費(公費)を給与に充ててしまうと、生産活動を充実させなくても利用者を集めるだけで事業が回ってしまい、利用者の「働く力をつける」という本来目的が損なわれます。また公費頼みでは制度全体の持続可能性が下がるため、2017年の通知で原則禁止とされ、2024年改定でも「収支差」がスコアの要に位置づけられました。
まとめ:A型は構造的に難しい。だからこそ「見分ける目」を持つ
A型事業所の経営難は、悪意ある事業者の問題というより、「最低賃金以上の給与を生産活動から支払う」というビジネスモデル自体の構造的な難しさから生まれています。2024年の大量閉鎖は、その難しさが報酬改定をきっかけに一気に顕在化した出来事でした。
しかしこれは裏を返すと、「健全な事業所がきちんと評価される時代」になったということでもあります。利用者として大切なのは、A型を一律に避けることではなく、本記事で紹介した観察ポイント・公的データ・面談時の質問を活用して、長く安定して通える事業所を見極めることです。
📋 A型の経営難を見抜く5つのポイント
- 収入は給付費+生産活動売上、利用者給与は生産活動収支から払うのが原則
- 最低賃金上昇/業務確保難/報酬改定強化が重なり、構造的な無理ゲーになりやすい
- 経営難の事業所は離脱・縮小・加算未取得・本業赤字などのサインが現れる
- WAMNETと運営法人の決算で公的データから経営状態を確認できる
- 見学・面談では5つの経営チェック質問で具体的に確認するのが一番有効
心配な点があれば、相談支援専門員や市区町村の障害福祉窓口に早めに相談を。事業所選びは、自分の生活と将来を預ける大事な決断です。情報を集め、複数を比較し、納得して選ぶことで、A型のメリットを安心して享受できます。
👉 関連記事:
・就労継続支援A型とは|仕事内容・給与・利用条件の総合ガイド
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