満足度が高い相談対応に共通する傾向
過去のチャット相談データを分析した結果、相談者の満足度が高い相談対応には共通の傾向があることが分かりました。
- 満足度が高い相談対応に共通する10の傾向
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- 共感と質問が多い
- 相談者の提示する要望に沿った対応をしている
- 提案する際は複数の選択肢を提示している
- 感情的なキーワードを漏らさず拾っている
- 言葉の背景にある気持ちを汲み取ろうとしている
- 同年代または同性による対応
- 文章量が相談者と同じかそれ以上
- 文章が読みやすい&分かりやすい
- 返答の冒頭に挨拶や感謝などの前置きがある
- ミスをしてもすぐに真摯に謝る
それぞれ実際のデータから分かったことを踏まえて補足します。
①共感と質問が多い
満足度が高い相談対応は、相談者への返信文章に必ず共感と質問の言葉がけがどちらも含まれています。
共感は冒頭にあるだけでなく、たとえば相談者が複数の出来事や感情を書かれている場合には必ず内容1つ1つにたいして共感の言葉がけがあります。
質問についても、相談者の書かれている内容1つ1つにたいしてより深く話してもらうための質問があります。
共感と質問が多いと相談員側のメッセージを最後に会話が終わるということがなく、結果としてやり取りが増えたり満足度が上がったりする傾向があります。
逆に、共感が多くあっても質問が無く「何でも話してくださいね。」のように漠然としたメッセージを送った場合、その後に相談者が何を話せば良いのか分からずやり取りが終わってしまう傾向があります。
②相談者の提示する要望に沿った対応をしている
下記のように、相談者の提示する要望に沿った対応をおこなうと満足度が高いです。
- 「ただ話を聞いてほしい」場合
- 助言はせず、共感と質問のみおこなう
- 「一緒にお話したい」場合
- 助言はせず、共感と質問と自己開示をおこなう
- 「助言は話をしっかり聞いてからしてほしい」場合
- 複数回以上のやり取りを重ねたあとに必要に応じて意見・助言・提案を伝える
- 「初回返答から助言してほしい」場合
- 共感や質問を入れたうえで初回から意見・助言・提案を伝える
*「初回返答から助言してほしい」場合でも、メッセージ内に共感や質問が少ないほど満足度は低い
※詳細は別途「相談者の要望別対応方針」を参照ください
③提案する際は複数の選択肢を提示している
相談者に何かを提案する際は、1つではなく複数の選択肢を提示するほうが満足度が高いです。
また、提案する際には「あくまで参考情報であること」「最後は相談者自身に決めてほしいこと」「相談者がどのような選択をしても応援すること」をあわせて伝えているとより満足度が高いです。
④感情的なキーワードを漏らさず拾っている
相談文章の中にある感情的なキーワード(例:つらい、しんどい、嫌い、自信がない、など)を漏らさず拾い、感情的なキーワードにたいして共感・質問することができている場合は満足度が高いです。
逆に、感情ではなく事柄や事実についてばかり拾ってしまうと「相談員:それはいつのことですか?」「相談者:X月頃のことです」のように話が深まらず、やり取りが途切れてしまう傾向があります。
⑤言葉の背景にある気持ちを汲み取ろうとしている
相談文章にある言葉をただオウム返しするのではなく、自分なりに相談者の気持ちを想像して「〇〇と話されているのはこんな気持ちからでしょうか?」などのように汲み取った気持ちを伝えていると相談者の満足度が高いです。
汲み取った気持ちを伝える際は、あなたはこうだよねと決めつけるのではなく、自分はこのように受け取ったがどうでしょうかと確認するスタンスで接するとやり取りが深まる傾向があります。
⑥同年代または同性からの回答である
傾向として、同年代または同性の相談員からの回答のほうが満足度が高い傾向があります。
ココトモは10・20代の相談者が多いため年代が離れるのは基本的に相談員が年上で相談者が年下のパターンです。このような場合に相談対応がうまくいくかどうかは、以下のように相談員側の接し方がとても大切になってきます。
- 相談員の年代が高くてもうまくいくケース
- 相談員側が現在の若年層世代の常識・価値観を理解しようと勉強しており、さらに相談者にたいして「教えてほしい」というスタンスで接している。
- 相談員の年代が高くてうまくいかないケース
- 意見や価値観を押しつけているわけではないが、自分の世代の常識・価値観との違いを認識できておらず、また教わるスタンスで接していない。
⑦返答の文章量が相談者の文章量と同じかそれ以上
満足度の高い相談対応は、返答の文章量が相談者の文章量と同じかそれ以上という傾向があります。
逆に、相手の文章内にある気持ちを丁寧に拾おうとしたら明らかに足りない文章量で返答した場合やり取りが続かない傾向があります。
尚、相手よりも長ければ良いということではなく、同じことを伝えられるなら短くまとめたほうが文章も分かりやすくなり相手への配慮に繋がります。
配慮という点では「若年層の相談者であれば基本的に1000文字以内におさめる」「うつ病の相談者であれば相手と同程度の文章量を上限とする」など相手に合わせることも大切です。
*うつ病には「長文が読めない」「長文が頭に入らない」といった症状があります
⑧文章が読みやすい&分かりやすい
相談員側の文章が読みやすく分かりやすいほど、相談者の満足度が高い傾向があります。
読みやすい&分かりやすい文章の特徴は以下のとおりです。
- 読みやすい&分かりやすい文章の特徴
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- 主語と述語が一致している
- 主語が冒頭にある
- 一文がなるべく短い(長くても100文字以内)
- 一文につき伝えることは1つ
- 前後のメッセージと関連性が高い
- 同じことが何度も書かれていない
- 適度に段落分けされている(若年層の相談者には一文ごとに段落分けで良い)
- 句読点が多すぎない(声に出して読んだときのリズムとズレが無い)
⑨返答の冒頭に挨拶や感謝などの前置きがある
満足度の高い相談対応は、何通目の返答においても必ず挨拶や相手のメッセージにたいするお礼が冒頭に書かれています。
逆に、冒頭からいきなり前のメッセージの回答を伝えている返答の場合、やり取りが続かない傾向があります。
⑩ミスをしてもすぐに真摯に謝る
相談員側に何かしらのミスがあった場合、些細なことでもすぐに真摯に謝ることができているとその後もやり取りが続く傾向があります。
自分のミスについて謝罪の言葉を伝えなかったり、相談者から何か指摘されてもスルーしたりした場合、やり取りが続かない傾向があります。
- 相談マニュアル参考文献
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- 孤独の本質 つながりの力
- 技法以前
- 雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら
- 聞く技術 聞いてもらう技術
- 居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書
- ふつうの相談
- 当事者主動サービスで学ぶピアサポート
- 精神障がいピアサポーター
- ピアスタッフとして働くヒント
- 臨床心理学の倫理を学ぶ
- カウンセラー 専門家としての条件
- こころの葛藤はすべて私の味方だ。
- 人を助けるということ
- 精神分析における境界侵犯 臨床家が守るべき一線
- 傾聴の基本
- ケアする人の対話スキルABCD
- 「死にたい」に現場で向き合う 自殺予防の最前線
- 「死にたい」と言われたら
- 自殺学入門 知っておきたい自殺対策の現状と課題
- いのちの電話を支える
- 電話相談の実際
- プロカウンセラーの共感の技術
- 精神科医はどのように話を聴くのか
- 野の医者は笑う 心の治療とは何か?
- ロジャーズ クライエント中心療法
- カール・ロジャ-ズ入門 自分が自分になるということ
- SNSカウンセリング・ハンドブック
- SNSカウンセリング・ケースブック
- テキストカウンセリング入門
- 遠隔心理支援スキルガイド
- クライシス・カウンセリング
- カウンセリングとは何か
- カウンセリングの話
- 新・カウンセリングの話
- 河合隼雄のカウンセリング教室
- 河合隼雄の"こころ" 教えることは寄り添うこと
- カウンセリングの実際
- 心をはなれて、人はよみがえる
- ころんで学ぶ心理療法
- 「自己発見」の心理学
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- 物語としてのケア
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