てこの日記『『春耕秋収 - 其の十壱 そらいろ ー』

見慣れているはずの、この風景を以前こうして見たのは何時であったであろう。久しく見ることさえなかった。

その久しさを思い起こさせるかのように、堤の上に腰を下ろして、川面を眺めているとほんの少し疲労感を誘う。

日中なれば、陽射しも強い。夜になっても、熱帯夜ともなる日が連日続くのに、河口に近いが故にか、川風が渡る。少し汗ばみ火照った体でそこに居ると、肌寒い感じすらする。例年では、暖かな空気を含み纏わりつくような、熱気を含んだ風ではなかったろうか。

連日のように、日中の猛暑を伝える報道と裏腹に今年、川面で過ごす一時は、寒ささえ伝わる気がする。外気温との差が大きく、川風が強いのかも知れない。

そんな中で散策途中、夜空を眺めて、しばし過ごす訳だ。

夜空と言っても、そこは街中の河口。街灯りに晒され星空を拝むことすらない。

ただ月は、雲間からぼーっと川面を照らす。

今宵の雲は、ほんの少し『はぐれ雲』が浮かぶ。
でも、ちょっと違うか。

近ごろ、日中のちょっとした買い物ついででも空を見上げる。その雲を探しているのだ。

昼夜に限らず、散策途中で時折空を見る。
それは、晴天なれば一面の蒼、暮方なれば茜にと。そのそらいろを見ていた。

雲は、そらいろの彩度を落とすだけの存在ではなかったか。

今年見上げる空は、雲が主役。例年同様、同じ空を見ているのに、主役、脇役を違えて見るだけでこうも違ったように映るものなものか。。

そして事あるごとに、その雲を探す。ちょっと違うかなを繰り返して。

出逢えたなら、ほんの僅かにか前向きに過ごす事ができるのだろうかと思う。

favorite読んでくれた人へのメッセージ

8月4日20時頃、朔。なので、この話しは、数日前の事。
そして、今年の処暑は、8月22日。だから、もうすぐ……。
その日、何処かでまた夜空を仰いでいるのだろうか。

ログインするとこの日記をフォローして応援できます

keyboard_arrow_up