雪コの日記『孤独死した父の亡骸(2/4)』

ある日私達の家にとある人がやってきた。
その時は母が対応した。

そのやりとりは家の中まで全て筒抜けで響き渡っていた。

なぜならその人が大声で喚いていたからだ。

どうやら父は物損事故を起こしたらしい。
そして何の処置も報告も施さず逃亡を図った。

つまり家にきたのは被害者だったのだ。
一応敬語は使っていたが怒りが抑えきれないといった感じで母に詰め寄っていた。

そして後日謝罪に向かい、なんとか事なきを得た。

その日からだ。
私は父に対して心の奥深くで暗く冷めきった侮蔑と軽蔑が入り混じった禍々しい感情を抱くようになった。
 
主に2つ許せないことがある。

ひとつは母を傷つけたという子供としての怒り。

そしてもうひとつは愛した女に矛先が向けられるとわかって尚自分の身の安全を選んだという男という生物としての異常性に対してだ。

あの人はそれに対して何ひとつ謝罪も感謝もなく逃げるように死んでいった。

私はそんな奴の葬式には行きたくなかった。

心が狭いだろうか。
周りが思うほど私は優しくはない。

それでも息子である以上行ってあげなくてはならない。

私たちは片道半日ほどかけて父に会いに行った。

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