心理カウンセラーという“夢”と“罠” 資格商法という現代の寓話
visibility876 edit2025.06.12

「人の心を救いたいんです」
そう言って、心理カウンセラーの道を志す人に、私はこれまで何度出会ってきただろうか。たいていの場合、その言葉の奥には、自らが心の問題に苦しんだ経験や、大切な人の苦悩を見つめてきた背景がある。そしてその姿勢に、私は深い敬意を抱く。
しかし、現代社会は、そうした「善意」に対して、必ずしも優しくはない。むしろその純粋さにつけ込むかのように、「心を学べば、あなたも人を救える」「この資格で、プロとして活躍できる」と謳う“資格ビジネス”が、水面下で静かに広がっている。
心理カウンセラーの資格は、国家資格ではない。臨床心理士、公認心理師、見方を変えて精神保健福祉士といった公的な資格もあるが、取得には大学院や国家試験が必要で、ハードルが高い。
このサイトにも「公認心理師」等を志している人を見かけるが、現実的に実習選抜や院試を突破できるのはほんの数%程だろう。
その一方で、○○心理士、△△カウンセラー、□□セラピストといった“民間資格”は、数万円から数十万円を払えば、比較的短期間で取得できる。
ここに、ひとつの罠がある。
私たちは、「資格を持つ=能力がある」と思いたい。しかし、心理という領域は、単なる“技法”や“知識”ではなく、自分自身を深く見つめ、他者と向き合う「姿勢」や「関係性」の問題だ。どんなに立派な資格を掲げても、実践の場で苦悩する相手に寄り添う力がなければ、それは“飾り”にすぎない。
にもかかわらず、「資格をとれば、自分もすごい人間になれる」という幻想にすがりたくなるのは、人間として当然の欲望だと思う。むしろ、そう感じること自体が、“自分自身の心を理解したい”という切実な願いの表れなのだ。
ただ、だからこそ、気をつけなければならない。
資格そのものに価値がないわけではない。
ある民間資格が、本人にとって意味のある学びになり、他者との関係を見直すきっかけになったのなら、それは一つの財産だと思う。でも、「その資格で仕事ができる」「独立開業できる」「他人を治せる」といった過剰なメッセージに対しては、慎重であるべきだ。
何より、心理の仕事は、「他者を救うこと」ではない。むしろ、「救おうとする自分の衝動」と向き合いながら、共に生きていく道を探す営みだ。そこには答えもなければ、正解もない。ただ、自分がどれだけ“感じられるか”が問われる、静かで根気のいる旅路だ。
だから私は、心理の道を志す人に、こう伝えたい。
「資格があなたを支えてくれるわけではない。あなたの“在り方”が、誰かの支えになるのです」
資格は道具。けれど、人と人の間に本当に必要なのは、肩書きではなく、まなざしだ。そこを見誤らなければ、どんな形であれ、あなたの歩みは決して無駄にはならない。
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