実存ダイアリー 1

あぁ、僕は死んだんだ。目の前が真っ暗だ。音はあるのだろうか。身体の感覚は無い。でもどこか気持ちよくとも懐かしい感覚を覚える。僕はどこにいる。あれ、僕は、誰だ。

身体を起こし窓を見る。空は青く澄み渡っている。鳥が飛んでいる。自由に、勇敢に、気持ちよさそうに飛んでいる。太陽が導いたかようにこちらに飛んでくる。群れを成したり、時には一羽で、こちらに訴えかけてくる。

罪人なのだろうか。なぜここにいるのだろう。

回想を始めようとしたら目が覚めた。あれはいったいなんの映像だったんだろう。今起きたのに、まるで意識だけ別次元に隔離されていたのが合体したようだ。しっかりと映し出された世界は限界と制限の象徴が覆っている。しかし天井は窓から照らす希望の光を写し日差しの模様を描いている。

僕は、鳥になりたいと思った。何も気にせず、ただ自らを肯定し自由に羽ばたく勇者になりたくなった。この天井を貫いて、海を渡り、空を知り、宇宙にだって行ってやる。そして全てを超えて高らかに笑うんだ。そして神話になりこの世界が壊れるまでずっと、僕は歴史で生き続ける。

昨日、死んでいた僕は、今日、生まれ変わった。神に生を祝福されたのではない。無慈悲に死んだ昨日の自分に肯定されたのだ。

このまま寝てても自然は僕を肯定する。今から世界へ殺害事件を起こしたとしても自然は肯定するだろう。いつものように陽は昇り、鳥は空を泳ぎ、樹木は育つ。目の前醜い事をしたとしても動物たちに餌を与えれば肯定される。人間のみ、惰性を否定する。否定しても時は流れる。行き交う人は異なれど世界は同じ時間を共有し、平等に自然に愛される。そうだ。神は死んでなどいない。生きてもいない。

「なろうとする人が神に変身する」

太陽が導いた化身がそう告げるように空へ溶けていった。

鉛のように重いのに、神をも殺した悪人なのに、乾ききってるはずなのに、涙が止まらなかった。

人生最後の日が始まった。

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