ちょっと楽に生きるために――職場研修でも使われる「心のクセ」の見える化

はじめに

昔、職場の研修で、エゴグラムというものを受けたことがあります。

当時は、性格診断のようなものかなと思っていました。
いくつかの質問に答えて、自分の性格や傾向を見るもの。
そんなふうに受け取っていた記憶があります。

けれど、改めて調べたり考えたりしてみると、エゴグラムは単に「あなたはこういう人です」と決めつけるためのものではないのだと感じました。

むしろ、今の自分の反応パターンや思考パターンを見える化するための手がかりなのかもしれません。

エゴグラムとは

エゴグラムは、交流分析という心理学の考え方をもとにしたものです。

交流分析では、人の心の働きを大きく「親」「大人」「子ども」という自我状態から見ていきます。

その考え方をもとに、自分の心の働き方の傾向を見える化するものがエゴグラムです。

代表的なものとして、TEG(東大式エゴグラム)という心理検査もあります。

エゴグラムでは、主に次の5つの心の働きを見ていきます。

CP:批判的な親
ルールや責任感、厳しさ、正しさを大切にする心の働き。

NP:養育的な親
優しさ、思いやり、世話をする力、受け止める力。

A:大人
冷静さ、現実的な判断、情報を整理して考える力。

FC:自由な子ども
のびのびした感情表現、楽しむ力、創造性。

AC:順応した子ども
周りに合わせる力、我慢する力、空気を読む力。

どれが良くて、どれが悪いというものではありません。
それぞれに良さがあり、同時に強く出すぎると苦しくなる面もあります。

心のクセが見えると、少し楽になることがある

たとえば、CPが強く出やすい人は、責任感があって、物事をきちんと進める力があるかもしれません。

一方で、自分にも他人にも厳しくなりすぎてしまうことがあります。
「ちゃんとしなければ」
「間違えてはいけない」
「もっと頑張らなければ」
そんな言葉で、自分を追い込んでしまうこともあるかもしれません。

NPが強く出やすい人は、人を思いやったり、誰かを支えたりする力があるかもしれません。

でも、人を優先しすぎて、自分の余力を超えてしまうこともあります。
「助けたい」
「放っておけない」
「自分が何とかしなきゃ」
そう思うあまり、自分の疲れに気づくのが遅れてしまうこともあります。

ACが強く出やすい人は、周りに合わせたり、場の空気を読んだりする力があります。

けれど、その分だけ自分の本音を後回しにしやすいかもしれません。
「迷惑をかけたくない」
「嫌われたくない」
「自分が我慢すればいい」
そうやって、自分の気持ちを小さくしてしまうこともあります。

こうした傾向を知ることは、自分を責めるためではありません。

「自分はだめだ」と決めつけるためでもありません。

むしろ、
「今はこの心の働きが強く出ているのかもしれない」
「だから、こういう反応をしやすいのかもしれない」
と、少し距離を取って自分を見るための手がかりになるのだと思います。

認知や行動を少し調整するために

自分の心のクセが見えてくると、考え方を少し調整しやすくなることがあります。

これは、認知療法や認知行動療法に近い部分もあるのかもしれません。

たとえば、
「ちゃんとしなければ」と強く思いすぎているとき。

そこでいきなり、
「そんなふうに考えてはいけない」
と否定する必要はないと思います。

ただ、
「今、少し自分に厳しくなりすぎているのかもしれない」
「完璧ではなくても、今できる範囲で十分かもしれない」
と、考え方の角度を少し変えてみる。

あるいは、
「人を助けたい」という気持ちが強く出ているとき。

その気持ちは大切なものです。
でも、自分の余力を超えてまで動き続けると、こちらも疲れ切ってしまいます。

だから、
「今の自分にできる範囲はどこまでだろう」
「すぐに動く前に、一度深呼吸してもいいかもしれない」
と、行動を少し調整してみる。

「周りに合わせなければ」と思いやすい人なら、
いきなり大きく自己主張しようとしなくてもいいと思います。

まずは小さな場面で、
「私はこうしたいです」
「今日は少し休みたいです」
「それは少し難しいです」
と、自分の気持ちを小さく出してみる。

そうやって、少しずつ違う行動を試していくことで、
「断っても関係が壊れないこともある」
「自分の希望を言っても大丈夫な場面もある」
という経験が積み重なっていくことがあります。

自分を変えるより、自分を扱いやすくする

エゴグラムや交流分析を知ることは、自分を無理やり変えるためのものではないと思います。

もちろん、変わりたい部分があるなら、少しずつ変えていくこともできます。

でも、それ以上に大切なのは、
「自分はこういう反応をしやすいんだな」
「こういう場面で苦しくなりやすいんだな」
と、自分の傾向を知ることなのかもしれません。

自分の傾向が分かると、対策を立てやすくなります。

疲れているときは、人の相談を受けすぎない。
厳しくなりすぎているときは、「今は十分」と声をかける。
我慢しすぎているときは、自分の本音を少しだけ確認する。
感情に飲まれているときは、事実と気持ちを分けてみる。

それは、自分を否定することではありません。

むしろ、自分と少し仲良くなるための工夫なのだと思います。

おわりに

エゴグラムは、自分を決めつけるためのものではなく、今の自分を見える化するための手がかりです。

自分の心のクセを知ることで、
「なぜこんなに苦しくなるのか」
「なぜ同じような場面で疲れてしまうのか」
「どうしたら少し楽に動けるのか」
を考えるきっかけになることがあります。

すぐに大きく変わらなくてもいい。

まずは、自分の反応パターンに気づくこと。
そして、考え方や行動をほんの少し調整してみること。

それだけでも、少し生きやすさにつながることがあるのかもしれません。

自分を責めるためではなく、
自分を少し扱いやすくするために。

そんなふうに、心のクセを見える化してみるのもいいのではないかと思います。

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