解離性同一性障害(多重人格)とは?障害との向き合い方と他者との関わり
edit2016.04.26 3,095
解離性同一性障害、というと、あまりピンとこない方のほうが多いと思います。ですが、一方で多重人格という言葉はよく聞くと思います。
多重人格、というと、まずは何をイメージするでしょうか?
ジキルやハイドなどの二重人格のエピソードや、アニメや漫画の中で、何かのトラウマや言葉がスイッチとなり、基本人格(主に本人自身のことを指します)から別の人格に心が入れ替わり、さっきまで話していた人は別人のようになる…というような「キャラ設定」ではないでしょうか?
その「キャラ設定」はこちらからしてみれば分かりやすいものですが、当事者から考えると、全ての人格は「自分自身の一部」あるいは、「自分自身そのもの」であり、キャラも何もない!と考えている方も少なくないかと思います。
しかし、こういった当事者と当事者ではない方の認識のギャップがある理由は至ってシンプルで、情報が少ない、というところにあると思います。
アニメや小説の中では設定として取り込まれ、キャラ設定をされる。これは別に間違ったことではないのですが、解離性同一性障害という障害を知っていることとはまた別問題なのです。
ここで伝えたいことは、まずは入口。
「解離性同一性障害」ってなーに?を知ってもらうこと、です。
当事者目線ではありませんので、その点においてはご了承くださいませ。
◎「解離性同一性障害」の彼女と出会い
私が当事者である「解離性同一性障害」の彼女と出会ったのは、大学四年生の時でした。
当時、私は自分の『セクマイ』を自覚しており、うつ病を発症したことから、他人との関係を極端に避けていました。それでも寂しくなるもので、誰かに分かってもらいたい、一緒に歩んでいける人が欲しい、と思い、当時人気があったサイト(決して出会い系などの怪しいサイトではないですよ)の『セクマイ』専用掲示板で、彼女と出会いました。
家も近郊だったことから、最初はメールでのやり取りでしたが、実際に会ってみようとなり、彼女の一人暮らししている家の近くで待ち合わせをして、初めて顔を合わせました。
彼女が解離性同一性障害であることは知っていました。彼女もしきりにそのことを気にしていましたし、会う前に、びっくりさせないようにと、電話越しで違う人格と代わって、私を慣れさせてくれていました。
そのとき、彼女の中にいた人格は30人ほど。子どもから3,40歳くらいの大人までで、男女の割合は男7:女3くらいでした。男性が多いのは、本人が父親にトラウマを持っていたので、自分の中で「怖くない男の人像」を作っていたからだと思います。本人はかわいらしい女の声ですが、男の人格に代わると口調も強く、声も低くなります。
そのため、目の前で見ると私が驚いてしまうのではないかと考え、彼女は電話で他の人格(主に男性、幼児)と話をさせてくれていました。
ですが、出会ったときの感想を今正直に述べられるのであれば、私はこう答えます。
「分かっていても、覚悟していても、自分が経験したことのない世界に触れるということは、怖い」ということ。
出会ったときの彼女は普通の女の子でした。
私はメールや電話のやりとりをしていく中で、彼女の人柄に惹かれていっていったので、会って話をする分には、何も変わりない、至って普通の女の子に見えました。
彼女は「自分が変な風に見られるのは良いけれど、葉音が変な目で見られるのは嫌だから」という理由で、彼女の家に招き入れてくれて、初めて彼女の人格と対面しました。
彼女曰く、30人いるうちの主要な人格は5,6人ほどで後はよっぽどのことがないと、ほとんど出てこないということでした。
その日に会わせてくれたのは、彼女が解離をして一番初めからいる人格であり、自分の心の中の人格を管理してくれているというお兄ちゃん的な立場の男性二人と、お菓子をあげたときに出てきた陽気な男の子一人、幼児の女の子一人、だったと思います。(この辺はうろ覚えですが)
健常者同士の交流よりも、より慎重で、探り合いのような初日でした。
ですが、彼女は対面することで私の人柄をより知り、安心したのか、それからは順調にお付き合いを進めました。
彼女と付き合っていた期間は半年という短い間。
でも、その半年はとても濃く、長く、そして色んなことを勉強させてもらえる日々でした。
最終的には喧嘩別れのようになり、私も未熟で自分だけが立ち上がるのが精いっぱいで、彼女との縁は切れてしまったのですが、彼女にとっても、私にとっても、色んな経験となった濃密な半年だったと言えるのではないでしょうか。
でも、その半年で学んだことは、私の常識や知識を覆すような、そんな出来事の数々でした。
◎解離性同一性障害って難しい?一括りにはできないワケ
私は「解離性同一性障害」のことを考えるとき、必ずと言っていいほど、ある曲が浮かびます。
ボーカロイド曲の『十面相』という曲です。ご存知の方はいらっしゃるでしょうか?
この曲は、十人の人格が自分にはいて、同じ人に恋をし、最終的には人格を一つに統合する、という曲なのですが、この曲が私的には一番イメージしやすかったので、例に出させてもらおうと思います。
『十面相』という言葉の通り、十人の人格、そして、十人が歌っているという設定で、一番目の歌詞で、「解離性同一性障害」の特徴を歌っているのですが、そこに補足をいれながら、少しでも多くの人にこの障害について知ってもらいたいと思います。
①新しい人格作り上げ、私たちの感情は入れ替わる
解離性同一性障害の特徴として、基本的に自分(基本人格、主人格と呼ばれる、体の持ち主のこと)以外に、頭や心の中に違う人格が作られることで、自分の心が分離される、要は解離が起こるということになります。
それが、解離性同一性障害、という正式名称がついている所以でもあります。
この別人格というのはあまりイメージしづらいと思いますが、人格にも色んな役割や性格があり、自分なんだけど自分ではない人格が生まれていきます。
自分にとっても似ている人格。
自分がいつもおさえている感情から生まれる真逆の人格。
自分を守るための攻撃的な人格。
素直な感情が出てくる、幼い人格。
自分がこうなりたい、こんな家族が欲しかった、というような、理想、憧れの人格。
特に、幼い人格や攻撃的な人格が出てくる点から、心理学的にいうと、防衛機制、つまり自分を守るために知らず知らずのうちに、防御をしている、自己防衛に近いとも言えると思います。
それは、解離性同一性障害だけに限らず、私たちも知らず知らずのうちにしている部分もあります。
自分の失敗を他人のせいにしてしまう。
苦手な相手を避けてしまう。
ストレスが溜まったとき、暴飲暴食をしてしまう。
などなど、自分を守るために、自己防衛機能を私たちは持っていますが、それが限界に達したり、壊れてしまったりすると、病気や障害を持ってしまうと言えるでしょう。
② 受け入れたくない記憶を、閉ざす人格を作る
これも①で話した防衛機制から人格を生み出してしまう、という意味です。
失恋や誰かを失った悲しみ、自己否定、裏切り…色々な負の感情がたまっていくと、防衛機制が働き、いやな記憶を自分だけでは処理できない別人格として処理をする、ということです。
つまり、自分の中でたまってしまう感情を役割分担として、受け入れたくない記憶を別の人格が処理する役割とする、という、私たちの頭や心が普段自然と防衛していることが顕著に出る、のが解離性の特徴となります。
少しこの辺は難しいことですが、本来の自分を守る機能がいっぱいいっぱいになると、別の器に移すことで防御に入る、ということです。
そのあと、『他人事のようにふるまい、そうやって自分を守った』と歌詞が続くのですが、その歌詞にもあるように、人格を作り出す役割の一つとして、「自分を守る」ということが根底にあるようです。
③記憶の共有はされない?互いの存在も知らない?
人格同士は一度に同じ場所に人の姿として存在することはできません。だから、外部からは、一度に違う人格と話すことができないので、心の中までは分かりません。
では、本人、人格同士はどうなのか?
それには個人差があるようです。
私が付き合っていた彼女は、記憶もみんな共有していましたし、心の中でみんなと対話することができると言っていました。
でも、自分の中で知らない人格が暴れているときもあるし、何となく心の中にいるのは分るけれど、どこにいるのかわからない人格もいると言っていました。
しかし、彼女は比較的人格たちと対話し、記憶を共有できている方みたいで、個人差があるようです。
人によっては、別人格が出てきている間の記憶がない人もいますし、自分が解離性同一性障害だと自覚していない人もいます。
それが、この障害のネックであり、難しい点でもあると思います。
私たち外部の人間は、そのことが分からないので、理解できない人にとっては、理解しづらい点でもあり…障害を持っている方が苦労している点であります。
『障害』を知るということ
ここまで、当事者目線ではありませんが、色々書いてきましたが…
障害を持っている方、家族の方、周りの方…たくさんの関わる方にとってもまだまだ分からない部分もあり、どう向き合っていくか、難しい部分が多くあるのが現状です。
だからこそ、当事者じゃない人も含め、解離性同一性障害(多重人格)のことをもっと知り、考えていく必要があるのです。
ですから、このブログを読んで少しでも多くの方に知ってもらえたら幸いです。
以上、ライター・エディターチームの葉音でした。
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