『セクマイ』の私が結婚を決めた、たった一つの理由
edit2016.05.21 2,224
私は『セクシャルマイノリティ』でどちらかというと、レズビアン(同性愛者)寄りのバイセクシャル(両性愛者)です。だから、よく聞かれます。
「なぜ、異性との結婚を決めたのか?」「旦那との出会いはどんなものだったのか?」
あまり友人などには聞かれなかったのですが、ココトモに来てから聞かれることが増えました。
でも、私が結婚を決めた理由は、本当にたった一つでした。
旦那と出会うまで~傷つけて、傷ついた過去~
旦那と出会う前、私は『セクマイ』を認めることができなかった時代に二人の男性と付き合いました。でも、やっぱり好きなのは女の子で、惹かれるのも女の子で…
友人にも話すことができなかったし、『セクマイ』だとわかるまで、時間がかかったのもあり、とても悩んだ時期もありました。ですが、以前ブログで書いたように、高校時代に好きになった女の子であり、友人に、『セクマイ』の私を認めてもらえたことがきっかけで、ちゃんとした自分の個性として、『セクマイ』の自分を受け入れることができました。
ですが、私が『セクマイ』であることを受け入れてもらうことと、私の気持ちを受け入れてもらえることは別問題で、「『セクマイ』を認める=『セクマイ』の人と付き合える」ことではないのだと知り、私自身を認めてもらっても結局は『セクマイ』に対する理解ではないのかな?『セクマイ』はやっぱり異常なことなのかな?と逆に悩んでしまい、その人が向けてくれた私への友人としての好意を結局は無下にしてしまっていました。
今思えば、その子『セクマイ』に対しての理解者でもあり、性別を超えた大人な考えを持っていたということがわかるのですが、その時の私は自分が拒否されてしまったようで、その子に対して好きな気持ちと複雑な思いを抱え、やっぱり同じ『セクマイ』の人でなくては駄目なんだと思い、やみくもにそういう相手を探しました。
その私の行動こそ、『セクマイ』に対する偏見と同じように、『異性愛者(大多数)』に対してうがった見方をしてしまっていて、自分から『セクマイ(少数派)』と『異性愛者(多数派)』という線引きをして、自分が人一番性別や性意識に対して、敏感になって、気にしてしまって、バリアをはって踏み込んでこれないようにしてしまっていたんです。
その後、女性の方ともお付き合いをしますが、『セクマイ』でなければいけない、女性でなければいけない、と自分で自分を縛ってしまい、「好きな人」というよりも、『セクマイ』、特にレズビアン(女性の同性愛者)の方にしか目を向けていませんでした。
そうでないと、自分の気持ちが保てなかったですし、何よりも傷つくのが嫌で、『セクマイ』でない人を好きになることが怖かったのです。
「どうせ、わかってもらえない…」
「自分を必要としてくれて、愛してくれる人がほしい…」
そう思うことで、自分を守っていたんですね。
それが付き合った相手に対しても失礼なことだとは知らずに、レズビアンの方とお付き合いをしました。その方は、とても繊細で家庭や人間関係で悩んでこられた方で、やっぱり私と同じように寂しい気持ちを抱えている方でした。
彼女は、私よりもずっとずっと人間関係が苦手で、半引きこもりのような状態で、私も相手が求めてくれるのが嬉しくて、彼女の依存を加速化させてしまいました。
その時の私はうつ病をすでに患っており、誰かのために生きるには自分に余裕がなかったのもあり、彼女の心も安定せず病状も安定しなかったため、何度も話し合いや喧嘩を重ねた結果、別れることになりました。
その時、彼女に言われた言葉を今でも覚えています。
『葉音は偽善者だ』
『今後、誰と付き合っても、相手を幸せにすることなんてできない』
とても辛かったけれど、それは自分でも思う部分もあり、自己満足のために相手を見つけるくらいなら、誰とも付き合わないほうが良い。
付き合った相手を幸せにできないくらいなら、もう誰とも付き合わない、恋愛なんてしない。
そう心に決めました。
旦那との出会い~付き合うまでの葛藤~
運命の出会い!?
「もう恋なんてしない」なんて、何かの歌のように心に決めた私。
その決心はわりとかたくて、彼女と別れた大学生時代が終わり、社会人になっても、前に進む勇気が持てない、というよりは、「誰かの役に自分が立ててたらいいな」くらいにしか思っていませんでした。
進んだ職業が介護職ということもあり、私じゃなくても良いけれど、誰かの助けを必要とする人たちの介助をする中で、悩んだり辛かったりもしましたが、内定が決まってからその施設で働かせてもらい、形として『誰かの役に立つ』仕事に就きました。
形として、と書いたのは、やっぱりそれが自己満足で、介護を必要とする人、主に高齢者の方に自分の価値を見出し、自分を無理やり認めていた、自分に酔っていたのだと思います。
「自分の幸せ」ってなあに?って思う余裕もなくて、「誰かの役に立てる」=「自分が必要とされている」ということが重要で、あまりにも身勝手ですが、そうするしか「生きる意味」を見いだせなかったのです。
でも、そうして生きていくことで、病気が治るわけでもなく、漠然と、「じゃあ誰かに必要とされなくなったら?」「自分の体が動かなくなって仕事ができなくなったら?」と、仕事に就ける幸せを感じる一方で、「うつ病」の症状に苦しみ、自分なんていらないんじゃないかって何度も思いました。
介護職として就いている自分は、その時にはその人にとって必要な存在だけれども、代わりはいくらでもいる。ずっとその人についていられるわけでもないし、本当の救いにはならないって分かっていました。
でも、それに縋るしかなかったのです。
そんなとき、出会ったのが彼、今の旦那です。
内定者として施設で働き始めた頃、大学生だった私が緊張して初めて施設に足を踏み込んだとき、施設の玄関で出迎えてくれたのは、彼でした。
彼が出迎えてくれたのは本当にたまたまで、内定者の人がその日来ると聞いていた彼は仕事中だったのですが、「新しい方ですか?」と声をかけてくれ、上司までつないでくれました。
最初の彼の印象は本当に、真面目で好青年。
でも、『セクマイ』で、「恋なんてしない」と決心していた私は、彼をどう思うとかではなく、職場の仲間として見ていました。
彼は、ベッドのシーツ交換のやり方を教えてくれたり、利用者様の介助を見せてくれたり、と上司に指示されたこと以外にも、暇なときに話を聞いてくれたりしました。
休憩中にも関わらず、認知症の方の話し相手になっている彼は本当にひたむきで、「休憩中だから良いですよ」と声をかけても、「大丈夫だよ」と笑って話していました。
一方で、彼が普通の職員でないことも、感じていました。
はっきりとは聞いていなかったのですが、彼だけ対応できない利用者様がいること、上司がいちいち指示を出してから動くこと、介護ではなく、お掃除業務(階段や玄関などは介護職ではなく、お掃除の方がやってくれていました)として仕事に入っていることなど、私が敏感に気付くタイプであることを差し引いても、「特別待遇」をされている彼に疑問を持ちましたが、そんなに気にせず、仕事をしていました。
そんなある日、私が仕事終わりで帰ろうと施設を出たとき、「偶然」、休みだった彼と出会いました。彼は職場から家が近く、散歩などで施設の辺りまで来るのだと話していました。
会った流れで、お茶に誘われ、彼とカフェで話した後、お互いの共通の趣味であるカラオケに行きました。
「偶然」とかっこをつけて敢えて書いたのは、鈍感な自分だったら良かったのですが、彼の好意に気付いてしまっていた自分がいて、その日も私が終わる時間に合わせて来てくれていたことが分かってしまったからです。今考えれば、ストーカーのようなものなのですが(笑)、彼の一生懸命さがあったから、警戒はしませんでした。
分かっていたなら、なぜ、断らなかったのか?
それは至ってシンプルな理由で、私も彼のことをもっと知りたいと思ったし、惹かれていたからです。
でも、「恋なんてしない」と決めた私。だから、結局、その日に「実は葉音さんのこと気になっていたんだ」と打ち明けられるのですが、出会ったばかりだということに断ってしまいました。
その日の夜、付き合うつもりもないのに、彼に期待を持たせるようなことをするべきではないのではないか?と悩み、自己嫌悪に陥りました。でも、彼とのカラオケは本当に楽しくて、友達として付き合うことはできないか?など、自分勝手なことばかり考えていました。
数日経った頃、一番トップの上司である施設長と主任から仕事終わりに事務所に呼び出されました。何の話をするのか、も何となくわかっていました。察してしまうこと、勘が鋭いこと、も自分の嫌いなところの一つでもあるのですが、呼び出されるような予感がしていたのだと思います。
施設長は率直に、「彼は、君のことが好きなの?」と聞いてきました。本当にこの言葉どおり、どストレート(笑)
いや、私に聞かないでと思う反面、私もそのあとの話を予感していたので、「はい、そうなんだと思います」と答える異様な事態。彼に聞けよ!と思った部分も正直ありました(笑)
そのあとに施設長の口から出た言葉も、想定の範囲でした。
「彼のこと、何となく気付いているのかな?」
私は「はい」と答え、詳しい話を聞きました。
彼が知的・精神障害で障害者2級の手帳を持っていること。(今は結婚したこともあり、3級。しかも、知的障害ではなく、発達障害であるアスペルガーだということが分かりました。)障害者雇用で、この施設で雇っていること。だから、やることにも制限があるし、彼を傷つけるような利用者様の対応ができないこと。自分の判断で動けないので、指示をいちいち与えなければいけないこと…。
何度もパニックになり、施設から飛び出しては辞め、元気になってきては戻ってきて、を繰り返していること。
会社の方針で障害者を雇う、ということは、国からの援助も出るし、何より、彼は元気なときは、制限はあるものの、普通のアルバイトと変わらないくらいに仕事ができることもあり、施設長が可愛がっていることも知りました。
だからこそ、私のことも心配だったのでしょう。
「彼のことを男として見れるの?」と聞かれました。私は、「男として見ることはできるけれど、付き合うつもりはない」ということを伝えました。加えて、「でも、友人としていい関係は築けると思う」と答えました。嘘偽りなく、伝えました。
施設長は、私が知らないで、彼に迷惑をかけられていたら、と思っていたようで、私がしっかりと理解した上で関わっていることを知り、それ以上、聞かれることはなく、その日を終えました。
その後、彼と出会って三か月も経たない頃、私は最初に施設長にあるお願いをしていました。
「卒論を書くために、二か月休みが欲しい」と。その要望通り、二か月卒論に集中して、施設にまた戻ったときに、彼の姿はありませんでした。
私がいなくなってから、職員とも少しトラブルがあり、精神的に不安定になり、仕事中に施設を飛び出してしまい、そのまま行方知らずとなっていました。
彼の連絡先は知っていましたが、理由も何もわからない、私がいない時にあった出来事。
私は漠然と、「もう彼と会うことはできないんだろうな…」と思いました。
でも、それは仕方がないことだし、私がそこで彼に連絡しても、彼の心を乱すだけなのだろうな、と思い、連絡をするのを辞めました。もう会うことはできないのかもしれないけれど、 それは彼が決めたことで、私に口出す権利はなくて。彼を期待させることも、またできなくて。
「もう会えない」
そのことが気持ちに重くのしかかってきたけれど、割り切るしか術はなかったし。私が彼にできることもわからなくて、そのまま時ばかりが過ぎました。
これは運命?彼との再会
そのまま時が過ぎ、彼のことは頭の隅にあったけれど、学校と仕事との両立で忙しく毎日を過ごしていた頃。
入社前に、今の施設はなくなり、そこからそう遠くない場所に利用者様ごと新しい施設にお引越しということで、バタバタしていました。
いよいよ、入社もあるし、施設の引っ越しもある。
そんなある日、今までの施設の思い出として、皆が成長を見守ってきた桜の木を伐り、新しい施設に持っていこう、と男性職員を中心に木を伐る作業作業をしてたとき、私は普通業務の介護をしていたのですが、休憩中にたまたま木を伐っているのを見に行こう!と思いつき、施設の裏で皆が作業をしているところを窓から覗いていました。
その時、その木を伐る作業をしている男性の中に、彼を見つけました。
彼も私に気付き、「お久しぶりです」て笑顔で言ってくれました。
施設長が可愛がっている、と前述したと思いますが、これも施設長の彼への思いやりの一つで、働くことができなくても、木を伐る作業をお願いすることで、彼が「誰かから必要とされている」「自分にもできることがある」と自信をつけるために、彼に連絡をとったようでした。
そこで再会したことで、「もう会えない」と思っていた彼に会えたことがやっぱり嬉しくて、彼とまた連絡をとるようになりました。
彼は元気がないときもありましたが、ぽつりぽつりと自分のことを話してくれるようになり、相談もしてくれるようになりました。
遊びに行ったりもして、そこで二回目の告白をされるわけですが、前の恋愛を引きずり、「もう恋なんてしない」という決心を変えることはできず、彼をまた傷つけることになりました。
また、彼のまっすぐな思い、真面目さ、優しさ、沢山の彼を知り、彼に惹かれていた自分の気持ちにも向き合うことができませんでした。
その後、ちょこちょこ連絡をしたり、会ったりする中、大学を卒業し、無事に今までの職場(といっても新しい方ですが)に配属され、正社員としての責任と重圧もあり、悩むこともありました。
今まで、彼の話ばかり聞いていたのですが、ある時、仕事の愚痴を彼に打ち明けたことがあります。私が気持ちを打ち明ける相手はそう多くないのですが、なぜか彼に打ち明けることができたこと、そして、何よりも彼との時間が楽しかったこと、自分の気持ちに気付き始めていました。
『セクマイ』のこと、前の彼女のことも打ち明けましたが、彼はちゃんと聞いてくれました。
「彼のことが好きなんだろうな」
そう思いましたが、やはり、前の彼女に言われた言葉が浮かび、踏み出すことができませんでした。
付き合った相手を幸せにできないくらいなら、もう誰とも付き合わない、恋愛なんてしない。
でも…と何度も自問自答を繰り返しました。
私は弱音を吐くのがすごく苦手でした。でも、彼にはそれができました。
彼もまた、素直に私と向き合ってくれました。
たぶん、この時点で答えは出ていたのだと思います。
『セクマイ』の私が結婚を決めた、たった一つの理由
彼は障害を持っていて、働くことができません。能力は持っているのですが、支えてあげる、相手が必要でした。
だからこそ、「付き合う=結婚」を私も考えていたし、彼と共に歩むのならば、一生彼を養っていくつもりでいこう、と決めていました。
長々と語りましたが、『セクマイ』の私が結婚をきめた理由は、本当にたった一つです。
『彼となら、一緒に幸せになれる』
彼の幸せ、自分の幸せ、どちらも彼となら、育んでいける、分かち合っていける、そう思い、三度目の告白は私から、ちょうど、七夕の日にお付き合いをはじめ、彼が引っ越しを考えていた一年も経たない6月に入籍し、結婚しました。
旦那に今もよく聞かれます。
「本当に自分でいいの?」
「今、幸せ?」
私ははっきりと答えることができます。
「他の誰かじゃなくて、旦那が良い」
今、私は幸せです。
読んで下さった皆様、ありがとうございました。
今悩んでいる方、全員に伝えたいのは、『セクマイ』に限らず、恋愛に限らず、貴方が本当に幸せになれる道を見つけてほしい。
吐き出せる相手を探してほしい。
自分の幸せは、きっと大切な誰かの幸せにつながるから。
以上、ライター・エディターチームの葉音でした。
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